公益財団法人国際文化フォーラム

学校のソトでうでだめし報告

「アルミ缶を使い倒そう」実施レポート ー テンダーさんの「その辺のもので生きる」オンライン講座01

環境活動家のテンダーさんは、生態系の再生と人びとの日常の困りごとの解決を同時に可能にする技術や仕組みを研究し、世界の人たちと共有しています。この講座ではその一部をおすそ分けしてもらいます。

といっても、ただテンダーさんの手法をなぞるわけではありません。一人ひとりが手を動かし、つぶさに観察し、得た情報と自分の知識を照らし合わせ、思考を働かせ、仮説をたてて実験することをたっぷり体験します。それは、お金や消費社会といった既存のシステムの構造を知っていく道のりでもあり、自分の生きかたをオルタナティブな視点から考える機会にもなるかもしれません。(このオンライン講座全体の趣旨はコチラをご覧ください。)

第1回は、北は北海道から南はオーストラリアまで、26人の参加者のみなさんが鹿児島のテンダーさんとオンラインでつながり、火造りで道具を自作し、廃材のアルミ缶から調理に使えるミニコンロをつくり出すという今までにない試みとなりました。

▶︎ 毎回、講座の開始前にテンダーさんとTJFが参加者のみなさんと共有している「失敗は失敗じゃない」「受信という考えかた」「ミュートしないという実験」「YSS(りたくないことはなくていいテム)などについては、こちらにまとめました。あわせてお読みください。

*トップの画像は、アルミ缶をハゼ折りでつなげ、うろこ張りという日本の建築の方法で板に貼り付けたもの。アルミニウムはさびにくく、軽量で、水に強い材料なので屋根や壁に使える。今回はわかりやすいように缶の表側を表面にしているが、缶の内側を表にすれば銀色の屋根材・壁材になる。

形によって価値が変わる。 ゴミから生まれる“錬金術”

第1回の講座では、身近にある金属素材「アルミ缶」を使い、調理用コンロとして利用できるアルコールストーブをつくりました。飲料などに使われるアルミ缶は、軽量で柔らかく、さびにくいという優れた特徴があります。

今回、空き缶2つでつくるアルコールストーブの重さはたったの10g(1円玉10枚分)! 超軽量でコンパクトな大きさながら、アルコールを燃料にすれば5分でお湯をわかせます。テンダーさんは20代の頃、アルミ缶を拾ってはアルコールストーブをつくり、1個500円で売って生活費を稼いでいたのだそうです(ちなみに、ダイナミックラボでは1500円で、アウトドアメーカーではほぼ同じものを約9000円で販売しています)。

アルミの空き缶は、1kgあたり(350ml缶 60〜70個ほど)111〜116円(2021年4月23日現在。相場変動あり)で買取されています。この日、テンダーさんが見せてくれたアルミの塊(10cm四方、厚み2cm、重さ615g)は、窓サッシと空き缶を熱して溶かして固めたもので、材料としての価値は3000円にもなるのだとか。

窓サッシと空き缶を熱して溶かして固めたアルミの塊
(10cm四方、厚み2cm、重さ615g)。材料としての価値は
3000円にもなる。

さらに、削って金型にすると50万円もするそうです。金型に溶かした金属やプラスティックを流し込むことで、同じ商品を大量に生産することができるからです。

アルミの塊を削って金型にすると50万円もの価値になる。これは洗濯バサミ用の金型。

「金型がいまの物質文明をつくっている」とテンダーさんは言います。
「不思議だよね。同じアルミなのに形状が違うと値段が変わる。形状が価値を持っている」

このことを知ると、今までゴミとして捨てられていたアルミ缶を見る目が変わってきませんか?

*2022年2月に、アルミを溶かして固めて塊をつくる講座を実施予定です。

0.1mmを測る方法とは? ー 微妙な差異を見過ごさない

テンダーさんの作業を見ながら、参加者もさっそくアルミ缶を加工していきます。まず、テンダーさんが設計・3Dプリントしたアルミ缶カッターでアルミ缶を二つに切断します。

アルミ缶は、カッターで簡単に切ることができますが、それは、カッターがアルミよりも“硬い”という金属の強度の違いによるもの。
「鉄のほうがアルミよりも硬い。だから鉄はアルミを切れる」とテンダーさん。

アルミ缶ストーブは二つの缶底を使い、片方をもう片方の中にすっぽりはめ込んでつくります。そのため、直径の大きさが違う缶を選べば、はめ込む作業が楽になります。

アルミ缶カッターで切断した缶底二つをつかい、片方をもう片方にはめ込んでつくる。

実は、アルミ缶の薄さは0.1mm。髪の毛1本、コピー用紙1枚と同じです。日常生活で0.1mmを意識することは少ないかもしれませんが、髪の毛もコピー用紙も触ってみるとその太さと厚みがはっきりとわかります。

では、0.1mmはどうやって測ればいいのでしょうか?

テンダーさんがとっておきの秘密兵器として教えてくれたのは「ノギス」と呼ばれる測定器。ノギスには、2つの目盛り(本尺と副尺)があり、今回使ったものは0.1mm単位の数値まで測ることができます。

ここで測りたいのはアルミ缶の内径と外径です。実際、測ってみると、66.0mmや66.1mm、66.3mmなど、見た目は同じように見えても、微妙な差異があることがわかりました。

道具を自分でつくってみる — 運だのみや力まかせではなく理屈を考える

缶を0.2mmだけ押し広げるための道具 ー 数字はうそをつかない

では、同じ大きさの缶しかない場合はどうすればいいでしょうか?

参加者「熱で伸ばす」

テンダーさん「どうやって伸ばす?」

参加者「バーナーで」

テンダーさん「バーナーは1000度を超える。アルミの融点は660度なので、アルミは溶けてなくなってしまう」

参加者「ハンマーでたたいて、縮めて入れる」

テンダーさん「俺がね、金属加工のプロのお義父さんからよく言われたこと。『数字と機械は嘘をつかない。嘘をつくのはお前だ』って。力ではなく、理屈でどうするかを考えよう。運や力ではなく、どういう手順でやれば、誰がやってもできるのかを考えてほしい」

参加者「大きい方を伸ばす!」

テンダーさん「では、俺のやり方をお見せします!」

1. 缶の底に、別の缶の底を重ねる。直径が0.2mm大きくなった缶(フレアリングツール)ができる。
2. フレアリングツールに、アルコールストーブに使う缶底をゆっくりと差し込み、少しずつ幅を広げていく。
3. 内径が0.2mm広がった、缶の底ができあがる。

テンダーさんは缶を重ね合わせることで、いとも簡単に缶の内側を0.2mmだけ伸ばしました。

作業中、参加者からは、こんな質問もありました。

参加者「どっちが小さいほうなのか、わからなくなってしまいました!」

テンダーさん「そういう時にノギスで測る! 見た目じゃなく数字で見る!」

参加者「でも、どれもだいたい同じなんです」

テンダーさん「66.0mmと66.1mmは違う。きちんとノギスで測る。0.1mmをもっと大事にして!」

「道具を使う」「数字は嘘をつかない」ということを、テンダーさんは繰り返し伝えていました。

缶底に16個の穴を均等に開けるには? — 大工は計算しない

次に大きいほうの缶に、炎が出るための穴を開けていきます。

炎を出すための16個の穴を均等に開けるには?

「缶の底に均等に16個の穴を開けたい。では、どうやって開ければいい?」とテンダーさん。

参加者「缶底に十字を書いて、その間を取っていく」

テンダーさん「その十字はどうやって書くの?」

参加者「最初の2点は定規で……」

テンダーさん「うん……。せっかくだから、どうしたら均等に穴が開けられるかを考えてほしい。今日は、これは覚えていってください。丸いものに均等に線(点)を引くやり方。大工は計算しません! 大工は当てて測るだけ」

  1. 缶に紙を巻いて余分な部分をカットし、缶の円周と同じ長さの紙片をつくる。
  2. その紙を2つに折り、さらに2つに折る作業を4回繰り返す。
  3. 紙を広げると、16等分の線がついている。

紙を折るだけで簡単に、最も適切な世界にひとつのメジャーが完成。

できたメジャーを缶の底に巻きつけ、紙の折り目に合わせて16個の穴の印をつけた後、画びょうで穴を開けました。

缶の底を切るために必要な道具 — 疑問を持ったまま作業を続けない

次に缶底の中央を丸く切り抜くのですが、どうすれば切れるかと、テンダーさんは参加者に再び問いかけました。

参加者「カッターで切る」

テンダーさん「じゃ、やってみよう」

缶の胴体部分はアルミ缶カッターでいとも簡単に切れたのですが、底は0.3mmと厚く、そう簡単には切れない様子で、みな四苦八苦。

見るに見かねたテンダーさんは、「『このやり方はどうなんだろう?』と思ったら、即やめてほしい。疑問を持ちながら続けないでほしい。刃を立ててみても、文字通り刃が立たないんだったら、他にもっといい方法があるんじゃないかと俺なら思う」と声をかけました。

テンダーさんは、ハサミの刃先を勢いよく缶の底に突き刺しました。みんなも真似して、ハサミを缶の底に突き刺すと、簡単に刺さりました。

次に、突き刺したハサミを抜き、少し開いた穴からハサミを入れて切れるかどうか試してみます。しかし、刃をうまく入れることができず、ほんの少ししか切ることができません。

そこで、テンダーさんは、「火造り」という鍛治の技術を使って、缶の底を切るための特別なハサミをつくることを提案しました。

アイヌの文化では、『マキリ』という1本のナイフを、熱を加えて形を変化させ、必要な道具につくり替えていたといいます。鉈(なた)や鎌(かま)といった工具や農具、刀や剣といった武器もが鉄でできており、人類にとって鉄は、最も重要な金属として暮らしに必要不可欠なものでした。しかし、その鉄を得るためには多くの樹木を伐採し、自然環境を破壊しなければ手に入れることができませんでした。山の木を切り、何トンもの炭を焼き、その炭に砂鉄などを加えて溶かして鉄はつくられていました。それが、映画『もののけ姫』にも出てきた「たたら製鉄」です。人類史において、十分な量の鉄を持つことはとても難しく、結果、必要に応じて道具をつくり直すことで、貴重な鉄を繰り返し活用してきたのです。

マキリ  photo by Haa900, CC BY-SA 3.0, from Wikimedia Commons

火を味方につけて、金属の形を変える「火造り」

バーナーに慣れる — 「情報」と「知識」で恐怖心を減らす

マッチやライターは使ったことがあっても、バーナーを使ったことがある人は少ないかもしれません。バーナーの炎は1000度にもなります。恐怖心を持つ人もいるでしょう。

「怖い」という恐怖心はつまり、「身の危険を伴う作業をするうえで、自分には制御できない要素がありそうで、心細い」という状態なのではとテンダーさんは説明します。(テンダーさんによる「怖い!」と思った時の指針ついての説明はこちら。)

知らないことから恐怖心は生まれる。であれば、きちんと知ることで、怖さは減らすことができるはずです。重要なのは「情報」と「知識」。手順を一つひとつしっかり理解すること。

そのための楽しい練習として、まずは食べ物をあぶってみることになりました。
テンダーさんはどら焼き、参加者はマシュマロ、ソーセージ、パン、厚揚げ、干し芋などを串に刺してスタンバイ。初めて使うバーナーにドキドキ、ソワソワしている様子が伝わってきます。

テンダーさんは、どんなトラブルが起きるか想定し、対処法を考えておくよう何度も伝えました。

「食べ物が燃えたらどうする? いま初めて『どうしよう?』って考えたよね? 人はとっさに判断できない。けれど、火は待ってくれない。だから前もって決めておかないといけない」

脳は、瞬時に判断する時、ものすごくエネルギーを使うのだそうです。前もって行動を決めておくことで、脳に負担がかからず、とっさの判断ができるのだといいます。

少し焦がしてしまった人もいましたが、予行演習も無事終了。


いよいよ本番です!

ハサミを熱して形をつくり替える — 「失敗」をつぶさに観察する

ハサミの刃先をバーナーでオレンジ色〜黄色になるまで十分熱したら、刃先が柔らかくなり、ペンチで簡単に曲げることができます。

参加者の中には、刃先を曲げたはいいものの、うまくかみ合わずに切れなくなってしまった人や、熱し方が足りなくて思い通りに曲がらなかった人、刃先が折れてしまった人なども見受けられました。

しかし、それらは結果であり、失敗ではありません。

どうしてそうなってしまったのか、その事実から自分なりの答えを導き出して、何度でもトライすることを大事にしてほしいとテンダーさんは伝えました。

自分のアルコールストーブでお湯をわかしてティータイム!

完成した自作のハサミを使って缶の底を丸くカットしたら、次に缶の胴体部分を使って内壁をつくります。

缶の胴体部分を切り抜いてつくった内壁。


下の写真のように内壁を中にセットして2つの缶底を組み合わせたら、アルミ缶ストーブが完成。

内壁の端っこをホチキスでとめ、三角の切り込みを入れた
方を下にして缶底の中にセットする。

さっそく使って、お湯をわかします。

それぞれ好きなお茶をいれて味わいました。

参加者からは、この講座を通して「これはどういう使い方ができるだろう? と捨てられたものを見て考えることができるようになった気がします」という声や、「家で金属加工ができるなんて考えてもみなかった」「自分の道具は自分で加工したりつくったりできる」ことを知ることができたという声などが寄せられました。また、「プロセスの中で自分でうまいやり方を考えるようになっていったように感じます。自分で考える姿勢が身につきました」「ゴミを価値あるものへ変えることができるようになった」という声も聞かれました。

講座が終了しても、希望する参加者は、オンラインコミュニティ「Discord」で、復習の成果を共有したり、わからないところを質問し合うことができます。講座を体験した人たちが知恵を交換する自主的なコミュニティが形成されていくことを目指しています。

このオンライン講座はまだまだ続きます。
▶︎ 第2回「棒と板だけで火を起こそう
▶︎ 全講座のスケジュール

(取材・執筆協力 薮下 佳代)

[事業担当: 室中 直美]

事業データ

「アルミ缶を使い倒そう」(テンダーさんの「その辺のもので生きる」オンライン講座第1回)

期日

2021年2月7日(日)

実施方法

オンライン

主催

TJF

講師・企画協力

テンダーさん(環境活動家、生態系の再生と廃材利用のための市民工房「ダイナミックラボ」運営)
https://sonohen.life/

参加者

中高校生〜大人 26名

サポーター

井上美優さん、武尾満月さん、武尾祐見さん、中林勇人さん、堀江真梨香さん