畳からバッグ!?

畳からバッグ!?

PEOPLEこの人に取材しました!

青柳健太郎さん

畳職人

地元の畳替えから、首相私邸の畳の制作まで手掛ける青柳畳店4代目の青柳健太郎さん。その作品制作活動の中、何よりも注目を浴びているのは、彼が作る畳を使ったオリジナルプロダクトだ。イギリスのキャサリン妃や、アメリカのミシェル・オバマ大統領夫人に畳グッズを献上するなど世界中で大活躍している彼の作品は、伝統と革新の境界を越えたものだと私たちは考えた。そんな彼に、畳グッズを作ろうと思ったきっかけ、エピソードなどを聞いた。

Q:畳プロダクトを始めようとしたきっかけを教えてください。

畳の材料である「イグサ」は、主に熊本県で栽培されていて、私はそこにある農家さんの家にホームステイみたいな感じで色々お手伝いに行ったことがあるんです。その時、この「イグサ」って栽培が本当に難しいんだと実感しました。その難しい中、でき上がった結構の数が、長さが足りないという理由で廃棄処分になっているんです。それについて農家さんと話し合うとき、みんな声のトーンっていうか、憤りの声、表情が同じなんです。この人たちと一緒に歩んでいくためには、まずこの部分に寄り添って行くのが大事なんだな、と。その時、私なりのアプローチでこれはなんとかできると思い、始めたっていうのがきっかけですね。

Q:バッグに興味をもち始めたきっかけは何ですか。

もともと前の仕事をしていた時に、ビジネスバッグを持たない部署にいました。今でいうとノマドワーカーですよね。当時のパソコンを入れるバッグって、ものすごい堅苦しいと感じていました。そういうのが嫌で、女性用のトートバッグを買って、近所の縫製やっているおばちゃんのところに行って、もっとかっこいいオリジナルのバック・イン・バックを作ってくれって言ったんですよ。私はこのバッグをこのように使いたいからって言って作ってもらったり、昔からしていましたね。

Q:マザーズバッグを作ろうと思ったきっかけを教えてください。

青柳畳プロダクト「マザーズバッグ」
写真提供:青柳健太郎

そのときの時事的な問題とかをすごく考えるんですよね。例えば最近は高齢者たちの運転はものすごい社会問題になっているじゃないですか。それを逆転的な発想をして、その裏側で今注目されているのは何か、それが発想の種になるんじゃないか、と考えることです。

マザーズバッグをやり始めたころは、お尻拭きの成分の経皮毒が話題になっていたんです。赤ちゃんの口から入る成分って基本的に内臓が分解してきれいにすることはできるんですけど、肌から入ったものは全く逆で、全部胎毒しちゃうってのがわかって、マザーズバッグを作りました。


最初このマザーズバックを作った時に、何個ギミック(仕掛け)を乗せられるかなと思いました。ただ短いイグサを使っています、という材料であったりとか、このレザーの品質だったりとか、そういうものを乗せていった中で、この商品を買う人にとって、このバックに惹きつけられる部分ってなんなのかな、どこなのかなとずっと考えていました。マザーズバックを作る時、どこに向けた発信が一番いいのかなと思ったんです。その時に、意識の高いママたちに向けて発信しようと思いました。そうすると、今度は、その商品を買ったお母さんがSNSなどで発信してくれて、意識の高いお母さんたちの横のつながりに届きますよね。意識の高いお母さんたちって食べ物や、衣類にめちゃめちゃ気をつけているんです。だけど、1番デリケートゾーンにさわるおむつカバーはビニールシートなんですよ。
これはお母さんたちをハッ!とさせられると思って、このマザーズバッグにイグサのマットを付けたんです。そうしたらマザーズバッグを購入してくださったお母さんたちの中には、3歳くらいまで成長記録をメールで送ってきてくれるお母さんもいました。子どもと一緒にこのプロダクトが育っているみたいな感じです。で、もう子どもが幼稚園に行っておむつしてないから、今度は私がヨガマットにしています、みたいな。買ったお客様とはずっと繋がっている感じがします。

Q:それは職人としてすごく嬉しいですよね。

嬉しいですね。そういう人たちは、そのプロダクトから次の何かを発信するとき、畳だけでなく、教育関連のことであったり、自分がアクションを起こすすべてのことを見ていてくれるし、繋がっていてくれているっていう部分があります。応援団を連れて歩いているような感じですよね。

新たな挑戦

Q:こういう挑戦を始めるときに失敗を考えたりしましたか?

いつも頭の中で新しいことを考えた時に、シミュレーションで出てくるんですよね。自分の立ち位置は、ここで、こういう人たちが自分の作品を発信してくれるというのが見えるんです。見えてないことはやらない。この畳の座布団を作った時には、もう世界のVIPの横に日本のお土産として渡す、日本の省庁からある程度認定を受けているっていうビジョンがありました。こういうものは、こういう発信の仕方がいいだろうなっていうものが見えてくるんです。だから計画どおり。見えてたんです。

青柳畳プロダクト「畳の座布団」
写真提供:青柳健太郎

Q:今やってみたいと思うプランや空間はありますか?

私は100年後も同じ素材で出来たらいいなと考えているんですよ。作り方は変わるかもしれないですよ。すごい機械や自動ロボットが作ってくれてもいいんです。でも、100年後もあの畳を作ってるということが理想だと思っています。そのくらい日本の家屋ってもう先に進んでいる。日本家屋って完全なるスマートハウスなんです。例えば、和室の小上がり1つとっても、空気の循環でほこりやちりが部屋の中に全部広がらないように段差があるんですよ。だから1年に1回掃除するとほこりがとれる。で、畳の目の間に小さなほこりが入って、この畳のヘリの部分を剥がしてみると回りが空洞になってるんですけど、踏むことによって古い空気がわきから出て、新しい空気が中に入る。ようは、空気清浄器とまったく同じ働きをしているんです。フィルターですよね、完全に。

Q:これから海外で仕事をするなら、仕事してみたい国ってありますか?

私は中東に行きたいですね。イランの文化と日本の文化を融合させた仕事をしてみたいです。ペルシャ絨毯でやってみたいです。本当にすごいなと思うんですよね。自分はすごくゴロゴロするのが好きで、座の文化であればなんか一緒にできることがあるなぁ、と思っています。せっかくやるなら政治的なものを絡めてやりたいんですよね。だって、友好的なものになるわけじゃないですか、もう伝統と伝統の重なりなので。

伝統と革新

Q:伝統と革新の境界についてどう考えますか?

私と一緒に関わって製作している仲間って、共通しているのはみんな変なものに固執してないことですね。すごく柔軟な考え方をするんです。ちゃんとブレないものはあって、色々見ていく。頑固というのは基本的に今から様々なことを革新していく努力をしませんって宣言していることだと思いますね。これ以上成長しないと言っていることだと思います。この世の中にこれが出たら面白いかなとか、必要とされているものは何なのか、常に考えることが大事だと思います。

Q:これからのグローバル世界で職人たちが生き残るにはそういう考え方が必要だと?

そう思います。基本的には伝統と革新というのは、破壊までいかなくても、様々な殻が破られていくことだと思います。で、またそれが受け継がれていく。ただ受け継ぐというのはモノマネと一緒だと思うので、私が動画を撮ればそれでいいやと思うんです。だってその動画だけ撮っておけば、100年間それがなかったとしても、その動画を見たら同じことができると思います。伝統と革新ってそれ(殻が破れて行くこと)がないと意味がないのかなっていつも思っています。 破壊って言い方とちょっと違うんですけどね。日本の守破離(しゅはり)と同じなのかなって。

2019年10月シカゴ在日本総領事館公邸で日本の伝統産業についてスピーチした
写真提供:青柳健太郎

(インタビュー:2019年6月)

Related Articles関連記事

境界 武蔵野美術大学