おせっかいの輪を広げる

法政大学

おせっかいの輪を広げる

PEOPLEこの人に取材しました!

佐藤法子さん、嶋田朝子さん、藤岡邦子さん、藤野令子さん

NPO法人こあら村スタッフ

東京都大田区で活動するNPO法人こあら村。2002(平成14)年、前理事長の故高山久子さんが、「使用していない自宅二階部分を地域の福祉に役立てたい」と周囲の友人知人に相談したことから始まりました。「子育て中のお母さんが、楽しそうに見えないときがある」という気づきを出発点に【子育て支援】【多世代交流】を基本方針としました。子育て中の家庭に、仲間づくりや助け合いの輪を広げるための事業として「子育てひろば」「こども食堂」「放課後フリースペース」「フードパントリー」「お楽しみ会」などを行い、地域の憩いの場となっています。始まった当初から活動している理事長の朝子さんと事務局長の邦子さん、自身が子どもと一緒に通っていて今はスタッフとして活動する令子さんと法子さんにお話を伺いました。(写真左から、令子さん、朝子さん、邦子さん、法子さん)

Q:こあら村は始まってもうすぐ20年ですが、大田区で事業を立ち上げた経緯についてお聞きしたいです。

朝子:もともとここが、前理事長、高山久子さんのおうちで。彼女の熱意に私たちが引っ張られて、ずっとやってきたんです。ちょうど始めた頃、公園デビューとかでお母さんたちがすごく苦しそうでした。公園や児童館でできあがってる関係に入っていけずに、さまよってるお母さんがいる。「うちに遊びに来ない?」っていう関係にはすぐなれないから、「あそこにみんなで遊びに行けるところあるんだって」って、公園代わりに寄れるところがあったらいいねって始めました。蓋を開けてみたら、ちょうど全国で同時多発的にそういうムーブメントが起こってたんです。

Q:活動内容や時間はかっちり決めずにやってきたんですか。

朝子:内容や時間を決めてしまうと、赤ちゃん連れの方が遠慮されたり、お昼寝してると来られなかったりする。だから、どなたがいつでも来られるように、とにかく月、水、金の10時から4時までは場を開けていました。新型コロナの影響で、今は様変わりしていますが。

家事とか育児って、報酬も褒められることも一切ないですよね。でも、一日ずっと赤ちゃんと一緒に過ごすのはとても大変なこと。大人とお話が全然できないっていうのもね。ここに来れば、同世代の、似た生活をして同じ悩みを持ってる方たちと気楽に話ができる。ただお喋りするだけが、すごく大事なことなんです。

邦子:どこかに悩みを相談に行くんじゃなくて、ちょっと吐き出せるだけで、子育て中の悩みなんて大体すっきりする。だけど、その場所がないっていうね。夜泣きでへろへろになってるお母さんに「大変だね、今だけだよ」って言ってあげるだけで、トンネルの中にいたのがちょっと出口が見えるみたいなね。

令子:私自身、同じことで大変な思いをしてきた人たちに「大丈夫だよ、もうちょっとだよ」とか「今つらいよね」って言ってもらえると、それだけで頑張れました。ほかにもお母さんたちから、病院とか幼稚園とか、この地域の情報を得たり…。

朝子:そうやって何も決まってなくて、自由にお話するっていうのがこあら村の魅力かなって思います。あるときは、お子さんが私たちと遊んでいる間、ずっと隅っこで本を読んでるお母さんもいました。だから、もう二度といらっしゃらないと思ったのですが、その後足繁く通ってくれました。

令子:利用の仕方は人それぞれ。でもそれでいいんですもんね。

Q:お話を聞いて、何も決めない「ノンプログラム」がこあら村の特徴の一つと分かりましたが、ほかにはどんな特徴がありますか。

朝子:スタッフがちょっとおせっかいなんです。以前法子さんと区の子育て支援に見学に行ったんですけど、公的機関ということと、コロナ禍でもあり、スタッフの関わりに限界があるようで、親子がぽつんぽつんとしている印象でした。一方で、こあら村は割とおせっかい。そして、おせっかいを受けても大丈夫なお母さんたちがいらっしゃいます。

邦子:こあら村では、心配事があれば聞いてあげられる関係をつくりたいと思っています。ここに来ているお母さんたち同士「力を合わせて子育てしたいな」って思っていても、ちょっと二の足を踏んじゃうことがあるんです。そんなときは私が「子どもの預け合いしてみない?」とかってちょっと言ってみてます。私たちが直接助けられなくても、お母さん同士の助け合いが生まれるから。こっちのおせっかいがあっちのおせっかいを生む、みたいな。

こあら村では異年齢の子たちが自然と一緒に遊ぶ

Q:活動をする上で、大切にしていることは何ですか。

邦子:押しつけないことです。子育てこうあるべき、お母さんこうあるべき、みたいな感じにならないように喋ろうと思ってます。同じことを表現するにしても、正しいことが人を追い詰めることってあるじゃないですか。お母さんたちはただでさえ追い詰められちゃってるから、追い詰めないようにって。

令子:ツイッター上で話題になった「母親ならポテトサラダぐらい作ったらどうだ」問題とか、離乳食は手作りしなきゃいけないとか、そういう偏った情報を得ることっていっぱいあるし、それを発信する人も今いっぱいいるでしょう。それを見てると「私って何にもやってない」とか「できない私はダメなんじゃないか」とか思ってしまう人もいる。

朝子:だからここでは、お昼をみんなで食べるときも「買ってきたら?」みたいに言います。

令子:もちろん、手作りのものを持ってきたい人は持ってくればいいし。無理してやることじゃないですよね。

邦子:そこが気楽で来てくれてるのかな、結局。そういう雰囲気だけはつくれたのかな。遊びに来るお母さんが「あ、子育てってこれでいいんだ」って思ってくれたらいいなと思います。

Q:もともと子どもと一緒に通っていた令子さんにとっては、こあら村はどんなところですか。

令子:今、マンションが建つと、そのマンションの子たちがみんな同じ小学校に行きますよね。つまり、年収も価値観も似た家庭の子どもたちが集まるんです。いろんな人と出会える場っていうのは必要ですね。小学校では、クラスが変わって仲のいい友達と離れると「この世の終わりだ」って言うんですよ。大人からしたら信じられないですけど、子どもにとってはクラスが一番で、そこでうまくいかないと学校が嫌いになってしまう。何かあったときに、学校以外の友達がいるというのは大切だと思います。ここに来れば、学校のことは関係ないし、楽しく遊べる。

邦子:実際、学校ではちょっと鼻つまみ者みたいな子も、こあら村だと活き活きしています。自分の通ってる学校では今、自分のポジションに苦しんでるかもしれないけど、ちょっとでも、ここにいる数時間だけでもそうやって過ごしてくれたらいいかなと。私たちもそんな思いです。

Q:最後に、若い人たちに向けてメッセージがあれば、お願いします。

朝子:私はぜひともこういうことに参加してほしいなと思います。一緒に、行動してほしいなって。若い方の力は、大きいんですよ。すごく。子どもたちも勇気づけられるし、憧れなんですよね。

邦子:私たちスタッフも嬉しくなっちゃう。手伝うっていうよりも、いてくれるだけでいいんです。そしてきっと大人になったときに、今の私たちが言ってることが、分かるんだと思います。私も学生時代にボランティア活動をいっぱいしたけど、その場で出会った大人に言われたことを、今、噛みしめることがすごく増えてきました。そうやって循環していくためにも、ちょっと勇気を出して、近づいてみてもらったら嬉しいかなって。亀の甲より年の功ってこともいっぱいあります。おばちゃんたちも案外、いろいろ知恵を持っているので、それにふれてほしいな。

(インタビュー:2021年11月)

Related Articles関連記事

境界線を越えて協働する
夢と個性を「つくる」音楽

境界線を越えて協働する

夢と個性を「つくる」音楽

指揮者 / クラシカルDJ / アーティスト
水野蒼生さん

音楽界に史上初の「クラシカルDJ」という斬新で独創的な風を吹き込む事に成功し、メジャーデビュー。ザルツブルク・モーツァルテウム大学 オーケストラ指揮及び合唱指揮の両専攻の第一ディプロム(学部相当)を首席で卒業し、世界を股にかけた指揮者として…(続きを見る)

私たちが
取材しました

法政大学

着物はファッション

境界線を越えて協働する

着物はファッション

着物研究家
シーラ・クリフさん

イギリス出身。着物との出会いは、日本に訪れた際に立ち寄った骨董市。当初は日本について何も知らなかったが、着物文化や日本のファッションについて、様々な勉強や研究を行ってきた。現在は着物研究家として着物に関する研究を行う傍ら、大学での講義や著書…(続きを見る)

私たちが
取材しました

法政大学

「日本に来てよかった」そう思えるように

境界線を越えて協働する

「日本に来てよかった」そう思えるように

株式会社ジャフプラザ 営業本部長
菊野英央さん

株式会社ジャフプラザは主に、ゲストハウス(J&F House)の運営・管理、仲介業、外国人向け不動産の物件紹介サイト運営を行っています。今回はその中でも、様々な国の外国人と日本人が共同生活しているゲストハウス(J&F House)に注目しま…(続きを見る)

私たちが
取材しました

法政大学

アートを通してつながる世界~Kids helping Kids~

境界線を越えて協働する

アートを通してつながる世界~Kids helping Kids~

子供地球基金代表
鳥居晴美さん

息子さんのために作った小さな幼稚園から始まった「子供地球基金」。創設以来40か国以上の国々に足を運び、世界中で絵を描くワークショップを行い表現することの大切さを伝え、子どもたちの思いを文化や国境を超えたメッセージとして発信している。アートを…(続きを見る)

私たちが
取材しました

法政大学

やさしい日本語でつなぐ外国人との絆

境界線を越えて協働する

やさしい日本語でつなぐ外国人との絆

日本語教師・一般社団法人やさしいコミュニケーション協会代表 
黒田友子さん

皆さんは、やさしい日本語を知っていますか。やさしい日本語とは、日本で暮らす外国人にとってわかりやすい日本語であり、外国人へ情報伝達の方法として誕生した言葉です。現在のコロナ禍でも、日本には多くの外国人が住んでおり、情報を必要としている人々が…(続きを見る)

私たちが
取材しました

法政大学

まずは来てみて!

境界線を越えて協働する

まずは来てみて!

NPO法⼈ ⻄東京市多⽂化共⽣センター 理事
⽥辺俊介さん、⽥村久教さん

外国⼈にとって住みやすい社会をめざして⽀援を⾏うNPO 法⼈⻄東京市多⽂化共⽣センター(NIMIC)の理事を務めている⽥辺さん、⽥村さんにお話を聞きました。NIMICは、西東京市から西東京市多文化共生センター(以下センター)の業務運営を受託…(続きを見る)

私たちが
取材しました

法政大学