公益財団法人国際文化フォーラム

多言語・多文化交流:パフォーマンス合宿報告

最高の思い出!――ひろしまPCAMPの4日間

2022年8月4日から7日まで、広島県安芸高田市で多言語・多文化交流「パフォーマンス合宿 in 広島」(ひろしまPCAMP)を実施しました。3年ぶりの対面交流、そして初めての地域開催でした。広島駅からJR芸備線で1時間半ほどの県北に位置する安芸高田市に、地元はもちろん、東広島、呉、瀬戸内海の島などから、中国、日本、ネパール、バングラディシュ、フィリピン、ブラジルなどさまざまなバックグラウンドをもつ28名の高校生が集まりました。参加者を5チームに分け、各チームに1人ずつファシリテーターが入り伴走しました。

パフォーマンス作品づくりに向けたワークのほかに、1日めの夜にはみんなで手花火を楽しんだり、2日めの夜には温泉や神楽鑑賞などを体験したりしました。安芸高田市は22の神楽団が活動するなど神楽が盛んな地です。この安芸高田市での開催ならではの体験となりました。

▼下の動画はダイジェスト版です。4日間を短くまとめてあります。どうぞご覧ください。


■4日間の記録動画、発表会フルバージョンは下のページからご覧いただけます。

https://www.tjf.or.jp/performance/1.html

ひろしまPCAMPのねらい

ひろしまPCAMPでは、参加者一人ひとりがもつ言語、文化、経験、個性を尊重し合い、それらを自由に、積極的に表現することを目標としています。今回のテーマは「演劇×身体表現×ことば」。演劇ワークやダンスワークを取り入れ、パフォーマンス作品をつくり最終日に発表することをゴールにすることで、その過程で参加者同士が関わり合い、話し合い、助け合いながら、自然に交流がうまれるようにしました。

事前課題の言語ポートレート。自分の周りにさまざまな言語があり自分もふれていることに気づいた参加者が多くいました。さまざまな言語的・文化的バックグラウンドをもつ参加者を認識する第一歩となります

さまざまなものでできている「わたし」

これまでにオンラインプログラムでも行ってきた「I am from」を今回も取り入れました。「I am from」はアメリカの現場で行われている多文化演劇教育プログラムで、自分のこれまでをいくつかのキーワードにそって振り返り、自分を形成するものやアイデンティティを見つめるものです。

初日に全身を動かして体と心をほぐし、参加者の距離が近づいた2日めに「I am from」のワークを行いました。「みんなはいろんなものでできているよね。血とか肉とか骨以外にも、勇気をもらったことばとか、小さいときの好きなお菓子とか……。これが全部含めてI am from」というファシリテーターの説明のあと、提示されたキーワードに1人ひとりが向き合い、単語や簡単なフレーズから書き始めます。そして次に単語やフレーズのディテールを足していきます。例えば、「小さい頃、あなたにとって特別な誰かがつくってくれた大好きな食べ物」のキーワードに対しては、「お母さんのつくったオムライス」と参加者が書く。次に、そのオムライスにどんな思い出があるのか、どういうときに食べたのかなどを細かく書いていくのです。

そして、1人ひとりの「I am from」をチームでシェアし、1人2つ程度のキーワードを組み合わせてシナリオをつくり、演技をつけていきます。さらに、初日に体験した身体表現を使って各チームのダンスや全員のダンスをつくっていきました。また有志でスペシャルダンスチームをつくり、そのメンバーによるダンスもチームメンバーが考えました。最終日の発表会で披露したパフォーマンスは、これらを組み合わせたものでした。

パフォーマンスで表現された「I am from」

最終日の8月7日、発表会には参加者の家族、演劇教育に携わっている方、テレビや新聞で知った方など80名を超える人たちが来てくれました。社会福祉法人ひとは福祉会「就労センターあっぷ」に通う方々が織ったさをり織の織物が舞台を色鮮やかに飾ります。

思い出いっぱいの大好きな食べもの、尊敬する人、勇気をもらったことば、大好きな歌……。今の自分をつくっているさまざまなものを舞台上で表現していきます。「I am from」の締めくくりは、「2022年への思い」。「ぼくの2022年、社会人になっていくことの不安」「私の2022年、辛抱」「人間関係の不安」「進路の悩み」など、いま抱えている不安が並び、舞台にうずくまりますが、次に全員が前を向き、もう一つの「2022年への思い」を一人ひとり口にします。

「2022年、未来への希望」「とびきりの笑顔」「新しい出会い」「自由」「希望」「勇気」「泥くさい努力」「チャレンジ」「新しい扉」「挑戦」「輝き」「何事にも全力で」「自分を信じる」「幸せ」「健康」……。そして最後は全員が一ヵ所に集まって「We are from!」。力強い声が会場に響きました。

発表会の前日、朝早くから夜遅くまでの練習でくたくたになりながらも、「緊張よりも楽しみが大きい」「今日の練習で楽しみになった」と言っていた参加者は、楽しさを全身で表現していました。

参加者の声

発表会後に、ひろしまPCAMPで嬉しかったこと、困ったこと、自分のなかで変化したことなどについてアンケートを実施しました。

楽しかったこと、嬉しかったことは何かという問いに対して、いちばん多かったのは、「友だちができたこと」でした。なかでも「仲間思いの友だちがたくさんできたこと」「これからも続いていきそうな大事な仲間ができたこと」「人との繋がりが伸びていったら結ばれていくのが見えたこと」という回答からは、4日間で深いところでつながれたことがわかります。

反対に難しかったこととして、圧倒的に多かった回答がダンスで、「覚えることが難しかった」「みんなで合わせることが難しかった」ようです。また「意思を伝えるのが難しかった」という回答も複数ありましたが、なかには「言葉の違いで、何を伝えているのか理解できないことが悔しかったです。私も英語やポルトガル語、タガログ語を話せたりしたら、もっと大きな繋がりができたのになぁと思いました」と回答した人もいて、もっともっと話したかったという思いが見えました。

交流を通して気づいたこと、自分のなかで変化したこととして、いちばん多かったのは、積極的になったことやコミュニケーション力が上がったことでした。なかには「お互い自己表現をしてみて、だんだんと何も知らない相手を尊重したり、理解したりできるようになった。自己開示をすることは人と人とを心からつなげるんだなと感じた」と回答した人や、「人とコミュニケーションをとったり自分を表現したりすることが恥ずかしくなくなった」と書いた人もいました。

「I noticed that no matter what and who you are we are all the same and equal. We must help one another even if others can’t understand you through words but you can interact with them with your body language. It helped me to be more comfortable with others when I’m communicating and making new friends」という回答からは、まさにひろしまPCAMPで目標としていたことを体感してくれたことがわかりました。

そして、参加者が「ひろしまPCAMP」での経験を一人一言ずつ、次のように表現してくれました。

「Power」「挑戦」「素晴らしい」「the best experience」「Accomplishment」「1歩踏み出せた」Friends」「幸」「PCAMP最高!!」「それぞれのキャラクターが見せる軌跡の日々」「第2の家族との思い出」「可能性」「成長」「無限の可能性」「人生の大きな糧」「成長」「一生の仲間」「JUMP!」「advance」「Memorable」……。「濃いひととき」を過ごして「最高の思い出」となったようです。

もっと知りたい方へ

詳細なレポートと動画を下のページからご覧いただけます。

https://www.tjf.or.jp/performance/1.html

今後に向けて

初めてチャレンジした地域版PCAMP。その究極の目標は持続可能な形で地域に渡していくことです。そのためには地域のより多くの方々にこのPCAMPを知っていただき、さらなる協力を得ることが必要と考えます。TJFがなぜPCAMPを立ち上げたのか、「ひろしまPCAMP2022」に至る5年間の取り組みでどのような成果と学びを得たのか、今後どのようにプログラムを進化させそして広島以外の地域にも広げていくのか。これらのことに関心を持つ方々と共有する機会として、「ひろしまPCAMP2023」のプレイベントを来春広島で実施したいと考えています。イベント当日はPCAMPプログラムの一部を体験していただくワークショップも企画中。今後のご案内にぜひご注目ください。

(事業担当:長江春子、千葉美由紀)

事業データ

多言語・多文化交流「パフォーマンス合宿 in 広島」(ひろしまPCAMP2022)

主催

公益財団法人国際文化フォーラム(TJF)

共催

NPO法人安芸高田市国際交流協会(AICA)

後援

安芸高田市、安芸高田市教育委員会、広島県教育委員会

協力

こどものひろばヤッチャル(東広島市)、ひまわり21(呉市)、びるど(福山市)、ワールド・キッズ・ネットワーク(呉市)、公益財団法人東広島市教育文化振興事業団

期間

2022年8月4日(木)~7日(日)

会場

安芸高田多文化共生センターきらり(第1会場:宿泊先、8/5の活動)
安芸高田市甲田文化センターミューズ(第2会場:8/4、8/6の活動、8/7の発表会)

ファシリテーター

柏木俊彦(演出家・舞台俳優、東京より派遣)
田畑真希(振付家・ダンサー、東京より派遣)
森永明日夏(舞台俳優・ティーチングアーティスト、ニューヨークより招聘)

サブファシリテーター

江島慶俊(俳優、開催地在住)
坂田光平(俳優・舞台美術、開催地在住)

撮影・記録

菊井博史(フォトグラファー、開催地在住)
山泉貴弘(映像ディレクター、東京より派遣)

発表会協力

照明:永尾良三(開催地在住)
音響:下岡正宏(開催地在住)、濱原多孝(開催地在住)

サポーター

邵帥(大学院生、東京)
古田小桜(高校生、岡山*、2021年春オンライン合宿参加経験者)

参加者

高校生28名(広島在住27名、岡山在住1名*)

参加費

無料 ※交通費は自己負担(ただし5,000円を超えた分はTJFが補助)