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ひろしまPCAMP2022

2022年8月4日から7日まで、広島県安芸高田市で多言語・多文化交流「パフォーマンス合宿 in 広島」(ひろしまPCAMP*)を実施しました。2017、2018年度は東京、その後コロナ禍となりオンラインで行ってきましたが、プログラム開始当初から地方都市にも会場を設け、全国のどこからでも参加できるようにする構想がありました。その後この構想を一歩進めて、各地域の多文化共生のニーズに合わせ、地域のネットワークと資源を活かした地域密着型のプログラムを実施したいと考えるようになりました。そして8月に、共催機関であるNPO法人安芸高田市国際交流協会(AICA)をはじめ、呉市、東広島市、福山市などの団体から大きな協力を得て、広島県内の高校生を対象とする地域版PCAMP第1回の開催が実現したのです。
広島駅からJR芸備線で1時間半ほどの県北に位置する安芸高田市に、地元はもちろん、東広島、呉、遠くは瀬戸内の島からフェリーと電車を乗り継ぎ、中国、日本、ネパール、バングラディシュ、フィリピン、ブラジルなどさまざまなバックグラウンドをもつ28名が集まってきました。参加動機として、「高校生最後の夏の思い出をつくりたい」「友だちをつくりたい」「ダンスが大好き」「コミュニケーション力をあげたい」などが挙がっていました。

*Performance(パフォーマンス)のPとCAMP(合宿)を組み合わせた「PCAMP」に、ひらがなの地域名をつけて愛称としたのは、多文化をバックグラウンドとする高校生を含む参加者が覚えやすく親しみを持ってもらうためです。

地域のネットワークの活用

当初25名から30名の参加者を募集していましたが、開催地の共催団体、協力団体の広報のおかげで、締切日のかなり前に応募が30名を超えました。TJFは1名でも多くの高校生に参加の機会を提供したいと考え、関東から派遣する3名のファシリテーターと相談したうえで施設のキャパシティなども勘案し、35名までを受け入れることにしました。
そして定員が増えたこと、コロナ禍でさまざまな配慮が必要なこと、地域の人的資源の活用などの視点から急遽、地元の演劇制作機関で活動しファシリテーターの経験もある俳優2人にサブファシリテーターとして加わってもらうことにしました。
参加者の募集締切時点での応募はちょうど35名となり、全員に参加通知書を送りましたが、その後新型コロナウイルス感染者が急増し第7波と重なったこともあり、実施日直前に辞退者が相次ぎ、最終的には28名の参加となりました。結果的に参加者は当初の定員枠内に収まりましたが、地元のファシリテーターを増員したことで、本番ではこの28名を5チームに分け、各チームに1人ずつファシリテーターが入り伴走することが可能になりました。
また、PCAMP本番の運営も共催団体、協力団体の皆さんと力を合わせて取り組み、仕出し弁当業者、貸布団業者、送迎用車手配の旅行社はもちろん、期間中の写真撮影、舞台の音響、照明も地元で活動している方々にお願いすることができました。

ひろしまPCAMPのねらい

ひろしまPCAMPでは、参加者一人ひとりがもつ言語、文化、経験、個性を尊重し合い、それらをありのままに自由に、積極的に表現することを目標としています。これらの目標を達成するために、さまざまな演劇ワークやダンスワークを取り入れました。そして、これらのワークを組み合わせてパフォーマンス作品をつくり最終日に発表することをゴールとし、その過程で参加者同士が関わり合い、話し合い、助け合いながら、自然に交流がうまれるようにしました。

まず本番前には、事前課題として「言語ポートレート」に取り組んでもらいました。自分にとって大事な言語、よく耳にする言語、町で目にする言語、自分をより表現できる言語、学んでみたい言語などを書きだして、自分の身体を模した絵の中に配置してもらうのです。さまざまな言語への気づきを促すこと、自分のなかや身の周り、生活のなかの多言語に気づいてもらうことなどがねらいとしてありました。提出してもらった課題は、参加者が決定してからつくったSNSグループでシェアし、発表会場にも掲示しました。
言語ポートレートを作成した感想として、「自分が思ったよりたくさんの言語にふれていることに気がついた。もっとたくさんの言語を学びたいなと思った」「日本語としかつながりがないと思っていたけれどたくさんの言語とつながっていた」「ことばっていいな、と感じた」などがあがりました。また、「他の人のを見ると、感じ方の違いをとても感じたし、でもそれがすごく面白くて、これが個性なんだなぁと思いました」「言語を知るということは、その人を知る大きな材料、きっかけになるなと思った」「1人ひとり、全然違う言語ポートレートを見ることがすごく楽しかった」など、自分が作成したり、ほかの参加者の言語ポートレートを見たりすることで、たくさんの気づきがあったようです。

核となった「演劇×身体表現×ことば」

今回のテーマは「演劇×身体表現×ことば」。これまでにオンラインプログラムでも行ったことのある「I am from」を今回も取り入れました。「I am from」はアメリカで開発された多文化演劇教育プログラムで、自分のこれまでをいくつかのキーワードにそって振り返り、自分を形成するものやアイデンティティを見つめるものです。例えば、「小さい頃、あなたにとって特別な誰かがつくってくれた大好きな食べ物」というキーワードに対して、その食べ物だけではなく、どんな思い出があるのか、どういうときに食べたのかなどディテールを書き足していくのです。そして、この「I am from」をもとにチームごとにシナリオをつくり、演技をつけました。また、初日に仲良くなるためのアクティビティとして体験した身体表現を使って各チームのダンスや全員のダンスを考えていきました。さらに有志でスペシャルダンスチームをつくり、そのメンバーによるダンス創作もしました。最終日の発表会で披露したパフォーマンスは、これらを組み合わせたものです。
こうしたワークのほかにも夜にはみんなで手花火、温泉や神楽鑑賞なども体験しました。安芸高田市は22の神楽団が活動するなど神楽が盛んな地です。安芸高田市での開催ならではの体験となりました。

コロナ対策と熱中症対策

5月の募集開始時にはコロナ第6波がおさまり感染者数が減少していたものの、7月中旬から第7波が押し寄せ感染者が急増しました。そこで、当初から広島県のガイドラインなども踏まえて、考えうる限りの感染対策を立てていましたが、なお一層強化することにしました。
活動中はマスク着用を義務づけましたが、8月初めは猛暑でもあったため、熱中症対策にも気を配る必要がありました。常に、水、お茶、スポーツ飲料、さらに塩分と糖分を補給できるように飴を大量に用意し、こまめに休憩をとり水分と塩分・糖分補給を促しました。
こうした対策の結果、期間中に体調を崩す人はゼロ。プログラム終了後翌日に運営側メンバーのひとりのコロナ感染が判明したものの、その後全員がPCR検査または抗体検査を受けすべて陰性の結果が出ました。

おもなコロナ対策

  • 参加者、主催・共催・協力団体などから成る運営メンバー、ファシリテーターチーム、撮影チーム、舞台の音響・照明チーム全員の会場入り前3日以内のPCR検査
  • 本番3日前からの検温
  • 期間中の朝夜の検温
  • 密を避けるために広い会場の確保
  • 宿泊所や活動会場への移動時の手の消毒、靴底の消毒
  • 日中だけでなく夜間の換気
  • 食事での席のスクール式配列、黙食
  • 飲食時以外の常時マスク着用

4日間の活動

具体的にどんな活動が展開されて、最終日のパフォーマンス作品がつくられていったのか、参加者はどんなことを感じ、考えたのか、プログラム初日から最終日まで、さらには参加者の振り返りや発表会見学者の感想をレポートします。

★1日め(8/4、活動場所:甲田文化センター ミューズ)

【おもな活動】

午後:全身を使ったゲーム
夜:宿泊所の安芸高田文化共生センターきらりの中庭にてみんなで手花火

参加者はこの日の活動会場となる安芸高田市甲田文化センターミューズに到着すると、事前課題の「言語ポートレート」を提出、顔写真を撮り、ファシリテーターたちの説明をうけながら、壁に掲示した模造紙に「平和」「広島」「好きなことば」から連想することばを付箋紙に書いて貼ったり、日本語であいさつが書かれた模造紙に自分の言語ならどういうことばになるのかを書き足していったりしました。これらのアクティビティは本活動に入る前のアイスブレイクの一つとして位置づけられました。会場に不安そうに入っていく参加者に、笑顔のファシリテーターが話しかけると、参加者の表情が緩んでいきます。車で送ってきた後、会場の様子をうかがっていた保護者も、「みんな笑っているね。心配したけど大丈夫だね」と頷きながら安心した様子で会場を去っていきました。

JR芸備線甲立駅に運営チームスタッフが出迎えに(左)、会場に着いたら、消毒と検温(右)
©キクイヒロシ

「広島」から連想することばを付箋紙に書いて貼る(左)、参加者が空欄を埋めていき、さまざまな言語のあいさつの表ができていく(右)
©キクイヒロシ

ひろしまPCAMPで大事にしたこと

全員で大きな円をつくると、主催者が今回のプログラムについて説明し、ファシリテーターや運営スタッフを紹介。一人ひとりに配付した「ひろしまPCAMPのしおり」に書かれている「心得」と「トライしてほしいこと」を参加者に読んでもらいました。

心得

PCAMPの参加者は、どんな国籍やルーツ、ことばや文化を持っていても

  • みんな等しく、この日本という社会の一員です。
  • 一人ひとりのことばや文化は同じく尊いものです。
  • 一人ひとりの個性は大事にされるべきものです。
  • 一人ひとりの中にすばらしい創造力を秘めています。

トライしてほしいこと

①一人ひとりを大切にする

  • 一人ひとりが持っていることば、習慣、個性を尊重しましょう。
  • さびしい思いをしている仲間がいたら、自分から声をかけましょう。
  • 仲間のことばや文化を知ろうとする態度を持ちましょう。

②コミュニケーションを助け合う

  • 伝えられない、伝わらないとき、仲間の力を借りましょう。
  • 自分も進んで仲間の力になりましょう。

③やさしい日本語で話す

  • ゆっくり、はっきりと話しましょう。
  • 表情や身振り手振り、絵も活用しましょう。
  • 短い文で言いましょう。
  • 難しいことばは簡単なことばに直しましょう。
  • 分かりやすい例を出しましょう。
  • 大事なポイント、キーワードを繰り返しましょう。
  • 人の話を聞きましょう。人が考えているときは待ちましょう。
  • ひとりで話しすぎない。ほかの人も話せるようにしましょう。

トライしてほしいことを読んでもらい、みんなで確認する
©キクイヒロシ

身体を動かして緊張を解く

そしていよいよ活動開始! ファシリテーターのリードで、全員が全身を動かし、互いの身体を近づけながら、心理的距離も縮めていきます。声を出し、身体を動かすことで、緊張が解けていきます。
水分補給ができるようにこまめに休憩時間をとると、「あー、疲れた」「こんなに身体を動かしたのは久しぶり~」といった声があちこちから聞こえてきます。しかし活動が始まると、そんな疲れを見せることなく、めいっぱい身体を動かし、会場のあちこちから笑い声が起こってくるのでした。

会場をぐるぐる歩き回りながら、ファシリテーターの次の指示を待つ(左)、「今までペアになっていない人とひじを合わせる~」の指示で、相手を探してひじを合わせる(右)

相手の手のひらの動きに合わせて動く(左)、風船を落とさないように動く(右)

人間知恵の輪をつくる(左)、なかなか解けなくて「どうしたらいいの〜」(右)
©キクイヒロシ

この日は、テレビ新広島と中国新聞から取材がありました。現在ニューヨークで活躍している広島出身のファシリテーターの森永明日夏さんにインタビューするほか、参加者の声も聞いていました。

テレビ新広島のインタビューをうける参加者。取材内容は8/4夜の地域ニュース番組で放送された
©キクイヒロシ

8/5付の中国新聞に掲載された

夜のお楽しみ会①

17時半、1日目の活動は終了。自分の荷物を持って大型バスに乗りこみ、宿泊先である安芸高田多文化共生センターきらりに移動。夕食のお弁当を食べた後、20時から中庭でみんなで花火を楽しみました。「生まれて初めて!」「花火大好き~」という声とともに、誰がいちばん長く線香花火をつけていられるかを競い合う輪があちこちにでき、みんなの距離がぐっと縮まりました。

「誰が最後まで残るか競争!」ファシリテーターも入って線香花火を楽しむ(左)、「撮って、撮って!」花火でハートを描く(右)
©キクイヒロシ

★2日め(8/5)(活動場所:安芸高田多文化共生センターきらり)

【おもな活動】

  • 午前:チーム分け、チームダンスづくり、中間発表、「I am from」導入
  • 午後:「I am from」を一人ひとりが書いた後、グループで「I am from」をどう表現するか話し合い、実際に演じてみる。中間発表後、ブラッシュアップ。
  • 夜:神楽鑑賞と温泉体験
ダンスづくり

全員が集合して、まずは身体を動かしウォーミングアップ。そしてチーム分けの発表。ここからはおもにチームでの活動になります。ファシリテーター5人がチームダンスのサンプルを見せて、各チームで自分たちのダンスを考えます。メンバー一人ひとりのポーズをベースに、アイディアを出し合い、あっという間にチームダンスができていきます。

身体を伸ばしたり縮めたり…ウォーミングアップ(左)、チーム分けの発表。5チームに分かれる(右)
©キクイヒロシ

それぞれの場所に分かれて、チームダンスを考える
©キクイヒロシ

I am fromのワーク

できたてのチームダンスを披露した後、主催者から記念品としてバインダーが配られました。赤い色のバインダーに白色のひろしまPCAMPのロゴマーク。中には、「I am from」の今回のキーワードが書かれた用紙が閉じられています。

①小さい頃、あなたにとって特別な誰かがつくってくれた大好きな食べ物
②小さい頃好きだった遊び
③小さい頃好きだったおやつ、お菓子
④好きな歌詞(歌手、曲のタイトル)
⑤小さい頃住んでいた街
⑥小さい頃いつも家で言われていたことば(よく聞いたフレーズ、耳に残っていることば)
⑦勇気をもらったことば (家族から、親しい人から、大切な本、映画、アニメなどから)
⑧尊敬する家族または親しい人(先祖でもOK)
⑨2022年

「みんなはいろんなものでできているよね。血とか肉とか骨以外にも、勇気をもらったことばとか、小さいときの好きなお菓子とか……。これが全部含めてI am from」「正解も間違いもないからね。何を書いてもOKだよ~」
そんなファシリテーターのことばとともに、「I am from」の活動が始まります。一人ひとり好きな場所、思い思いの姿勢で、自分の今までを振り返って、書きやすい言語で書き込んでいきます。
「全部書かなくてもOK。書きやすいものから書いてOK」というファシリテーターのことばが響きます。
大体書き終えたところで、「単語や短い文で書いたあとは、ディテールを書いてみてください。誰がつくってくれたのかな、どんなときに食べたのかな」と説明をうけた参加者はどんどん書き込んだり、考え込んだり……。自分のペースでつづっていきます。

記念品のバインダーに閉じられた「I am from」のキーワードを見る(左)、「I am from」のキーワードについて説明するファシリテーター(右)
©キクイヒロシ

「I am from」9つのキーワードについてこれまでを振り返って書き込んだり、考え込んだり…
©キクイヒロシ

チームでシナリオを考える

午後は、チームごとに一人ひとりの「I am from」をいくつか選び組み合わせて、シナリオにして、そのシナリオの表現を考えていきます。まずはファシリテーターが自分たちのサンプルを見せ、立ち位置や動き方などのパターンを紹介した後に、チーム活動開始! チーム内で互いの「I am from」に耳を傾け、一人ひとりを深く知ると同時に、何をどう表現するかを話し合います。参加者が表現したいことを形にするために、ファシリテーターはヒントを投げかけながら、アイディアを引き出します。

ファシリテーターが自分たちの「I am from」を全身を使って演じる
©キクイヒロシ

どんなシナリオにするか、シナリオをどう表現するか、真剣に話し合う
©キクイヒロシ

中間発表

そして中間発表。じゃんけんで順番を決めて、チームごとにその時点でできているものを全員の前で発表しました。まだまだぎこちないものの、彼らから出てきたことばや動きに、見学していた運営チームやファシリテーターの大人は心をつかまれたのでした。

参加者、ファシリテーター、運営チームみんなの前で中間発表
©キクイヒロシ

参加者が書いた「I am from」をピックアップ!

①好きだった食べもの

  • I am from 焼きそば。私がしんどい時にお肉たっぷりの焼きそばを作ってくれる母が大好きです。
  • お母さんが作ってくれたオムライス。オムライスが大好きなお母さんがよく作ってくれる。肉があまり好きではない私のために肉を小さく切ってくれていたオムライス。
  • I am from 卵焼き。妹と私を1人で育ててきた母。冷凍食品ばかりのお弁当だけど、どれだけ忙しくても手作りして入れてくれた卵焼き。そんな卵焼きが大好きだ。
  • I am from 小さい頃好きだったさつまいもの素揚げ。両親が共働きで自分達子供だけでご飯を作る時もあった。何か物足らない時おじいちゃんが作ってくれたさつまいもの素揚げ。祖父の体調も良くなかったのに自分達のために無理して作ってくれた。手の込んだものではなかったが祖父の優しさが心に染みて美味しかった。

②好きだった遊び

  • 小学生の頃、約束もなしに公園に行って友達と遊んでいました。 同じ公園にいた他校の見知らぬ子とも仲良くなれて楽しかったのを覚えています。
  • 絵を描く。昔とても絵が上手い子がいて、その子に負けじと練習していた記憶がある。

③好きだったお菓子

  • じゃがりこサラダ味。小さい頃、じゃがりこをよく食べていた。食べすぎで、ご飯が食べられなくてよく「残さず食べなさい」と怒られていた。お母さんに「栄養不足で身長が伸びなくなるよ」と言われた。本当に身長があまり伸びなくなった。
  • I am from カリカリ梅。小さい頃、母がたまたまポットで買って来てくれたカリカリ梅。恐る恐る、1個食べてみるとその酸っぱさとしょっぱさの虜になってしまっていた。今ではレモンも酸っぱく感じなくなってしまった。
  • Taho*, caramel peanuts(*絹ごし豆腐を使ったフィリピンのスイーツ)

④好きな曲・歌詞・歌手

  • マホロバ。これは、私が好きな歌手の曲です。マホロバという言葉は、「いいところ」「素晴らしいところ」という意味で、この曲は、そんなマホロバを、自分のペースでいいという曲なので、この曲が好きです。
  • I am from SEKAI NO OWARI. 生まれて初めて行ったライブがSEKAI NO OWARIのライブで、いろんな嫌なことがあった時だったので、すごく元気をもらった。
  • Lady I love you, and I just wanna show you.

⑤小さいころ住んでいた町

  • I am from 広島市安佐南区。今は地元を離れて暮らしているけど、時々家に帰った時に街の風景が変わっているのを見ると少し寂しくなる。
  • ブラジルのピラスヌンガ
  • Philippines, Davao city

⑥小さいころよく言われていたことば

  • Eu te amo(愛してます)、お母さんは家族のみんなによく使う言葉です。それをきくと安心する。
  • I am from「人にされて嫌だったことは、他の人にしない」。小さい頃から、母に言われてきたことば。これまでたくさんのことばにであってきたけど、この母のことばが、私の軸の一部になっている気がします。
  • 宿題しなさい。

⑦勇気をもらったことば

  • 「失敗は恐くない」。これは、部活の先生から言われた言葉で、失敗を繰り返して悩んでいる私にかけてくれた言葉です。この言葉は、今でも私を励ましてくれます。
  • I am from 諦めたら試合終了。友だちのラインのプロフィールに書いてあったのでとてもいいなと思いました。
  • My mom used to tell me to do my best and even if I feel like I haven’t done enough, she will always be there and is always proud.(私のお母さんがよく言ってくれた。[自分のベストをつくしたらいいよ]。私が十分にできないときも、いつも側にいて、私のことを誇りに思ってくれた)
  • それでええねん。中学校いろいろあって行きたくなかった。母がかけてくれたウルフルズの「ええねん」。毎朝聞いて元気をもらった。頑張ればそれでええねん。
  • As long as we are here you are safe.
  • 何かあったら言うんよ。
  • 認める人が必要なら私が認める。

⑧尊敬する人

  • I am from 友だち。同じクラスの友だちです。全員がすごい才能を持っていて、私はみんなを尊敬して生活しています。
  • 上のお兄ちゃん。怖いもの知らずで誰にでも話しかける姿がカッコいい。私は今回のPCAMPで最初は人に話しかけられなかった。だから兄みたいに誰にでも話しかけて仲良くなりたい。
  • 中学の先生と両親には助けられた。高校の先生には励ましてもらえた。

⑨2022年

「就活、不安、希望」「挑戦」「受験のストレス、希望」「幸せの準備期間」「恥ずかしがり屋、笑顔」「人間関係の不安、新しい出会い」「変化」

夜のお楽しみ会②

活動を終え、マイクロバスで20分の山間にある温泉と劇場を兼ね備えた神楽門前湯治村へ。希望者は温泉浴場へ、希望しない人は昭和の温泉街が再現されている湯治村内を散策。その後、神楽ドームで夕食をとり、神楽を鑑賞しました。湯治村では地元で活動する神楽団が演目を披露しています。初めて神楽を観る高校生が多く、舞台のセリフ回し、動きなどを見つめていました。プログラム後のアンケートで、楽しかったこととして、神楽鑑賞を挙げた人が何人もいました。演じた神楽団の方々が「久々に若い団体客が来てくれてうれしかった」と喜んでいたと後日伺いました。

神楽門前湯治村内を散策、©イナダユキヒサ(左)、広森神楽団の「悪狐伝」、©TJF(右)

★3日め(8/6)(活動場所:甲田文化センター ミューズ)

【おもな活動】

  • 発表の順番や立ち位置の確認
  • リハーサル
  • 作品をブラッシュアップ、練習

スペシャルダンスチームが朝5時から朝食まで自主練。ダンスチームは5チームとは別に結成されたもので、1日めにメンバーを募るやいなや、「やりたい!」と手を挙げた14名から構成されました。日中は5チームの練習がメインになるため、空き時間を見つけて自分たちでダンスを考え、みんなで動きを確認しながら仕上げていきました。

有志のスペシャルダンスチームの朝練

発表会場でリハーサル&練習

この日の活動場所は発表会場となるホールです。朝食後、大型バスで宿泊先「きらり」から移動します。5チームの作品やスペシャルダンスと全員でのダンス、舞台への登場や退場の仕方など舞台の構成について、ファシリテーターが説明します。参加者はその構成にそって演じ、覚えていきます。ファシリテーターは各チームの作品間のつなぎを足し、さらに演じているチームだけでなく他チームのメンバーも一緒に拍手したり、名前を呼んだりするなどの動きを加え、全体でひとつの作品にしていきます。参加者は新しいシーンも含め、それぞれのセリフやダンス、動きを繰り返し練習。こまめに休憩をとっているものの、疲れがたまり高校生の動作がだんだん鈍くなっていくと、「疲れてもダラダラしない。ステージに上がったら、みんな常に演じているんだよ」という叱咤激励と、発表する最後の瞬間まで諦めないというファシリテーターのプロ意識が参加者にも伝わっていきます。「もっとよくなるよ」「自分を信じて」というファシリテーターのことばに最後までくらいつく参加者。練習は閉館ぎりぎりまで続きました。
練習を終え、「疲れた」と言いながらも、「今日の練習で明日が楽しみになった」「今日ですごく上手になった」「緊張よりも楽しみ」ということばが出てきました。

チームで、全体で、練習とブラッシュアップを繰り返す
©キクイヒロシ

練習が続くなか、ファシリテーターが色鮮やかな「さをり織」を舞台に飾っていきます。さをり織は1968年に城みさをさんが始めた織物で、その名前には「差異を織り込む」という意味が込められています。ひろしまPCAMPがめざすものとも合致することからぜひ使いたいとお願いし、地元の福祉法人「就労センターあっぷ」からお借りしたのです。この団体と共催者であるAICAがつながっていたことで大量のさをり織をお借りすることができました。

©キクイヒロシ

★4日め:発表会(8/7)(活動場所:甲田文化センター ミューズ)

【おもな活動】

  • 発表会
  • 振り返り

朝食後、自分の荷物をすべて持ってバスに乗り込み、発表会場へ。不安なところを確認しながら最後の練習です。練習を終えた高校生28名とファシリテーター5名が円陣を組み、声を合わせます。

“Let's go PCAMP! Go! Fight! Win! Go! Fight! Win! Gooooooooooooo!“

©キクイヒロシ

発表会

発表会の当日には、PCAMP参加者のご家族、学校の友達や先生、芸術関係者、多文化共生支援団体の方、地域行政、地元の住民など、約80名の観客が来場しました。石丸伸二安芸高田市長も駆けつけてくれました。

発表会場のロビーで参加者の「言語ポートレート」に見入る来場者、©キクイヒロシ(左)、石丸伸二安芸高田市長(右写真中央)、©TJF

©キクイヒロシ

11時、舞台に照明がつき、音楽とともに高校生が手をたたきながら順に入場し、全員のダンスでスタートします。何度も練習した台詞、チームダンス、全体ダンス、スペシャルダンスチームのダンス……。「I am from」の締めくくりは、「2022年への思い」でした。「ぼくの2022年、社会人になっていくことの不安」「私の2022年、辛抱」「人間関係の不安」「進路の悩み」⋯⋯。いま抱えている不安が並びます。でも最後は全員が前を向き、もうひとつの「2022年への思い」を一人ひとり口にします。
「2022年、未来への希望」「とびきりの笑顔」「新しい出会い」「自由」「希望」「勇気」「泥くさい努力」「チャレンジ」「新しい扉」「挑戦」「輝き」「何事にも全力で」「自分を信じる」「幸せ」「健康」
そして全員が一ヵ所に集まって「We are from!」。力強い声が会場に響いた後、全員のダンスで45分間の作品発表の幕を閉じました。

「We are from!」
©キクイヒロシ

観客もダンス!

休憩をはさみ、公開アフタートークがファシリテーターの進行で行われました。ダンスが大変だった、セリフを頑張ったなどいろいろと感想があがりました。
そして、来賓あいさつで石丸伸二安芸高田市長が、「可能性を見た!」と感想を述べられました。あいさつの後は、ファシリテーターの田畑真希さんのリードで観客も含む会場内の人たち全員で踊り、約1時間半の発表会を締めくくりました。

発表会後、観客も巻き込んで会場全員でダンス!
©キクイヒロシ

内輪で振り返り

発表を終えた高校生は昼食をとり、その後振り返りを行いました。まずファシリテーターの柏木俊彦さんが口火を切り、「パフォーマンス、最高でした!」というと、大きな拍手が起き、そのあと一人ひとり、感想を言いました。
「終わるのが寂しい」「最高の夏休みになった」「友だちがたくさんできた」「ことばの壁を越えていっしょに笑いあえたのがよかった」「いろんな言語を教えてもらった」「演劇は初めてだったけどこのメンバーだから楽しくできた」「最初の日からアクティビティをして話ができて楽しかった」「初日はすごく緊張していたけどダンスやグループワークを通じてどんどん仲良くなってよかった」などの感想が多く出ました。
振り返りの最後は、柏木さんの掛け声で一本締め。振り返り後も名残惜しく、写真を一緒に撮ったり、ファシリテーターにサインをもらったり……。家族の迎えの車で帰る人、駅に向かう人、それぞれの帰途につきました。

参加証明書を鈴木律子TJF事務局長から授与(左)、参加証明書を手にする参加者(右)
©キクイヒロシ

参加者に伴走したファシリテーター

今回のテーマ「演劇×身体表現×ことば」を支えたのはファシリテーターを務めたアーティストの方々です。演出家・俳優の柏木俊彦さん、振付家・ダンサーの田畑真希さん、俳優・ティーチングアーティストでニューヨーク在住の森永明日夏さん。この3人と主催者とのキックオフ会合が行われたのは4月。そこから本番まで出張も含め、会合の時間は十数時間に及びました。7月からは、広島で活動する(一社)舞台芸術制作室無色透明の舞台美術・俳優の坂田光平さん、俳優・劇作家の江島慶俊さんも加わり、さらに会合を重ねました。

本番初日、各地から集まってきた参加者の緊張をほぐし、PCAMPが安心・安全の場であることを感じ取ってもらうために、会場の掲示物から、声かけ、プレワーク、ウォーミングアップのアクティビティ選びや順番などに細心の注意を払っていきました。また、日本語が第一言語ではない参加者が多いなか、できるだけやさしい日本語を使い、何かのアクティビティをするときは必ずサンプルを見せるようにし、そして参加者同士で言語をサポートし合えるような雰囲気とチーム構成を心がけました。さらに、ファシリテーターが本番期間中に貫いたのは、これがいい、こうすべきといった「指導」をするのではなく、参加者のアイディアを引き出すような問いかけ、じっと待つ姿勢。実際に「『大丈夫、大丈夫!』『いいねぇ!!』というファシリテーターの声かけが、安心感を与えてくれた」「初日からみんなと話ができた」「最初から楽しかった」と参加者も語っていました。

チームワーク抜群のファシリテーター ©TJF

参加者アンケート

4日間を終えて、どんなことが楽しかったのか、どんな変化があったのか、アンケートを行いました。抜粋してレポートします。

Q:ひろしまPCAMPでいちばん楽しかったこと、嬉しかったことは何ですか。
ほとんどが「仲間思いの友だちがたくさんできたこと」「これからも続いていきそうな大事な仲間ができたこと」「みんなとひとつの作品をつくったこと」を挙げていました。「空き時間に話したこと」「いろんな言語にふれたこと」、また神楽鑑賞や温泉体験も複数の高校生が挙げていました。

Q:ひろしまPCAMPでいちばん難しかったこと、困ったことは何ですか。
圧倒的に多かったのがダンスで、「覚えることが難しかった」「みんなで合わせることが難しかった」という回答が多くありました。「意思を伝えるのが難しかった」という回答も複数ありました。そしてただ難しかっただけでなく、「言葉の違いで、何を伝えているのか理解できないことが悔しかったです。私も英語やポルトガル語、タガログ語を話せたりしたら、もっと大きな繋がりができたのになぁと思いました」のようにもっともっと話したかったという思いが見えました。

Q:いろいろな高校生と交流して、気づいたこと、学んだこと、自分のなかで変化したことは何ですか。
いちばん多かったのは、人とコミュニケーションをとったり、自分を表現したりすることが恥ずかしくなくなった、という回答でした。
・みんな自分の得意なことや好きなことをアピールしていて、ぼくもみんなのようになろうと今までの怖がってた自分がなくなってきた。
・他の人と話すのはそんなに難しくない。
・大きくなるにつれて、人前で自分を表現したり自分のことについて話すのが、なんとなく恥ずかしかったり、変なプライドが邪魔したりしてた。でも、みんなはじめましてで、4日間の仲間だからこそ、自己表現をいっぱいしてみた。そうすると、だんだんと何も知らない相手を尊重したり、理解したりできるようになった。自己開示をすることは人と人とを心からつなげるんだなと感じた。
・みんながとてもフレンドリーだったので僕の心がいつもとは違ってとてもリラックスしていることに気がつきました。
・同じ高校生でも考え方が全然違って意見も違って考えることが楽しかったです。
・もっとポジティブな考え方を持とうと思った

また、多様な仲間との交流や作品作りを通して人とのつながりや協力しあうことの大切さを感じたという回答も多かったです。
・もっともっと色んな言語を話して、色んな人と繋がっていきたいと強く感じました
・一人ひとり好きなことや苦手なことがあるから助け合うことで強いつながりを持てることを感じた
・I noticed that no matter what and who you are we are all the same and equal. We must help one another even if others can't understand you through words but you can interact with them with your body language. It helped me to be more comfortable with others when I'm communicating and making new friends.

Q:ひろしまPCAMPでの経験を一言(あるいは1フレーズ)で表現してください。
「Power」「挑戦」「素晴らしい」「the best experience」「Accomplishment」「コミュ力高まった」「1歩踏み出せた」「久しぶりに舞台で発表して初めて神楽も見た」「最高の思い出を作ることができる!」「楽しい」「交流が楽しかった」「Friends」「幸」「PCAMP最高!!」「それぞれのキャラクターが見せる軌跡の日々」「第2の家族との思い出」「可能性」「成長」「無限の可能性」「人生の大きな糧になりました!」「成長」「一生の仲間」「濃いひととき」「JUMP!」「最高の思い出」「advance」「Memorable」「The most memorable moments of my life.」

発表会見学者の感想

見学してくださった方々にもアンケートをお願いしました。いただいたコメントを抜粋してご紹介します。

アンケートに回答していない観客からも「ぜひ来年も開催してほしい」「年中行事にしてほしい」という声が直接運営チームに届きました。

ひろしまPCAMP2022を終えて

今回のPCAMPはコロナの感染再拡大の最中に実施した対面プログラムでした。言うまでもなく大きなリスクが想定され、「感染が怖い」ことを理由に直前で参加を辞退した人が続出しました。しかし、徹底したコロナ感染対策を講じたことで、運営上の負担が大きかったものの、会期中一人もコロナ関連の体調不良者を出すことなく実施することができました。これによりWithコロナのプログラム運営の経験も積むことができました。
反省点としては日程が過密だったことです。夜の時間を活用して2回のお楽しみ会を組み込み、参加者の緊張をほぐし心理的距離を縮め、同時に文化体験をしてもらう効果がありましたが、ダンスの朝練(自主練)を余儀なくされた参加者の負担は大きいものでした。3泊4日とはいえ、実質的には交流と作品づくりにかけられる時間が2日半しかない日程のなか、欲張りすぎず、活動の優先順位を決めていく必要性を感じました。
初めてチャレンジした地域版PCAMP。その究極の目標は持続可能な形で地域に渡していくことです。そのためには地域のより多くの方々にこのPCAMPを知っていただき、さらなる協力を得ることが必要と考えます。TJFがなぜPCAMPを立ち上げたのか、「ひろしまPCAMP2022」に至る5年間の取り組みでどのような成果と学びを得たのか、今後どのようにプログラムを進化させそして広島以外の地域にも広げていくのか。これらのことに関心を持つ方々と共有する機会として、「ひろしまPCAMP2023」のプレイベントを来春広島で実施したいと考えています。イベント当日はPCAMPプログラムの一部を体験していただくワークショップも企画中。今後のご案内にぜひご注目ください。

事業主担当:長江春子、サブ担当:千葉美由紀

事業データ

主催:公益財団法人国際文化フォーラム(TJF)
共催:NPO法人安芸高田市国際交流協会(AICA)
後援:安芸高田市、安芸高田市教育委員会、広島県教育委員会
協力:こどものひろばヤッチャル(東広島市)、ひまわり21(呉市)、びるど(福山市)、ワールド・キッズ・ネットワーク(呉市)、公益財団法人東広島市教育文化振興事業団
期間:2022年8月4日(木)~7日(日)
会場:安芸高田多文化共生センターきらり(第1会場:宿泊先、8/5の活動)
安芸高田市甲田文化センターミューズ(第2会場:8/4、8/6の活動、8/7の発表会)

ファシリテーター
柏木俊彦(演出家・舞台俳優、東京より派遣)
田畑真希(振付家・ダンサー、東京より派遣)
森永明日夏(舞台俳優・ティーチングアーティスト、ニューヨークより招聘)

サブファシリテーター
江島慶俊(俳優、開催地在住)
坂田光平(俳優・舞台美術、開催地在住)

撮影・記録
菊井博史(フォトグラファー、開催地在住)
山泉貴弘(映像ディレクター、東京より派遣)

発表会協力
照明:永尾良三(開催地在住)
音響:下岡正宏(開催地在住)
濱原多孝(開催地在住)

サポーター
邵帥(大学院生、東京)
古田小桜(高校生、岡山)

参加者
高校生28名(広島在住27名、岡山在住1名*)

*2021年春オンライン合宿参加経験者で、今回はサポーターの役割を兼ねた

参加費
無料 ※交通費は自己負担(ただし5,000円を超えた分はTJFが補助)

本番運営
TJF:千葉美由紀、中野敦、長江春子
AICA:稲田幸久、明木一悦
ひまわり21、ワールド・キッズ・ネットワーク:伊藤美智代
びるど:宮野宏子

※こどものひろばヤッチャルの奥村玲子さんには参加者募集、間瀬尹久さんには参加者の募集のみならず、引率とフォローにお力添えをいただきました。


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