「ことば」という視点から言語教育を再構成する
大津由紀雄 明海大学教授
他者やモノや情報が国や地域を超えて行き交う時代となり、 学校でも、地域、職場でも、多言語多文化状況が進んでいます。 このグローバル社会化がますます拡大するなかで、 子どもたちの活躍の舞台は世界に直接つながっていくでしょう。 このような時代を生きる子どもたちが未来を切りひらいていくために 必要な力は何でしょうか。
人と対話する力、共感できる力、 異なることば・異なる文化の人びとと協働し、 新しい何かを創造する力……。 わたしたちはこれらの力を育むために、日本と海外の子どもたちが、 互いのことばと文化を学び、交流する場をつくっています。
大学などの先生方と連携し、日本語や日本事情の授業で学生がインタビューし、まとめた記事をウェブサイト「ときめき取材記」で発信するプロジェクト。自分が気になったり不思議に思ったりすることから出発しテーマを決めた後、そのテーマに関わる人たちを探し、その人にインタビューしたあとは記事にまとめます。テーマをさまざまな視点で見ていくことで物事を多面的にとらえる体験をします。さらに、じっくり話を聞くことで、その人の考えや生き方を知り、その人への尊敬の念や共感がわくと同時に、自分について考えるきっかけにもなっています。
学校、塾、家。いつもの自分の居場所ではないところで、ふだん出会わない中高生やオトナと過ごしてみる。言語表現、アート、身体表現、社会課題など、その道に詳しい人たちといっしょに思考したり、表現・創作したり、議論したり、探検してみたり。自分のなかに深くもぐったり、ほかの人たちから刺激をうけたりして、今までとちょっと違う視点や表現方法、自分や他者との関わり方を見つけて、また日常に戻っていく。中高生が自分の世界を広げていくきっかけのひとつになることをめざしています。
変化の激しい時代であっても、子どもたちが自分の力で人生を切り拓き、多様な人びとが共生する社会づくりに主体的に関わっていく。そのための教育のあり方を模索する先生方が、探究をはじめさまざまな学びを体験したり、分析・デザインするためのワークショップやレクチャーを実施しています。
TJFが高校と大学の教育現場の教師と作った、高校からはじめる外国語学習の指針『外国語学習のめやす』(めやす)は、外国語教育を通じて21世紀を生きる力を育むことをめざしています。TJFの「めやす」マスター研修を修了した英・韓・西・中・日・独・仏・露の「めやす」マスターがそれぞれの言語教育の現場で「めやす」的実践をするとともに、「めやす」をより広く共有するために国内外においてワークショップやセミナー、実践報告会を企画、実施しています。TJFはそれらの活動をサポートし、実践成果を「めやすweb」に掲載しています。
りんご=隣語。文化の違いを楽しみながら、隣の人とつながるためのことばです。さまざまな隣語や文化にふれる場を中高生向けや、中高生に限らない一般の方向けに企画し、「学びのきっかけづくり」を提供しています。
TJFが中国・大連教育学院と共同制作した日本語副教材『好朋友』にはさまざまな日本の文化が登場します。「生徒たちに実物で体験させたい」。先生の思いから「好朋友日本文化体験の場」づくりが始まり、広州、上海、大連、中山、ハルビンの学校のなかに体験の場がつくられました。
現地に在住する日本人とのネットワークを活用し、授業だけでなく課外の時間でも生徒が体験できるようワークショップを開くとともに、先生方が体験の場をより活発に利用できるように研修を実施しています。
社会のグローバル化が進展し、多様な人と共生する時代を迎えました。現在、私たちが直面する課題は国際的なものから地球的なものにまで広がり、国や地域をこえた協働は欠かせなくなっています。そこで、世界の青少年が、球体(globe)で見て思考することによって、私たちの日常を、地球の目線へと拡張し、理解することができるようになることを目的として本プログラムを行います。
日本で暮らしている、多言語・多文化につながりや関心を持つ高校生が、演劇的手法を取り入れたワークショップを中心に、さまざまなゲームや身体活動を通じて交流します。3泊4日の合宿生活を送りながら、自分の個性を再確認して開放し、他人の個性を発見して認め、協力して一つのパフォーマンス作品を作り上げることを通じて、ありのままの自分を表現したり、多様な人と関わったりする自信を深めていきます。
日本で韓国語を学ぶ高校生と韓国で日本語を学ぶ高校生が4泊5日寝食を共にしながら、K-POPダンスを練習し発表します。一緒に過ごす5日間は楽しいだけではありません。気持ちが通じずもどかしい思いをしたり、ときにはぶつかったりすることも。同じ目標に向かって苦労を共にする経験は、違いを超えてひととつながるきっかけに。
日本でロシア語を教える教師、ロシア語を学ぶ高校生と、ロシアで日本語を教える教師、日本語を学ぶ生徒をつなげたい。そのような思いから、2015年に日露交流プログラムが始まりました。訪露、訪日を交互に行い、日露教師の合同研修や日露高校生の合宿などを通じて、交流を深めてきました。2018年度からは日露の学校をつなげ、ロシア語教師と日本語教師がペアを組み、ことばの授業に文化理解と交流を取り入れた「日露交流学習プロジェクト」を行っています。また、それらの取り組みをサポートするために、ロシアの学校に対し、日本語の図書、教材、教具、文化グッズの寄贈も行ってきました。
日韓で互いのことばの教育や学校間交流を実現するカギを握っているのは校長先生です。互いに学校や街を訪問し、互いのことばを学ぶ高校生や留学中の大学生、高校教師と交流します。教育に関する考えや思いに共感する校長との出会いは、あたらしいことばの学びと交流の場作りを促します。
オンライン交流プログラムは、どの地域からでも参加できることから、国内外の多様な参加者が集うことができます。
この交流プログラムでは、一人ひとりの個性を大切にしながら協働し、ひとつの表現作品をつくりあげます。この過程で、多様な背景を持つ参加者同士の対話が生まれ、関係性が構築されていきます。これらを通して、コミュニケーション力や他者への想像力、さらには創造力を伸ばし、新たな価値や考え方を創出する場となることをめざします。
今のリアルな日本を伝えるために、モノやことがらを超えて、「人」にアプローチ。テーマを設けてそのテーマに関わる人が、そのことにハマったきっかけや思いなどを語っています。
また、このコンテンツを使って生徒の思考を刺激する日本語の学習活動のヒントを紹介するメールマガジン「Click Nippon News」を月に1回配信しています。
見てわかる事業報告をめざし、前年度に実施した事業を紹介するとともに、事業と関連する話題を特集として取り上げています。
1ヵ月に1回、希望する方にメールマガジン「わやわや」を配信しています。近々に実施した事業の報告、TJFが実施する事業の参加募集情報のほか、他団体の情報も掲載しています。
現在行われている言語教育の実践を3名の方に紹介していただき、それぞれの方が大事にされていることを通して、言語教育が本来果たすべき役割を考えます。
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