公益財団法人国際文化フォーラム

好朋友文化体験の場報告

制服をテーマに学びを深める

TJFは第二外国語用日本語教材『好朋友』の共同制作以来、『好朋友』が提案する日本語教育の実現に向けて、大連教育学院とさまざまな事業を行ってきました。

2018年度は、11月の制服デザインのプレゼン大会を目標に数ヵ月にわたって「制服」をテーマに日本語の授業を行う「わたしたちの学校の制服をデザインしよう」プロジェクトを実施しました。漫画やアニメで中高生になじみのある「制服」をテーマにさまざまな活動を行うなかで、思考力、創造力、表現力を高めることを目的としました。

プロジェクトは2018年5月の教師研修から始まりました。研修で先生方は、一つのテーマで複数回の授業を組み立てるにあたり、その意味やねらい、また具体的に制服をデザインするときのポイントについての講義を聴き、その後具体的な授業計画を考えました。

研修会

日本語教育でめざすこと 林洪(北京師範大学准教授)
2017年に発表された「課程標準」に照らし、これからの日本語教育が何をめざし、どんな力を育てようとしているのか、そのためにはどんな活動をすればいいのかについて講義があった。

制服をデザインするポイント 横山豊子((株)このみ副社長)
制服のデザインに必要なのは、見た目だけでなく、学校の伝統や校風を取り入れながら未来を指向しているもの、生徒が誇りをもって着られるものを基本にして素材やデザインを考えることだと説明があった。

制服をテーマにした実践 岩間晶子(韓国・仁川大学講師)
学生は制服に関連する単語を学びながら、制服をデザインし、プレゼンテーションした実践を紹介し、プロジェクト型学習の意義について話があった。講義後、参加した教師はグループに分かれ授業計画を考えた。

学校の特徴を制服に

9月末に各学校で代表グループを決定し、10月には大連教育学院によるビデオ審査が行われました。その結果、大連市内の中学校17組から10組が、高校13組から3組が選ばれました。これら13校に、好朋友日本文化体験の場を有する上海市工商外国語学校と広東省・中山市外国語学校を加えた計15校が11月に大連教育学院の講堂で開かれた発表会に登壇しました。

審査は、地域や学校の特徴が制服のデザインに反映され、オリジナリティーがあるか、プレゼンテーションに工夫があり、日本語が流ちょうで正確かどうかが基準となりました。高校の部で最優秀賞を受賞した大連市第16中学は、デザインの専門性が高く、高校生らしさに加えて中国らしさも表現できていて、生徒たちに着たいと思われるようなものであることが高く評価されました。

5月の研修会で講師を務めた林洪・北京師範大学准教授は、どの制服もよく調べてまとめていたと評価する一方で、もっと生徒に考えさせるプロセスを入れることが必要であり、今回のような活動を通じて、思考力や表現力を育成できると語りました。
2019年度は、「文化を授業に取り入れる」ことをテーマに研修を実施します。

発表会

●広東省はとても暑いので、見た目が涼しい色を選びました。

●菊は学校がある小らん市の象徴。

●白い菊の花の意味は純粋と生命力。この制服を着る学生もそんな人になりたいと思うようにデザインしました。

●ザクロは学校名の16と発音が同じ(shiliu)なので、制服のアクセントにしました。

●青は水、白は波で大連の海を表します。

授業の流れ

■1時間目 日本の制服のイメージをつかむ

  •  自分の制服のイメージを考える
  • 日本の制服のイメージを思い浮かべる
  • 学園ドラマや映画で使用されていた制服を見る
  • 実際に日本の制服を着る

■2時間目 制服のデザインを考える①

  • 制服に関する単語を学ぶ(シャツ、スカート、ジャケット、ベストなど)
  • 制服デザインで大切なポイントを学ぶ(学校の特徴、見た目だけでなく、地域や季節に合わせる、統一感、スタイルよく、学生らしい制服)
  • 今回のデザイン・プレゼンテーションのルールを知る

■3時間目 制服のデザインを考える②

  • 制服に関する単語の復習
  • 色や形などをグループで考えて実際にデザインしていく

■4時間目 発表の準備をする

  • 発表の原稿の構成、使う表現を学ぶ
  • グループごとに自分たちがデザインした制服を紹介する原稿を考える。

■5、6時間目 発表会

  • 各グループ5分以内の発表
  • 発表終了後、プロジェクトの感想(楽しかったこと、難しかったこと)をグループでまとめる。

〔生徒の感想〕

◆デザインづくりは大変だったけど、友だちと協力してできた。

◆自分がデザインした制服をみんなが「かわいい」と言ってくれた。

◆発表で緊張した。

◆みんなの意見をまとめるのは難しかった。

※事業報告『CoReCa2018-2019』に掲載。所属・肩書きは事業実施時のもの。