公益財団法人国際文化フォーラム

外国語学習のめやす報告

「めやす」のさまざまな活用

2018年度*めやすマスター の有志が企画した研修が国内外で実施されています。研修テーマも、「外国語学習のめやすとは何か」から一歩踏み込んだものが取り上げられています。2018年度は、「めやす」に基づいたプロジェクト型学習のための目標分解、「めやす」と比較しながらCEFR(欧州言語共通参照枠)を考察することがテーマとなりました。どちらも講義後は実際にグループでのワークがあり、研修後のアンケートでは、「理論と実践が結びついた」という回答が多くありました。

こうした研修だけでなく、多くのめやすマスターが「めやす」をさまざまに解釈し、自分の教育現場にあわせて活用しています。
大学の日本語教員養成課程で「めやす」を用いた授業づくりに取り組ませたり、中国語教職課程の学生に「めやす」に基づいたプロジェクト型授業をデザインさせ、小中高校生を募って実際に授業を行わせたり、異なる言語の複数のマスターが合同で一つのプロジェクト型授業をデザインし、各自の学生に実施してその成果を共有したり、さまざまな研究・実践の成果を一冊にまとめたりと、当初想定していなかった取り組みが行われています。

* 2013年度から3回実施しためやすマスター研修で55名のめやすマスターが誕生した。

日本語教員養成課程に「めやす」を取り入れる

澤邉 裕子
宮城学院女子大学教授

私は2014年度より、日本語教員養成課程のなかのゼミにおいて「外国語学習のめやす」を取り入れた実践を行っています。日本語教育現場でコミュニケーション能力の育成が重視されるようになって久しいですが、それでも言語領域の「わかる」と「できる」の力までが重視されていて、なかなか「つながる」力の育成までには至らないように思います。そこで、言語・文化・グローバル社会領域における「つながる」力を育てる日本語教育実践とはどのようなものかを、日本語教育を学ぶ学生たちとともに模索したいと考えました。2019年度のゼミでは前期に「めやす」の理念を学び、その考え方に基づいて単元案を作成しました。そして後期に、その単元案を土台にして実際に高校留学生の日本語サポートというボランティア活動のなかでプロジェクト学習を企画しました。10月から1月までの4ヵ月間にわたって好きな場所紹介、旅行計画づくり、国の料理や行事の紹介など4つのプロジェクト学習を実践しましたが、留学生たちは生き生きと学び、プロジェクト学習を通して身につけた力を高校のなかだけでなく外の人たちとの交流場面で発揮し、「つながる」力が育っていることを私たちに見せてくれました。そうした留学生の学びの過程を間近で観察し、実践を振り返り、次の実践を考える、そのプロセスをゼミ生たちは経験しています。文型積み上げ式の日本語教育の実習だけでは経験できない学びにつながっています。

めやすマスターの一人、田原憲和(立命館大学准教授)編著で、2019年4月に三修社より刊行された本書には、めやすマスターを含む19名の報告が収められている。

※事業報告『CoReCa2018-2019』に掲載。所属・肩書きは事業実施時のもの。