公益財団法人国際文化フォーラム

好朋友文化体験の場報告

「わたしたちの学校の制服デザイン」発表会を中国・大連で実施

2018年度、TJFは大連教育学院と共同で「わたしたちの学校の制服をデザインしよう」プロジェクトを実施しています。プロジェクトは5月の教師研修から始まりました。研修では、制服をデザインし発表することをゴールとする日本語の授業案をグループで作成したのち、それを参考に各学校で授業を実施しました。プロジェクトに取り組んだのは、大連市内の中高校、好朋友日本文化体験の場がある上海市工商外国語学校と中山市外国語学校。

大連市内の中学校17組中10組、高校13組中3組の予備審査を通過した生徒たちに加え、好朋友日本文化体験の場がある上海市工商外国語学校と中山市外国語学校の生徒各1組、計15組の生徒たちが、11月16日(金)に大連教育学院の講堂で開催した成果発表会で自分たちがデザインした制服について発表しました。

審査は、デザインのPPTと日本語の発表(制限時間5分)を対象とし、地域や学校の特徴がデザインに反映され、かつオリジナリティがあるか、表情や動作を含めプレゼンに工夫が見られるか、日本語が流ちょうで正確かどうかを基準に行いました。デザインについては、男子と女子の制服だけでなくネクタイ、リボン、ベルト、かばん、靴なども審査対象となりました。

考え抜かれたデザインが続々

大連市第30中学では、まず今の制服について検討したこと、その結果、品質、生地、風格、色、スタイルすべてを考慮し新しくデザインし、柔らかくて洗いやすい木綿を使い、色は黒と青で、健康、自然な感覚を表現したと発表しました。また、かばんには中国結びがついていて、自分たちの文化を大事にしていることがわかりました

上海市工商外国語学校の発表では、中国の制服の移りかわりや、学校からの帰り道に咲いている市花、白玉蘭の美しさと香りに触発され、白玉蘭をアレンジしたロゴを制作したことなどが発表されました。舞台にあがった3人の掛け合いで発表するスタイルはほかにはなく、とても新鮮でした。

中山市外国語学校がデザインした制服の理念は、シンプル、統一感、清潔感3つ。学校がある地域は平均気温が約22度と温暖な気候です。そのことを考慮し、素材には綿が選ばれました。代表で参加した3人の生徒たちは、このプロジェクトに参加することで、自身の日本語力が向上しただけでなく、チームワークを高めることができたと話していました。

大連市第16中学は、学校の名前である16の中国語の発音(shiliu)が柘榴の発音と同じであることから、制服のデザインに柘榴を取り入れていました。専門性の高いデザイン、素材の説明、心地よさや美しさ、学生らしさも表現されており、夏の制服に中国風の襟を取り入れたことなどが評価され、高校部門の1位を受賞しました。

審査員特別賞として、制服デザインを審査対象とする服装表現賞が設けられ、受賞した大連市34中学の生徒たちには、横山審査員からリボンとネクタイが贈られました。「デザイン画もしっかり描けていて、襟、リボン、エンブレムなど細かいところまで、その一つひとつの理由も含めてよく考えられていた」ことが受賞理由でした。

審査の集計をしている間に、(株)このみの協力により、制服ファッションショーを実施しました。制服を着た大連市48中学の生徒6名は、自分たちが選んだ音楽に合わせて、講堂全体を舞台にしてポーズを決めたり、踊ったりしながら自分たちが着ている制服をアピールしました。会場にいた生徒、教師、校長や副校長、大連在住の日本人150名全員が楽しんだ6分間でした。

プロジェクトに参加した教師の振り返り

発表会の翌日、「わたしたちの学校の制服をデザインしよう」に取り組んだ先生方の交流会を設けました。参加したのは、上海市工商外国語学校、中山市外国語学校から各1名、大連市からは、第4中学、第16中学、第31中学、第34中学、実験中学の5校から6名の計8名と大連市と黒龍江省の日本語指導主事でした。交流会では最初に、各学校でのプロジェクトへの取り組み方や成果などを報告してもらいました。

中山市外国語学校では日本語の授業6コマを使って、日本のドラマや漫画などで登場する制服を自分たちの制服と比べたり、体験の場にある制服を実際に着てみたりして、それぞれの制服の特徴をつかんだ後、デザインをする上でのポイント(学校の特色をふまえること、学生らしいデザインであることなど)に留意しながら、グループでデザインを考え、校内発表会を行いました。生徒からは、デザインを考え、みんなの意見をまとめ、日本語で発表することは大変だったけれど、友だちと協力してできたことやみんなが自分たちの発表を聞いてくれたことがよかったと感想があがったようです。先生も、このプロジェクト学習を通じて学んだ文法や単語が生活のなかに活かされていること、生徒の個性を発見できたことなど収穫があったと述べていました。

大連市の第31中学や実験中学では、日本語の授業だけでなく、美術の先生や技術の先生から大きな協力を得るなど、教科横断的な学習につながったことが報告されました。

プロジェクト学習の意義

ひととおり実践を報告し合ったのちに、5月の教師研修で講師を務めた林洪・北京師範大学准教授に、今回の発表でよかった点、工夫するといい点などを挙げていただき、今回の「私たちの学校の制服をデザインしよう」を例にとってプロジェクト学習の意義について語っていただきました。

プロジェクト学習では、テーマとゴールを明確にして生徒に伝え、ゴールを達成するために何が必要なのか、どうすればいいのかを生徒に選ばせることが必要で、例えば日中の制服の比較をするときもいい悪いという表面的なことではなく、自分はどう思うのかを考え発表することが大切であり、さらに5分という制限時間のなかで伝えるためにはポイントをしぼり自分のことばを使って発表することが重要。こうした活動を通じて、思考力や表現力を育成できると述べました。その点からも、どの発表も制服についてよく調べてまとめていたが、自分の考えをデザインに入れていくことが大きな目的・目標だったので、それを入れていくともっといいというアドバイスもありました。

(事業担当:水口景子、宮川咲)

事業データ

「わたしたちの学校の制服をデザインしよう」プロジェクト成果発表会

日時

2018年11月16日(金) 14:00~16:30

場所

中国・大連市

共催

大連教育学院、TJF

助成

(公財)三菱UFJ国際財団

審査員

楊慧(大連教育学院日本語指導主事)、李煒(遼寧師範大学日本語学科教授)、横山豊子((株)このみ副社長)、水口景子(TJF事務局長)

参加者

大連市13組、上海市、中山市各1組、計15組(中学10組、高校5組)

「わたしたちの学校の制服をデザインしよう」プロジェクト参加教師の振り返り

日時

2018年11月17日(土)9:00~12:00

場所

中国・大連市

主催

TJF

助成

(公財)三菱UFJ国際財団

ファシリテーター

武田育恵(日本語教育専門家)

アドバイザー

林洪(北京師範大学外国語言文学学院日文系准教授)

参加者

大連市と黒龍江省の日本語教育指導主事各1名、大連市、上海市、中山市の日本語教師8名、計10名