ラーメン都@クライストチャーチ

カンタベリー大学

ラーメン都@クライストチャーチ

PEOPLEこの人に取材しました!

村瀬敬一さん

ラーメン都 店主

ニュージーランドのクライストチャーチに「ラーメン都」というラーメン店が2020年の2月に開店しました。その経営者村瀬敬一さんに、ニュージーランドへの移住、店の開店、ニュージーランドの生活などについて話を聞きました。

バックグラウンド

Q:いつ、どちらからニュージーランドへ移住してきましたか。

約12年前に日本の愛知県からニュージーランド、クライストチャーチに来ました。

Q:ニュージーランドに来る前の生活について少し教えていただけませんか。

日本では高校卒業後に和食料理店で数年働いた後、デザイン専門学校を卒業して、アパレル会社で企画営業とブランド責任者をしていました。

Q:移住したとき、「外国人移住者」としてカルチャーショックを受けたことがありますか。

私は日本ではだいたい朝6時から夜11時頃まで働いて、休みは月に2日くらいというものすごく忙しい日々を送っていました。ですから、ニュージーランドに来て一番驚いたのは、なんとのんびりとした国なんだろうということでした。
日本では、ほぼ24時間365日、いつでも迅速に必要なサービス、コンビニやレストラン、その他の娯楽を受けることができます。そして、全てが時間通りに遂行されます。(とても便利な反面、それを提供するためには労働者が生活を犠牲にする必要があります。)私が来た頃のニュージーランドでは、6時には小売店は閉店していましたし、ありとあらゆるサービスが時間通りに進んでいませんでした。TVやラジオなどの公共放送ですら時間を守っていなかったのです。これには驚きました。

店の開店と料理

Q:日本を恋しく思うことや懐かしく思うことがありますか。

恋しく思うことは、とにかく日本の食べ物です。
私がクライストチャーチに来た頃は、日本食の看板を掲げていても日本人経営のお店はごくわずかでした。そういった店は日本の味ではありませんでした。日本人経営のお店であっても日本食の修行をしたシェフは少なく、特に寿司にはびっくりしました。私の父は江戸前寿司の職人でしたので日本の寿司とは違う寿司が認知されていることに戸惑いを感じました。だから、Kinji Japanese Restaurantができたときは、これで本当の寿司をこの国の人も食べられると嬉しく思いました。

Q:いま、「ラーメン都」というラーメン屋さんを経営されていますが、お仕事を少し説明していただけませんか。

「ラーメン都」は自家製熟成麺と化学調味料無添加のスープにこだわったラーメン屋です。ですから、毎日、朝から自分で製麺しています。そしてランチの営業中にスープの仕込みを始めます。ディナーの営業が始まる前にスープの仕込みを終え、ディナーの営業中はトッピング具材の仕込みをします。

Q:ニュージーランドでお店を開くのに困難なことはあったでしょうか。

全てが困難との戦いでした。まず、必要な食材が手に入りません。すごく限られた選択肢の中から食材を選び、手に入らない食材は全く違う物で代用することも多々あります。それら全てを技術や知識で補う必要があります。
専用のキッチン機器も手に入りません。全て日本から船便で送ってもらいます。
味に関して日本人は比較的塩味が強い料理を好みますが、Kiwi(ニュージーランド人)は甘い味付けを好みます。しかしラーメン都はあえてKiwiに合わせた味付けにはしていません、限りなく日本の味に近いです。

Q:コロナウイルスでロックダウンの間、ラーメン屋さんの営業は続いていたそうですね。「DIYラーメン」や病院のために作った仕出し弁当などにとても感動しました。そのときのことを詳しく話していただけませんか。

DIYラーメンは調理済の具材とスープそして茹でていない生麺がセットになっていて、ご自宅で麺を茹でていただき出来立てを召し上がっていただけるお持ち帰りセットです。DIYラーメンや病院への寄付は食材を無駄にしたくなかったからやったことで、褒められるようなことではありません。当初レベル3がもう少し長く続くと思い、普段通りの量を仕込んだら、48時間後にロックダウンしますと言われて困りました。最初は仕込んだ食材を冷凍しようかとも思いましたが、品質が落ちるのでやめました。
このままでは食材が無駄になってしまいます。しかし料理人の仕事は食材の命を奪うことではなく、食材の命を次へと繋ぐことだと常々思っているので、食材を無駄にすることだけはしたくなかったのです。そこでスタッフに協力を仰ぎ、DIYラーメンと電子レンジラーメンを作りました。ありがたいことに多くの方々に喜んでいただけました。ですからこれからも警戒アラートが出ている間、エッセンシャルワーカーにラーメンを贈る活動を続けようと思います。

DIYラーメン

外国での子育て

Q:村瀬さんの二人のお子様はニュージーランドで生まれましたね。お子さんと村瀬さんの成育環境を比べると、違うところがありますか。

違うところがあるというより、同じところがありません。
まず、一番の違いは親子で過ごす時間が多いことだと思います。
日本では長時間労働のせいで親子が一緒に過ごす時間がとても少ないです。それから、ニュージーランドで育つ子供はとても伸び伸びと過ごしていると思います。ニュージーランドの学校では、個々の特性を尊重し、個々に合わせた教育をしてくれているように感じます。

Q:村瀬さんはお子さんたちを日本文化とニュージーランド文化で両方育てられていますか。何か難しいところがあるでしょうか。

どちらの文化も大事にしていきたいですが、私たちが教えてあげられるのは日本の文化だけなので家では日本文化に沿って子育てをしています。ニュージーランドの文化は学校や友達関係から学んでくれたらいいなぁと思います。

Q:文化ばかりではなく、日本語もお子さんたちに教えていらっしゃると思いますが、日常生活で英語を使うニュージーランドで、どうやって日本語をお子さんたちに教えますか。自宅では日本語しか話さないなどのきまりがありますか。

家の中では私たち夫婦が日本語で会話をするので自然と日本語で話しています。
テレビは時間を決めて、ニュージーランドの番組と日本の番組を両方観ます。
それから、毎週土曜日は日本語補習校に通わせています。

(インタビュー:2020年4月)

Related Articles関連記事

ニュージーランドで暮らす
ニュージーランドと日本の架け橋

ニュージーランドで暮らす

ニュージーランドと日本の架け橋

日本語教師
伊津野千登勢さん

日本語の授業のインタビュープロジェクトのために、4月18日に伊津野千登勢さんにインタビューをお願いしました。プロジェクトのテーマは「移住」で、フォーカスは「転機」です。伊津野さんは知り合いがいないにもかかわらず、おひとりでニュージーランドに…(続きを見る)

私たちが
取材しました

カンタベリー大学

きんじさんのキッチン

ニュージーランドで暮らす

きんじさんのキッチン

寿司シェフ、レストラン「きんじ」のオーナーシェフ
浜田勤士さん

「日本食レストランきんじ」のオーナーシェフであるきんじさんに、ニュージーランドへの移住や転機について、そして夢を実現する時に直面した困難や達成感、日本と現在のライフスタイルについてお話を聞きました。…(続きを見る)

私たちが
取材しました

カンタベリー大学