TJFが2015年度から作っている、日本文化に触れることができる教室「好朋友日本文化体験の場」。今回は、ハルビン市朝鮮族第一中学校と上海市工商外国語学校の体験の場で、「畳を作ってみよう」ワークショップを開催しました。
講師をお願いしたのは、神戸にある前田畳製作所の社長、前田敏康氏。体験の場に上海工場で作った畳を納入してもらったことがきっかけです。ワークショップでは、畳について学びながら、A4サイズのミニ畳を作ります。
ハルビン市朝鮮族第一中学(中高一貫校)のワークショップには、同校日本語科の中学1年生から高校2年生の生徒40人余りが参加しました。教室に敷いてある畳をドアからそーっとのぞき、「わー、畳だー!きれいー!」と言いながら、初めてみる畳に少し興奮気味の生徒の皆さんを招きいれ、畳に座ってもらいました。
前田氏は、畳の活用方法や素材を簡単に説明してから、畳が持つ効能をかわいく描いた紙芝居を披露します。抗菌、除湿、気持ちを穏やかにする香り、クッション性など、知らなかった畳に興味をもってもらいます。
それを受けて生徒たちが畳を作りました。中学1年生の男の子たちは、9月の入学後日本語の授業を受けてまだ1ヶ月ほど。日本語での会話はままなりませんが、それでも必死に講師の日本語の説明を聞きとろうとしています。いざ手を動かし始めると我先にと夢中で手順を追っていきます。片言の日本語で講師に質問しながら、楽しそうに畳を完成させてくれました!
高校生は、日本語はほぼ聞き取れている様子。話を聞きながらクラスメートと協力して畳を作っていました。
ミニ畳といってもへりもきちんとつけます、講師が用意したへりの模様と色は様々。高校生の女の子には、緑色の、あのよく見る柄のへりが配られましたが、気に入らなかった様子で、近くの男の子と交換していました。しかし講師がデモで作っていたへりの柄が、最初に配られたものと同じだったことに気づき、「講師と同じがよかった」といいながら、交換してくれた男の子に駆け寄り、再度交換、嬉しそうに制作を再開しました。「実際に手を動かしてやってみたことが楽しかった」と参加生徒は話してくれました。
日本語科の先生にも、一緒に作っていただきました。中等部担当の金先生は、とても楽しそうに参加してくださり、最後には自分で作った畳を両腕で大切に抱えて帰りました。
ワークショップの途中で驚かされたのは、生徒たちの礼儀のよさ。「畳にあがるときは靴を脱ぐ。脱いだ靴はきれいにそろえること」と以前教えられていたようで、生徒たちは自主的に、とてもきれいに靴をそろえていきます。さらに終了後には、机に残っているごみを片付け、椅子を重ね、使ったホッチキスのロックをかけて机の端に揃えて並べてくれました。担当の先生が声をかけて始まった片付けではありましたが、積極的に動き隅々まできれいに並べてくれました。これには講師もつい写真をパシャリ。
講師が普段からワークショップで大事にしていることは、講師の理念である「ていねいに暮らす」ということを考えてもらうことです。畳も、何からできていて、どうしてこういう風に作ったのか、少し考えてみたり、疑問に持つことを大切にしてもらう。そうすると、自然と感謝の念や物を大事にする気持ちが生まれる、と。
ハルビンでは「ていねいに暮らす」ことをゆっくり考える時間がありませんでしたが、普段は勉強で忙しい生徒に手を動かして体験しながら日本の文化や大切にしている気持ちに触れてもらうことができたと思います。
上海では、第8回中等日本語課程設置校工作研究会(日本語開講校の中国全土のネットワーク)の年会に参加している日本語教師向けのワークショップを実施し、畳作りを経験してもらいました。「これは生徒に体験させたい!!」との声がとても多く聞かれました。畳を作ってみる「見える文化」と、その裏に隠れているどうして、なんのために、どんな気持ちで、という「見えない文化」に触れてもらいました。
参加した中山市外国語学校の劉先生は、「畳を実際に製作する過程は難しかったけど、自分の身の回りにあるものがどんな考えで作られているのか、”ていねいに暮らす”ということについて考えるようになりました」と教えてくれました。
体験の場がめざしていることは、日本や日本の人と触れ、繋がり、交流することです。
今後は、好朋友日本文化体験の場がある他の学校・地域を回りながら、畳を作ってみるという体験を通して感じる思いを大切にしていきたいと思います。また中高生に限らず、中国国内の日系企業で働く中国の方など大人向けにも展開していけると考えます。
日本語を勉強している生徒たちがもっと楽しく日本を知り、日本に触れ、興味を持って勉強に励んでいけるようにサポートしたいと思います。
(事業担当:宮川咲)
事業データ
畳ワークショップ@ハルビン
2018年10月10日(水)
ハルビン市朝鮮族第一中学
(公財)三菱UFJ国際財団
前田敏康(前田畳製作所)
ハルビン市朝鮮族第一中学の生徒42名、教師4名、指導主事1名
畳ワークショップ@上海
2018年10月13日(土)
上海市工商外国語学校
※ハルビン会場は主催、上海会場は中国中等日本語課程設置校工作研究会に協力し実施
(公財)三菱UFJ国際財団
前田敏康(前田畳製作所)
中等日本語課程設置校工作研究会に参加の日本語教師約65名