公益財団法人国際文化フォーラム

好朋友文化体験の場報告

『好朋友日本文化体験の場 活用アイディア集』を作成しました

2016年度から2017年度にかけて、中国遼寧省・大連市第31中学、上海市工商外国語学校、広東省・中山市外国語学校、黒龍江省・ハルビン市朝鮮族第1中学の学校内の教室に「好朋友日本文化体験の場」(以下、体験の場)が完成しました。体験の場は、各校が施設(教室)を準備し、TJFは教材や浴衣、カルタ、五月人形、学校の制服、百人一首、絵本などを寄贈してできあがりました。その後TJFは体験の場にある物品をレアリア(実物教材)として活用してもらうためにさまざまな研修を実施してきました。そしてさらなる活用につなげるためにどうしたらいいのか、2019年度は体験の場を巡回し、先生たちと話をするなかで、学習者のレベルにあわせてレアリアを活用することが難しかったり、活用方法がわからないレアリアがあることがわかりました。そこで、先生方が参考にできるアイディアをまとめると同時に、レアリアをただ単に紹介するだけでなく、レアリアを使って生徒の「なぜ」を促し思考力を高めるような活動を掲載した冊子を作成することにしました。
作成にあたっては、体験の場の構想から長らくともに考えてくださっている中国日本語教育専門家の武田育恵さんにご協力をお願いしました。そして2019年度末に58ページからなる『好朋友日本文化体験の場 活用アイディア集』を完成させました。コロナ禍で長期間郵送できずにいましたが、このたびようやく43冊の発送を終え、体験の場の先生方の手元に届きました。

アイディア集の特徴

体験の場にあるレアリアを使った実践アイディアを中心に、年間行事にあわせた活動案や、文化を取り入れることの意義・生徒の学び・教師の姿勢などこれまでの研修で取り上げてきたこともまとめました。

特徴① 文化を取り入れた授業案

実践アイディアでは、5つのカテゴリー(願う、贈る、創る、遊ぶ、衣食住)に分け、体験の場のレアリアを使って1コマでできる授業案を掲載しています。難易度や実施時期、対象クラスなどの記載もあり、自分のクラスにあわせて見ることができます。さらに「もう一歩やってみよう」のコーナーを設け、発展形のアイディアも紹介し、上級クラスでも参考にできるようになっています。

特徴② 文化の3P実践ポイント

2019年度の研修で取り上げた「文化を3P(Product、Practice、Perspective)で捉える」ためのヒントや生徒が「なぜ?」を考える質問をあらゆる活動で紹介しています。生徒が文化にふれ「なぜだろう」と考えることで、さまざまなことを思考するきっかけになるようにしています。

特徴③ 年中行事をレアリアとリンク

日本語の授業でよく取り上げられる年中行事や学校行事を月ごとにリストにし、体験の場にあるレアリアを使ってできることを掲載しています。特に授業時間に余裕がない学校やクラスでは、年間行事をその季節に紹介して文化に触れてもらう方法が取り入れやすいとの声を多く聞くため、多くのアイディアを載せました。

特徴④ 少しの時間でも文化を取り入れるポイント

先生方から一番多く聞かれるのは、「時間に余裕がなく、文化を取り入れられない」という声です。そこで、少しの時間で、簡単に取り入れられるポイントを紹介し、現場の先生に寄り添うことで、少しでも学習者の学びが広く、深くなるようにしています。

受け取った先生方の反応

2名の先生に、これからの使い方の予定を聞いてみました。

ハルビン市朝鮮族第1中学(中高一貫校) 朴英姫先生

授業1コマすべての時間をかけては取り上げられない学習状況ですが、まずは授業中少しずつ文化を取り入れていく予定です。
①平仮名を習いたての生徒には、かるた遊び、朝の読書の時間に寄贈してもらった日本語の書籍を読ませたり、早口言葉カードやラジオ体操カードを使ったりします。体験の場の畳の部屋で浴衣の着付け、日本の制服を着てみてから、生徒に自由に感想などを話してもらったり、先生が出した質問に答えるような形でやってみます。
②高校生には文法学習後集中力がきれた時、気分転換としてラジオ体操カード、けん玉、羽子板、だるま落としの遊びを取り入れ、グループを分けて体験してみます。体験後は感想文を書いてもらいます。
③年中行事のアイディアは、授業の始めか終わりのところで、行事の写真などを見せながら説明したり、“なぜ”を投げかけて生徒の思考を促し、最後に生徒に自由に意見を言ってもらいます。
今学期も半分過ぎていますが、やるだけやってみます。来年新学期の始めから詳しく計画を立ててやります。

上海市工商外国語学校 張冼先生

実践アイディアは話題分野と難易度がはっきり書かれているので、生徒達のレベルを考えながら教科書の内容と結び付けやすいです。体験の場にあるレアリアを活用させることは生徒達の学習意欲を高め、特に授業で「なぜ」を生徒自身に気づいてもらうことと深く関連すると思います。活動の流れも丁寧に説明して頂いて本当にありがたいです。これらの実践アイディアは会話の授業などに大変役立つと思います。普段文法を教える基礎日本語の授業で、「普段の授業で出来る!実践ポイント」が使いやすいです。会話の練習と書く練習もできます。情報収集の部分を利用して情報をもっと収集し、普段文法の授業にも気軽に取り入れることができます。

特に今年は、コロナウイルス感染拡大の影響で学校が休校になったり、オンラインでの授業になったりと先生方も対応に追われました。通常授業に戻ってから、遅れてしまった分を取り戻すため、文化体験やイベントなどを行う余裕はない学校が多いと聞きました。そのなかででも、アイディア集のアイディアを授業に組み込めそうだとの声が届いています。

今回作成したこのアイディア集を体験の場の先生方が手に携え、授業にさまざまな文化を取り入れ、体験の場をそれぞれの学校に合う形で活用していっていただきたいと思います。

これまでの研修に関する報告は以下よりご覧ください。
https://www.tjf.or.jp/information/category/kikkake/bunka/

(事業担当: 宮川咲 )

事業データ

『好朋友日本文化体験の場 活用アイディア集』の作成

仕様

A4判、58ページ、43部

期日

2020年5月作成

助成

三菱UFJ国際財団

協力

武田育恵(華南師範大学南沙中学校日本語教師(当時)・中国日本語教育専門家)

送付先

現在体験の場がある4校(遼寧省・大連市第31中学、上海市工商外国語学校、広東省・中山市外国語学校、黒龍江省・ハルビン市朝鮮族第1中学)の日本語科教師28名、日本語教研員1名、各研修でアドバイスをくださった先生3名、体験の場に興味をもって学校単独で体験の場を設置した学校(遼寧省・大連市第35中学、黒龍江省・ハルビン市第8中学)の先生方11名、合計43冊