経験を味わうジャズ喫茶

経験を味わうジャズ喫茶

PEOPLEこの人に取材しました!

山口元康さん

ジャズ喫茶店「Bunca」オーナー

私たちは好きなことを精一杯やることが「アートな仕事」だと考えました。山口さんは学生時代にジャズと出会い、その道を極めるために7年間志木のジャズ喫茶「Bunca」で修行を積み、11年前から保谷の住宅街でひっそりとジャズ喫茶を経営する山口元康さん。今では一粒一粒選び抜かれた自家焙煎のコーヒーや、木のぬくもり感じる店内に流れるジャズへのこだわりはもちろん魅力です。

山小屋でのジャズとの出会い

昔、山小屋でアルバイトしてたのね。山小屋ってわかる? 本当の山小屋。山登りしていくような。現代の山小屋って自家発電で電気がついてたりするんだけど、電気も来てなくて、水道もなくてね。ガスは一応プロパンガスがあるんだけども。まあ水はほとんど雨水を貯めてさ。で、電気がないから、ミニコンポ? ラジカセのちょっと大きいのに単一の電池10個入れてね。それで山小屋の人が教えてくれるジャズ聴いてたんだよ。結構いい音するんだよね。その山小屋の明かりがランプなんですよ。ランプってね、暗いけど、暖かみのある明かりでね。そういう中でマイルス・デイビスの曲を聴いたりなんかすると、もうたまらないよ。高校生までほとんどJpopとかしか聴いてなかったからショックだったね。ああ、こんな音楽あるんだって。ハマっちゃったね。

まあ今でも、マイルス・デイビスなんかは新しいCDなんかになってるでしょ。やっぱりすごいよ。歴史に残っているというか。歴史という時間のふるいにかけられた後もちゃんと残ってるしね。だから、そういうのは若い人にも聴いてほしいな。そういう意味でこの店をやってるということもあるかもしれないね。歴史に残る音楽を紹介したいっていうか。だからBuncaのコーヒーと一緒にジャズを聞いてほしいですね。

保谷「Bunca」の誕生

20代の頃は新宿の「DUG」とか、御茶ノ水の「響」とか。老舗のジャズ喫茶が東京にあったから、そういうところに年中入り浸ってたね。7年間修行することになる志木の「Bunca」に行ったのは30過ぎてから。僕はその頃教員をやっていたんだけど、付き合っていた女性が亡くなったのをきっかけに教員をやめたんですよ。で、そういうことがあったから、好きなことやろうと思って。なんてったって人生一回しかないからね。
それで、志木にある「Bunca」でコーヒーの修行をすることにしたんだよ。僕も彼女も「Bunca」にはよく行ってたから、マスターも彼女のことを知っててくれてね。だから教えてくれたんだよね。普通の人間には教えないって言ってた。興味本位でやるんだったら教えないって。それで弟子入りしたんだけど、その人がおっかない人でね。何年もやり直し、やり直し、やり直しでもう。それでも7年修行して、Buncaの名前を頂いて、たくさんの人たちの応援を支えで、自分の店を持つことができました。

変わらぬこだわりの味

コーヒー豆を煎るのはとても難しい。ただ焼くだけではなく、しっかりと芯まで火を入れなくちゃいけない。酸っぱいコーヒーは嫌だし、かと言って苦いだけのコーヒーも出したくないし。焙煎はもう20年近くやっているけど、今だに満足できていないです。完璧がない世界かも。

時間の流れ、人生の流れ

こういう店って正直やっぱり儲からないんですよ。一人でやってるせいもあるし、メニューも少ないしね。以前は母親が手伝ってくれたのでカレーやったりピラフやったりしてたんだけど。でも、母親が認知症になっちゃって。
もともとカレーは人気あったんですよ。でも僕一人じゃできないんだよね。寝る時間がなくなっちゃうから。昔は夜の11時くらいまで店やってたから、店閉まってそこからカレー作ってたら朝になってることもあったし。だから40まではよかったんだけど、50過ぎたら難しくて難しくて。それで飲み物中心にしました。で、4月からは営業時間も短くしてね。だからちょっと縮小傾向にあるかな、この店は。だけどコーヒーだけでも飲みにきてくれる人がいるし、常連さんもたくさんいます。そういう時は、僕のやってることは間違いではないんだなと感じます。

かけがえのない店であり続けること

「スターバックス」とか「ドトール」とか、あういうチェーン店があるじゃないですか。まあ、あれはあれでいいんだけど、そういう店だけじゃつまらないでしょ?
だから一つの街に一個こういう店があってもいいじゃない。個人店がなくなっていく時代の中でこういう店をやる価値はあるのかなと思います。ジャズ喫茶というのは昭和の文化だと思うけれど、平成も終わろうとしている現代でもまたジャズ喫茶の文化が残っているんです。

(インタビュー:2018年5月)

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