公益財団法人国際文化フォーラム

つなげる報告

VRを活用したダンスダンスダンスOnline

VRを活用して自然な発話を促す

10回目となる今年度のプログラムも、昨年に引き続きオンライン開催となりました。7月25日から8月15日までの間の計6日、日本の中高生9名、韓国の高校生9名がスマートフォンやPC、VR(ヴァーチャルリアリティ)などの通信機器を活用して交流しました。特に今年は全日程でVRが利用できる環境を整え、日韓混成の4つのチームに分かれて、ダンス動画作品を制作、発表するという内容で開催しました。

VRの活動には、それぞれが選んだアバター(VR上での自分の姿となるキャラクター)でログインし、多人数でコミュニケーション可能なソーシャルVRアプリケーション「VRChat」を利用しました。PC・スマートフォンによる音声通話やテレビ会議システムは、遠く離れた場所にいるひととやりとりすることができますが、VRChatは、相手がまるですぐそばにいるかのような感覚で交流することができます。物を手に取って渡したり、隣に座ってくつろいだり、並んで写真を撮ったり、ダンスを教え合ったり、言語を介在しないやりとりが可能です。昨年から利用をはじめたVRですが、同じ空間内のコミュニケーションは、自然に発話がうながされるなど、オンラインの交流にはかかせないツールと感じています。

はじめてVRで集まった際のひとこま チーム「muse(ミューズ)」

オンライン交流に余白の時間を

本事業では、日本、韓国で互いの言語をまなぶ中高生が、交流活動を通じて、以下3つのきっかけを得ることを目指して実施しています。
1) さまざまな価値をもったひとたちがいること知り、一緒になにかをすることに興味・関心が広がっている
2) 多様性が集団(社会)の力になると信じられるようになっている
3) 隣語(自分にとっての新しいことば)を学びたくなっている

昨年初めてオンラインの交流プログラムに挑戦してみえた課題が、1)の「一緒になにかをすることに興味・関心が広がっている」でした。合宿型の交流では共同生活の中で参加者間の関係を深めながら課題を達成することで上記目標を達成することができました。しかし、昨年のオンライン交流ではそれぞれが役割を果たし課題をこなすことばかりに意識が偏って、仲間と助けあいながら一緒に目標を達成するという体験は十分に提供できなかったと感じています。原因はいくつか考えられますが、合宿型の交流と比較して昨年のオンライン交流は「余白の時間(プログラムの活動からはなれて自由に交流できる時間)」が少なかったことに注目しました。食事や就寝前のやりとりが、後までつづく交流のきっかけになったという過去の参加者は多く、今年はプログラムの課題(ダンス動画づくり)から離れたやりとりがいつでもできるよう環境を整えました。

具体的には、プログラム開始1か月前から終了までいつでもVRやPC,スマホで交流できるように機器をレンタルしました。他に、チームビルディングのためのアイスブレイク活動に十分時間をかけるとともに、各チームにひとりOBOGスタッフを配置するなどして、参加者間のやりとりが活性化するように手立てを講じました。

午前午後
7/25(日)
10:00-, 14:00-
VR接続テスト
日本側参加者
VR接続テスト
韓国側参加者
8/1 (日)
10:00-16:00
アイスブレイク活動チーム名・曲決め、ロゴ制作
8/5 (木)
10:00-16:00
アイスブレイク活動OGOBと交流、ダンス動画作品VR素材集め
8/8 (日)
10:00-16:00
ダンス動画作品制作経過確認ダンス動画作品素材集め
8/11 (水・祝日)
10:00-16:00
内部リハーサルダンス動画作品素材集め
8/15 (日)
12:30-19:00
発表会準備・直前リハーサル、
発表会、振り返り

活動の記録

7/25 VR接続テスト

午前中は日本側参加者9名が、午後には韓国側参加者9名がVRChatで問題なく接続できるかをテストしました。参加者は、2週間前からそれぞれの自宅に配送されたレンタル機器でVRの事前課題に取り組んでいて、使い方に慣れていました。当日はVR技術支援担当スタッフでバーチャルユーチューバーの星音さんの案内で課題の答え合わせをしたり、アバター(VR上での自分の姿となるキャラクター)の操作について詳しく教えてもらったりしました。同時に、WiFiへの接続状況やVR機器の連続使用で体調に問題がないかについても確認しました。利用が困難な参加者がいた場合、PCを代替機器としてレンタルする予定でしたが、幸いに全員がVR利用に問題ないことがわかり、PCのレンタルは不要となりました。

8/1 Zoomでアイスブレイク&VRChatで交流

日韓の参加者全員がはじめて集まるプログラムの初日。まずNYで活躍中の舞台俳優でティーチングアーティストの森永明日夏氏がファシリテートするアイスブレイク活動をZoom(PCやスマートフォンで利用可能なテレビ会議サービス)上で行いました。事前にSNSで交流は進めていたものの、18人全員が顔をそろえるのは初めてで、しかもオンラインという環境の中、次第に笑顔になっていく様子にこれからのプログラムへの期待が高まりました。午後は、チームごとにVRChatに集合しました。機器が昨年度利用した機種より高性能だったことや、扱いに慣れるために約3週間の練習時間を設けたこともあり、心配していた接続はスムーズでした。結果、アバター姿での交流をじっくり味わうことができ、チームの名前やダンスの楽曲、ロゴのイメージなどの話題でやりとりすることができました。また、今年は最初からOGOBスタッフを各チームひとりずつ配置していたので、グループ別活動の進行も円滑に行われました。

Zoomでのアイスブレイクの様子

8/5 VRChatでアイスブレイク&OBOGと交流

プログラム二日目も午前中はアイスブレイク活動を行いました。ファシリテータの森永明日夏さんには、「ZoomとVRの世界を行き来しても変わらず関係を深められる活動内容を」とお願いしていて、この日のアイスブレイクは、先にZoomで行った活動をVRChatに移動してから続けて繰り返す、という流れとなりました。午後は、OBOGとの交流をVRChatで行いました。ZoomでなくVRChatを場に選んだのは、すぐそばにいるという感覚の中なら、同じプログラムを経験した年の近い先輩に話に集中したり気軽に質問したりできるのではと考えたからです。実際、先輩の話を興味深そうに聞いたり、質問したりする参加者の様子が散見されました。

VRChatでのアイスブレイクの様子

8/8 進捗確認と作品制作

初日からちょうど7日が過ぎたプログラム3日目。午前中は、プログラムのテーマであるダンスの動画制作の進捗を確認するため、Zoomにチーム別の部屋(ブレイクアウトルーム)を用意し、動画編集の専門家、プロダンサー、バーチャルユーチューバーが巡回しました。何名かの参加者が活動とは関係のないことをしていたり、チームにどんな貢献ができるかわからずとまどっていたりする様子が見受けられました。
午後は、Zoomでの活動とVRの活動、どちらを希望するかを最初に聞いてから活動を行いました。午前中と比べて、参加者自ら今すべきことを考え、互いに意見を出しあう様子がみられました。ZoomやVRChatいずれも向いている活動と不向きな活動があり、参加者が場を選べるようにすることが効果的な交流につながると感じました。

チームごとに動画作品の素材を集める様子 チーム「마름모(マルンモ)」

8/11 内部リハーサル&作品制作

プログラム4日目。午前中に内部リハーサルを実施。発表会が間近に迫っていることを実感し、作品完成にむけてチームの結束力が更に高まりました。それまで口数の少なかった参加者から声かけしたり、どうすればもっと良い作品になるかについてのアイディアが交わされたりする様子がみられました。動画編集の専門家である小峰智さんから、「ダンスがテーマのプログラムなので動画制作ばかりに気を取られがちだけれど、登場したところからが作品だよ」というアドバイスを受けて、登場後のチーム紹介からインタビューにこたえて退場するまでを作品と考えて、チームで意見を持ち寄る様子が見られるようになりました。午後も各チームで作品制作のための作業を進めました。この日、VR技術支援担当でバーチャルユーチューバーの星音さんは、VR内での撮影や助言をもとめられてひっぱりだこでした。

チームごとに動画作品の素材を集める様子 チーム「eien kids (フォーエバー キッズ)」
チームごとに動画作品の素材を集める様子 チーム「REMIX(リミックス)」

8/15 直前リハーサル&発表会「DDD Online LIVE on stage」

プログラム最終日。前日夜までに全てのチームから作品が提出されました。いち早く完成したチームも提出ぎりぎりまで改良を重ね、全てのチームが全力を尽くしたことがわかる作品となっていました。直前のリハーサルでは、進行のひとつひとつを確認しながら本番に備えました。発表会には定員の100名を超える応募があり、当日来場した90名近くの見学者の中で作品が発表されました。発表会にはサプライズで過去のプログラム参加者によるチームの作品も加えた5つの作品が公開されました。

eien kids (フォーエバー キッズ)
muse(ミューズ)
마름모(マルンモ)

REMIX(リミックス)
DDD의 스케치 북(DDDのスケッチブック)

発表会の見学者からは以下のような感想が寄せられています。


保護者

どのチームの発表も、工夫を凝らし素晴らしかったです。また、力を合わせて作り上げた様子が伝わってきました。

皆さん素晴らしかったです。思ってるより、ずっといろんなことが出来ると思いました。

過去のプログラム参加者

グループ内で役割を分担して動画制作していて、一人ひとりが得意な部分でグループを支えるというのが非常に良かった。また発表以外の部分でも、背景をグループで統一したり、司会の方々が参加者を応援するようなメッセージを画面で見せていたり、仲の良さや絆を見れた気がした。

高校教員

コロナ渦という状況下にも関わらず、オンラインで作品づくりに挑戦したその姿が素晴らしいと思いました。コロナ渦が収束した際には実際に皆が会って交流する瞬間が訪れることを願っています。DDD10年目を迎えられたということで、何事も10年続くことが本当にすごいことだと思いました。

はなれた空間にもかかわらず、一つの作品を完成させたことがとても印象的でした。ダンスにかぎらず、どれだけ多くのやりとりをしたのか想像できる内容でした。

大学教員  

短いオンライン交流という制約がある中で、どのチームも作品完成に向けて協働し、何よりも交流を楽しんでいたことが伝わってきました。ロゴや自己紹介も含めてそれぞれに工夫と個性とまとまりが感じられ、素晴らしかったです。制作の過程ではそれぞれに難しいこともあったかもしれませんが、日韓の若い世代が好きなことでつながり、お互いに尊重し合いながら交流を創っている姿を拝見し、大変心強く、誇らしく思いました。

関係団体

オンラインでもしっかり友情が育まれ、参加した一人ひとりがかけがえのない経験をできたことがよくわかりました。

どのチームもメンバー同士の雰囲気が良く、互いを尊重しつつ協力しあっている様子が感じられました。発表会当日までの活動で、たくさんやりとりして、互いに知り合って、友だちになることができていたのだと思いました。ソウルでの合宿で貴重な時間だった、活動以外のメンバー同士の時間が、オンラインでの活動でも上手く作れていた成果なのではないかと感じました。

その他

各チームとも、お互いを気遣い、盛り上げようとしている姿を、好ましく思いました。

出演者の皆様、スタッフの皆様がしっかり絆をつくり昨日の一瞬まで頑張ってきたんだなという事が画面を通じて、NYまで伝わってきました。映像パフォーマンスも素敵でしたが、皆でつくった絆や、なんとかして最後までやりきる事、相手をおもう事など、これから生きていく上で、今回経験したものが役に立つ日がくると思います。皆の想いが溢れる言葉に泣きそうになりました。


発表会終了後、休憩をはさんで参加者とスタッフで振り返りの時間をもち、プログラムを終了しました。物理的には離れ離れでしたが、心理的には場を共有し親交を深めることができ、参加者スタッフを問わず誰もが別れを惜しむ様子でした。後日提出してもらったシートには次のような振り返り(一部抜粋)が記されていました。

私が一番成長したと思うところは、「挑戦する力」「諦めない力」です。新しい試みをやってみたり、たとえ言葉が通じなくてもいろんな方法を使って自分が伝えたいことを、伝えてみたりということができるようになりました。

今、自分に残っていることは「やる気」です。たくさんのOBOGの皆さんの話を聞いて今の夢に向けて「やる気」が残っています。夢がかなったらすぐ連絡します。

今回のプログラムは今年の夏一番の思い出ですし、一生忘れられない大切な思い出です。楽しかった分、皆とのお別れは本当につらかったので、これからも沢山連絡を取りたいですし、コロナがおさまったら絶対に会いたいと思います!

私はDDDの応募をギリギリまで悩んでいましたが(今までにない体験なので不安で)勇気を出して応募して、参加できて本当に良かったなと思っています。想像の200倍楽しかったし、仲良くなれたので、これからもこのようなプログラムがあったら絶対参加しようという気持ちもでてきました。

ダンスができなくてチームに迷惑がかからないか本当に心配していたけれど、チームの仲間は「大丈夫だよ」といってくれて、積極的にして作品づくりをしてみたら、協力することがとても重要だということに気づいた。そして、まずは勇気を出してチャレンジしてみることが大切だということに気づきました。

自分の意見をはっきり言えるように成長できたように思います。自分の意見が必ずしも受け入れられなくても、いろいろな考えがチームを回す歯車になっていることを実感することができました。

カメラの前で笑って話せるようになりました。もともと私は、顔に自信がなくて、オンライン授業で先生からカメラをつけなければ欠席扱いにするといわれても、むしろ欠席を選ぶような生徒だったのですが、どうしてもDDDに参加したいという思いから勇気を出して参加したことが私を変えました。

オンライン交流プログラムにおけるVR

今年は、課題だったVR機器のネットワーク接続の問題が改善され、スケジュールどおりプログラムを進行することができました。VRによって参加者全員が交流のための空間に没入することができ、やりとりが自然に促される環境が整いました。他にも身振り手振りや、仕草や佇まいなど言語以外のメッセージも届けられるなど、参加者間の関係構築に貢献することが改めて確認できました。しかし、VRの長時間使用は体への負担が大きいため、参加者間の関係がある程度構築された後は、むしろ不便であるという声が届くなど、機器の利用にふさわしいタイミングがあることを実感しました。テレビ会議システムとVRのSNSをニーズに応じて選択できる環境を整えることがオンライン交流においては重要であることがわかりました。なお、今年度重点課題に掲げた「一緒になにかをすることに興味・関心が広がっている」という目標は、十分に達成することができました。要因は、当初計画準備した機器の環境整備や人員の配置だけでなく、プログラムの途中で急遽企画した参加自由の交流の場が大きな役割を果たしたことを付け加えなければなりません。活動のために結成されたチームを離れ、スタッフ参加者の分け隔てないやりとりが、プログラムへの一体感を高めていたことが後日参加者全員から提出された振り返りシートからも伺えます。オフラインでは自然発生する交流(お土産にもってきたお菓子を交換したり、夜食に激辛ラーメンをたべたり、恋愛の話をしたりなどなど)をオンラインでは意識的につくらなければならないことを実感しました。

交流プログラムのこれから

異なることばや文化を背景とするひととの交流は、コミュニケーションの質を会話から対話へと促す力があります。同じことばを使って同じ社会に生きている相手とは、ある事柄については共有しているものとして会話が行われます。しかし、グローバル化が進んだ現代の社会では、自分と価値観も常識も違うひととやりとり(対話)しなければならない場面が増えています。中高生の頃に異なる他者と対話しながら課題を達成する体験が得られる国際交流の機会は大変貴重です。昨年来世界を覆っている新型コロナウイルス感染症は、人の物理的な移動を制限し直接交流の機会を奪いながらも、同時に世界の連帯をこれまで以上に求めています。今後も若い世代の皆さんに様々なかたちで交流プログラムを提供していけるよう努めていきたいと思います。

事業データ

事業データ

期間

2021年7月25日(日)、8月1日(日)、5日(木)、8日(日)、
11日(水)、15日(日)(計6回)

場所

オンライン

企画・主催

財団法人秀林文化財団、TJF

実施

秀林外語専門学校、韓国日本語教育研究会、TJF

助成

公益財団法人日韓文化交流基金

後援

独立行政法人国際交流基金ソウル日本文化センター

協力

高等学校韓国朝鮮語教育ネットワーク

メディアディレクター

小峰智(映像ディレクター)

アイスブレイク活動のファシリテーター

森永明日夏(舞台俳優・ティーチングアーティスト、ファシリテーター)

VR技術支援等担当プログラムスタッフ

星音<しおん>(バーチャルYouTuber)

ダンス技術支援等担当プログラムスタッフ

齋藤宣世(ダンサー)
ソンガヨン(ダンサー)

プログラムスタッフ(プログラムOBOG)

中野龍星(2013年度参加者)
佐藤加奈恵(2017年度参加者)
平野美優(2018年度参加者)
ホンミンソ(2019年度参加者)

参加者

韓国語を学ぶ日本の中高生
青森、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、京都府、岡山県、長崎県より9名

日本語を学ぶ韓国の中高生
江原道、京畿道、ソウル市、仁川市、忠清北道、忠清南道、より9名