公益財団法人国際文化フォーラム

日韓の校長交流報告

できることから始める

日韓の校長が顔を合わせ教育方針や理念、自分の考えについて意見交換する。校長自身が交流を体験することが生徒の交流につながると考え、2015年度に日韓の校長交流プログラムを開始しました。実務を担当する教師も加え、日本側が韓国を、韓国側が日本を訪問し、互いの理解がより深まるように二度会う場を設定しています。2018年度も8月に日本の校長と教師14名が韓国・ソウルを、11月に韓国の校長・教頭と教師19名が東京を訪問しました。

ソウルでの出会い

ソウルで訪問した高校では、一生懸命日本語で話をする生徒と接し、学校生活について直接話を聞くことで、「第二外国語教育をもっと発展させていこうと思った」という日本の校長は少なくありません。また、ソウルで学ぶ日本の学生から留学の理由や将来について聞き、自分の生徒たちに会わせたいと思ったり、大学の留学担当者から情報を得て、留学を希望する生徒の指導に役立てようと思ったりしたようです。

東京での出会い

一方、韓国の校長・教師も韓国語を学ぶ生徒に校内を案内してもらったり、日本で活躍する韓国の社会人や留学生と話をし、日本の校長・教師と同じように、自分の生徒と会わせたい、生徒の卒業後の進路の参考になったといった感想があがりました。そして二度目となる校長・教師との交流では、学校訪問について具体的な計画を進めたところもありました。

どんな交流を希望しているのか

このプログラムがきっかけとなって、これまでに6組が交流校協定締結にいたりましたが、協定締結だけが目標ではありません。希望する交流の形態を聞くと、韓国側は10校のうち9校が訪問を、5校が受け入れを望んでいました。一方、日本側は10校のうち2校が訪問を、7校が受け入れを希望していました。実際、韓国の高校が日本の高校を訪問するケースが多いようです。また、すぐに生徒の訪問はできなくても教師の訪問から始めたり、複数校で1校を訪問したりと、できることから交流が始まっています。

長所を学び合う

陳成龍(ジンソンニョン)
韓国・世賢(セヒョン)高等学校校長

2018年11月にTJFのプログラムで東京の高校を訪問していろいろと感じることがありました。訪れた東京の2校では、生徒たちは積極的に授業を受け、ルールも守っていました。その秘訣は何なのかが気になりました。私が見た日本の教育環境を自分の学校の教員にも見てもらいたいと思い、2019年1月に10名の教師と共に日本を訪れました。

今回の経験をもとに、日本の教育の長所を自校でいかすよう工夫していきたいと思います。時間がかかったとしても、生徒たちによりよい教育環境を提供するために、双方の長所をうまく融合していくなかで、教員たちの意識が変わっていき、きっと成果につながると思います。教育の質は教員の質を超えないといわれますから、教員が変わらなくてはいけません。

学校教育をどうするかは校長のマインドにかかっています。その点で校長同士が交流することにはとても意味があると思います。そしてゆくゆくは教員、生徒の交流につながって、両国の高校がわかりあえたらいいと思います。

さまざまな出会い

日本語/韓国語を学ぶ生徒

訪問した学校で、ソウルでは日本語を学ぶ生徒が、東京では韓国語を学ぶ生徒が校内を案内してくれる。 日本語/韓国語で一生懸命話す生徒の姿に心を打たれる。

校長・教師

学校訪問や交流会で校長・教師と会い、教育システムや理念について話す。意気投合し、交流の話が一気に進むこ ともある。

社会人/留学生

東京で活躍する韓国の社会人や韓国に留学・進学した日本の学生の話を聞く。留学の理由は何か、どんな将来像を描いているのか、どんな仕事をしているのか話を聞くことで、生徒の進路選択肢の一つが具体的に見えてくる。

韓国の大学関係者

韓国の大学関係者に話を聞くことで、日本の高校卒業後の進路の一つとして韓国の大学進学が考えられるようになる。

①②の写真は但馬一憲

※事業報告『CoReCa2018-2019』に掲載。所属・肩書きは事業実施時のもの。