公益財団法人国際文化フォーラム

学校のソトでうでだめし報告

「本の魅力を一行で伝える」広告コピーをつくるWSを実施しました。

この数年おもに教員向けに実施してきたCMづくりワークショップを、「学校のソトでうでだめし vol. 2」として開催しました。中高生を対象とするのは3年ぶりです。



CMづくりワークショップでは、CMプランナーの近藤祐見さんの案内のもと、

“what to say”(伝えたいことは何か)
“how to say”(伝えたい人に伝わるためにはどう表現すればいいのか)

を、深く掘りさげていきます。



とくに、”what to say”

●「自分が伝えたいことは、突きつめると、つまり何なのか?」
●「それを、ことばに表現するとどうなるのか?」

を、今まで自分が試したことがないくらいに突っ込んで考えたり、多様な角度から吟味する時間にしてもらえるようプログラムをつくっています。


今回のテーマは、【自分が選んだ本の魅力を伝える】


2019年3月23日(土)に開催したワークショップには、神奈川、埼玉、千葉、東京から中高生8名が参加しました。

それぞれ、自分が選んだ小説やマンガ、辞典などを持参してきています。

まずは、自分がもってきた本の書名を隠したまま、最初の一文を書きだして壁に貼ります。それを読み上げながら、自己紹介をしました。



そのあと、実際の広告の映像やポスターをいくつか観察します。

・ターゲットにしているのはどういう人なのか
・ターゲットに対してどのような態度変容をおこそうとしているのか
・そのために、ことばや映像、写真、絵、ストーリーをどのように工夫してつかっているか

などについて考え、ディスカッションしました。


さらに、商品や企業ブランドなどの価値の本質を表現するための「一行コピー(タグライン)」と、ターゲットの興味をひくための「キャッチコピー」の違いについて確認。



そして、いよいよ自分たちのコピーづくりに取りかかります。

まずは、だれをターゲットにするか大まかに決めます。

その後、それぞれが選んだ本やマンガを見返したりしながら、その魅力を可能な限り考えて付箋に書き出します。

目標は、「付箋100枚」!
もうアイディアが出ないと思ったところから、さらに粘ってしぼりだします。


出し切ったら、伝えたい特徴をひとつにしぼります。
選んだ特徴について、そのよさやおもしろさをさらに深める要素を書きだしたあと、それらを一つの文章に表現します。
その文章を磨きあげて、一行コピーを完成させました。


中高生たちは、ここまでのプロセスで、多くの情報を価値判断せずに集め(書き出し)、それらをもとにアイディアをしぼりだし、複数のアイディアを組み合わせながらピタリとはまることばを探して試行錯誤するというサイクルを繰り返しました。CMプランナーが実際に行っている思考・創造のプロセスを、いわば疑似体験する仕組みです。


途中、アイディアに行き詰まり、頭を抱える中学生もいましたが、高校生が自然と聞き役になって励まし、全員が一行コピーを完成させました。



最後に、キャッチコピーをつくり、画像を加えてポスターに仕上げ、それぞれのコピーやポスターについて感想を述べあったり、制作の意図を発表したりしました。

小説『風が強く吹いている』(三浦しをん著、新潮社)を選んだ高校生は、コピーやポスターの制作意図を次のように説明しています。



この小説は箱根駅伝の話。
箱根駅伝はお正月にあるので、走っているところではなく、お正月の日の出をイメージして画像を選んだ。
主人公たちが当日の朝にみて、「今日、走るんだ!」と思うであろう情景。

仲間との絆を大切にする内容なので、それを最大限に表現する「襷をつなぐ」ということばを一行コピーに入れた。
キャッチコピーは、一行コピーの「襷をつなぐ」につながっていく文になるように工夫した。
こだわったのは、力強さ、意志の強さを表現すること。
そのために、テンポ感のある文章にして、一文ずつに「。」をつけた。


参加者がつくったキャッチコピーと一行コピーをいくつかご紹介します。
いちばん上にあるのがキャッチコピーで、書名といっしょに書かれているのが一行コピーです。

マンガ『ブルーピリオド』(山口つばさ著、講談社)を選んだ高校生の作品
小説『きみの友だち』(重松清著、新潮社)を選んだ中学生の作品
小説『おおかみこどもの雨と雪』(細田守著、KADOKAWA)を選んだ中学生の作品



『ブルーピリオド』のコピーづくりに取り組んだ高校生は、一行コピーについて、

「誰でも」と「誰もが」のどちらにするか迷った。
「誰でも」だと、「誰でもいい」というニュアンスが含まれそうだが、「誰もが」だと、「一人ひとりが」という感じが出ると思って決めた。

と、細かな表現の違いまで考えてことばを選んだと語っていました。

ほかにも、

「アイディアを出すのが難しかった。もっとアイディアを出したかった」
「(1日中考えて)体力の限界」

など、丸一日アイディアを考え続け、納得できることばを探して格闘した様子がわかる感想が多くありました。

来月(2019年11月9日)には、「学校のソトでうでだめし vol.4」として、環境活動に取り組むテンダーさんを講師に迎え、「『しょうがない』を乗り越えろ! 構造を理解し解決を配置するシステム思考実践―ゴミ拾いで稼ぐには」https://www.tjf.or.jp/information/3983/ )を開催します。


(事業担当:室中直美、宮川咲)

  

事業データ

<学校のソトでうでだめし vol. 2> つくる。 味わう。 広告コピー。 「本の魅力を一行で伝える」

期日

2019年3月23日(日)

場所

TJF

ファシリテーター

近藤 祐見(ゆみ)さん
(株)電通CMプランナー/生涯学習開発財団認定ワークショップデザイナー

参加者

中高生 8名