公益財団法人国際文化フォーラム

多言語・多文化交流:パフォーマンス合宿報告

教員向け「演劇教育ワークショップ」を実施しました!

2023年12月23日(土)、TJFは初の教員向け「演劇教育ワークショップ」を福山暁の星女子中学校・高等学校(広島県福山市)で実施しました。教頭先生をはじめ教員17名の参加がありました。 福山暁の星女子中学校・高等学校には外国につながる生徒も在籍していることと、「学び方改革」を行っていることもあり、「多文化×芸術」をコンセプトとするPCAMPに関心をもってくださり、今回の共同企画につながりました。

プログラムのゴールと構成

学校側の希望をふまえ、ワークショップのゴールを以下のように設定しました。

  •  教員間の交流を深める
  •  協働できるチームビルディング
  •  教員としての「引き出し」を増やす

このゴールを達成するために、ワークショップのプログラム作りとファシリテーターをお願いしたのは、PCAMPのメインファシリテーターを長年務めている森永明日夏さん(広島出身、ニューヨーク在住)。2時間という短い時間のなかで、教員の皆さんに演劇教育の趣旨や考え方、実践のプロセス、効果について、体験やレクチャー、振り返りを通して学べるようにプログラムを組みました。

身体で体験する

ワークショップ当日は終業式や関連行事もあって、教員の皆さんは多忙なスケジュールをこなしたあと、会場となる視聴覚室に集合。当初は10名程度の参加予定でしたが、最終的には17名が集まり、皆さんの関心度の高さがうかがえました。

演劇教育とは何か。説明から入るのではなく、まずは体験!ということで、1時間半かけて以下のアクティビティを行いました。

ウォームアップ
【Toe to toe】音楽に合わせて会場内を動き回り、ファシリテーターの声掛けに合わせて、相手を変えながらペア(つま先パートナー、ひじパートナーなど)を作っていくゲーム。つま先やひじ、膝などをくっつけるまたは近づける形で少しずつ参加者間の距離を縮めていく。

②シアターゲーム
【クロスザサークル】全員がひとつの円(サークル)を作り、対角線上にいる相手の名前を呼んで、出されたお題(自分の好きな食べ物、苦手な食べ物、好きなもの、ちょっと自慢できるところ、自分のちょっとかわったらいいなと思うところ、など)を言いながら、相手の位置に移動する(クロス)。次はその相手からスタートし、繰り返していく。

【フォーコーナー】ファシリテーターから出されたお題(朝ごはんを食べた人、福山生まれの人、広島県外に行ったことがある人、日本以外の国に行ったことのある人、日本語以外で知っている言語がある人、など)に該当する人が指定されたコーナーに移動したり、または自由に位置をかえたりする。

③作品づくりの説明
ファシリテーターは、シアターゲームで体験したアクティビティから使うピースを選び、それに立ち位置やセリフ回しのアレンジを加え、入り方とはけ方を決めて、小さな作品をつくっていく方法を文字とデモンストレーションを通して説明しました。

④グループによる作品づくりとリハーサル
他のグループの様子をちらちら伺いながら、熱心に作品づくりに取り組む教員の皆さん。ファシリテーターは各グループを回り、進捗状況を確認しては褒めたり、困っている時にはアドバイスしたりしながら寄り添いました。

⑤シェアリング
作品づくりにあてられた時間はたったの15分でしたが、各グループとも作品を仕上げ、シェアすることができました。同じシアターゲームを経験していても、グループによってピースの選び方が異なり、それぞれの工夫が凝らされ、楽しく演じていました。

レクチャーで学ぶ

演劇ワークを体験したあと、ファシリテーターは20分間「シアターエデュケーション」(演劇教育)について、ご自身のニューヨークや日本での経験、知見、取り組みに基づいてレクチャーを行いました。参加教員の皆さんは前半の体験を改めて思い起こしながらレクチャーの内容を受け止めていきました。

振り返り

最後の10分間を使って振り返りを行いました。まずは事前に用意してもらった「自分を表すもの」を使ってのショー&トークを全員にしてもらいました。「この鳥は海外に生徒を引率して行ったとき、ホームステイ先のシスターがプレゼントしてくれたもの。『持って帰りなさい。でも、この鳥は自分がこんなにも美しいと知らないで飛んでいますよ』」と紹介した方、オリエンテーリングの思い出の地図を見せてくれた方、「仕事で着ているこの白衣が自分を表すものです」とトークした方……。「単純な自己紹介よりもずっとその方のアイデンティティや大切にしていることがわかるので、ぜひクラスでも試してみたい」という声もあがりました。

ワークショップ全体については、嬉しい感想がたくさん聞けました。いくつか紹介しましょう。

  • めちゃくちゃ楽しかったです!
  • 今日の作品づくりはあまりにも自由で目的もなかったので、本当にできるのかなと心配だったけれど、意外とできるんだな、というのが発見でした。
  • グループでステージ構成を考えていた時に「ああ、ぼくはこういうことが好きなんだな」という新たな発見ができました。
  • 近年シアターラーンイングの宣伝がたくさんあって、毛嫌いしてまったく覗くこともなかったけれど、今日経験してみて、「こういうことだったのか」と知ることができて、やってよかったです。
  • ふだん劇の指導を厳しくしているのですが、自分が経験した演劇の世界もすごく厳しかったし、でも今日ファシリテーターと接して、ぜんぶ肯定的に受け入れてくれて、自分には足りなかった姿勢だなと思いました。
  • ファシリテーターがたくさん褒めてくれたから、自分が受け入れられた気がしてうれしかった。どうしても生徒のできないところに目が行くけれど、共感して「ああ、できたね」と褒めたほうがきっと生徒もうれしいのだろう、と子ども目線になって思ったので、そういう声かけを大事にしていきたいなと思いました。
  • この年齢になると自分をさらけ出すことが少なくなりますが、なんでもいいから自分を出す、自分を表現することを今日体験してみて「ああ、これは大事だな」と思いました。コロナ禍を経て生徒ともこうしてキャッチボールができるようになりたいなと思いました。
  • 「共感、エンパシー」ということばって素敵だなと思いました。物欲的な共感ではなく、人と人の関わりの中での共感ってすごく大事だなと強く感じました。今日の経験を通して自分が解き放たれた感じがしました。
  • 最初は緊張もしたし、恥ずかしがったけれど、心地いい時間でした。
  • 今日体験したアクティビティは仲間づくりにいいなと感じました。さっそく部活のメンバーでやってみたいです。
  • 勝手に教員の皆さんの年齢などを考えてしまい、恥ずかしがってシアターゲームはできるのだろうかと心配していたが、皆さんはびっくりするような、完成度の高い劇、パフォーマンスを作ることができて、これはすごいことだな、その力に信頼が生まれました。

「20年間この学校に勤めてきて、こういう雰囲気の学校なんだな、こういう仲間たちのおかげで今日までやって来られたんだなって今日改めて思えて……」と涙した方ともらい泣きした方もいました。

参加後アンケートより

ワークショップ終了後に実施したアンケートからも参加教員の皆さんはさまざまなことを感じ取り、受け止め、吸収してくれたことがわかりました。

いろいろな気づきと「引き出し」の形成

  • 表現をつくるのがやはり難しいですが、グループ全員が知らない間に1つの目標に向かってることが驚きでした。
  • 正解のないものに取り組む「アート」的な発想が、変化の激しいこれからの社会で特に必要になると思うし、魅力的な活動だと思いました。
  • 自分の体育の授業の導入で使えそうだと感じました。特に運動に苦手意識のある生徒の心ほぐしに使えたらと考えています。
  • 「演劇」という言葉だけ聞くと苦手意識を感じていましたが、今日のワークを体験してみると全くそんなことはなくて結構すんなり入り込むことができました。クラス開きの時などのアイスブレイクで出来そうなことがたくさんあったので、参考にさせてもらいたいと思います。
  • 「演劇」という表現活動に対して、過度に仰々しいものと構えなくてもよいことを学びました。段階を経て取り組んでいけば、創作にまでたどり着けることを実感できたのが、非常におもしろかったです。
  • いろいろな活動を通して、最初に感じていたぎこちなさがだんだんほぐれて、場の空気があったまっていく感じが体感できました。褒めるのは大切ですね。
  • 簡単なことの組み合わせでも、人と人とが安心して一緒にいられる場を作れるよう、よく考えられていると感じました。
  • アイスブレイクの好きな食べ物、嫌いな食べ物の活動は同僚の意外な面を知ることができて楽しかったです。
  • 輪になって名前を呼び合ったり、好きなものや嫌いなものを言うほうが、単なる自己紹介をするよりもハードルが低く、やりやすいと感じました。
  • 口でなく、身体を使ってコミュニケーションをとるのが楽しかったです。

自らの学びを深めるための質問

  • 今回のワークでは既に人間関係が出来上がっている者同士の取り組みだったため、スムーズに活動できたが、初対面の人同士でどこまでスムーズに活動が進むのか、どういう仕掛けが必要なのか、なかなかイメージがわかなかったです。
  • ファシリテーターとして、大切なことは何か。色々迷う場面でも、ここに立ち戻るようにしているとかあれば教えていただきたいです。
  • 私は国語が担当で、以前から演劇を授業に取り入れたら、生徒が物語をより深く読めるのではと思っていました。自分に指導の知識や技術がないので、思っているだけなのですが……。今回行った内容は導入の部分だったのかな、と思いますが、実際にお話を使って創作をされたりすることもあるのでしょうか。

これらの質問に対し、ファシリテーターを務めた森永明日夏さんから一つひとつていねいに回答していただきました。森永明日夏さん、参加教員の皆さん、事前準備に尽力してくださった担当の先生、安全で快適な会場を提供してくださった福山暁の星女子中学校・高等学校のおかげで初の教員向け「演劇教育ワークショップ」は実り多いものとなりました。

(事業担当:長江春子、千葉美由紀)

事業データ

教員向け「演劇教育ワークショップ」

期日

2023年12月23日(土)

会場

福山暁の星女子中学校・高等学校

共催

公益財団法人国際文化フォーラム(TJF)
福山暁の星女子中学校・高等学校

ファシリテーター

森永明日夏(俳優、ティーチングアーティスト)

参加者

17名

参加費

無料