「こころの栄養」のための防災クッキング

「こころの栄養」のための防災クッキング

PEOPLEこの人に取材しました!

今泉マユ子さん

管理栄養士、防災士、災害食専門員

災害食に力を注ぎ、管理栄養士の会社を起業されている今泉マユ子さんは自身の資格を生かした幅広い講演、講師活動やメディア活動を多数行なっています。インタビューを通し、今泉さんに防災クッキングの仕方や大切さについてお話を聞きました。

はじめに

私には子供が2人います。「どんなことがあっても子供を守る。守れる。」と思っていました。2011年3月11日東日本大震災が起きた日、幼稚園年長だった息子は卒園式を前に、生まれて初めて一人でお留守番をしていました。幸い私はすぐに帰ることができましたが、いつも子供と一緒にいられるわけではないことに気が付きました。そして「子供を守りたい」から「自分の身を自分で守れる子供になってもらいたい」と思うようになり、この日をきっかけに防災と災害食に強い関心を持ち、研究をはじめました。現在は日本栄養士会、日本防災士会、日本災害食学会、日本集団災害医学会に所属し、日本栄養士会災害支援チーム(JDA-DAT)のリーダーでもあり、管理栄養士、防災士、災害食専門員、横浜防災ライセンス、水のマイスター、環境アレルギーアドバイザーなどの資格を持ち、全国各地で防災や備えの大切さをお伝えしています。

防災クッキングとは

みなさんは「非常食」と聞いて、何の食べ物を思い浮かべますか?カンパンやアルファ化米を思い浮かべる方が多いかもしれません。講演の時にお聞きすると、カンパンを備蓄している方はとても多いのですが、ほとんどの方が「とりあえずしまっている」とのこと。アルファ化米を「これは非常食だから非常のときにしか食べたらダメなのよ」とおっしゃった方もいます。

非常食という言葉から、普段食べる物ではなく、特別なものとしてとらえてしまっているようです。「しまっておいたら賞味期限が切れていた」という事にもなりかねません。非常食を特別な物にしないように、普段から食べて「非常食=日常食」にすることが大切です。普段食べているものを、災害の時にどうやったらうまく活用できるかを考えてください。それが心と体を守る防災食になるのだとお伝えしています。

中央区防災訓練でのイベントの様子

何を備えるか

大災害が発生し、流通がストップして食料品が手に入らず、停電で冷蔵庫が使えなくなる事態を想定し、常温で長期保存できるものを多めにストックしておくと安心です。最低3日分、できれば1週間分、家族全員分の食料品を備蓄しておきたいものです。このほか、水分補給のために水や各種飲料も忘れずに。でも、備蓄食料品リストに書いてあったからと、むやみやたらにそのチェックリストの通りに買うとか、長期保存できるから、などの条件で買わないほうがいいということをお伝えしています。普段乾物を食べない人が高野豆腐を購入しても、作り方が分からないかもしれません。調べて作っても口に合わないかもしれません。食べたことがないものは備蓄しないほうがいい。それよりは、自分がレトルトカレーが好きだったら、それを多めに買っておく。それがあなたの備蓄になりますよ、という風に伝えています。

心がけること

大規模災害が発生すると、場合によって野菜は食べられなくなると思って下さい。ほとんどの自治体に野菜の備蓄はなく、救援物資のお弁当には衛生面の問題から野菜はなかなか入れられません。常備野菜が家にあると思っていても、あっという間に食べきってしまい、その後はなかなか手に入らない状態になります。野菜ジュースなど、自分にあった常温保存可能な野菜を備蓄し、バランスよく栄養をとるように心掛けて下さい。

あと、アレルギー症状が起こる食物アレルギーをもっていると、手に入る食料が制限されると思われる災害時は、注意が必要です。東日本大震災の時は自治体の保管場所でアレルギー対応食が一般物資と混じってしまい、必要な人に配ることができないという事態が発生しました。命にかかわることなので、各ご家庭で備蓄することが大切となります。備蓄食料は1週間分以上が推奨されていますが、食物アレルギーをもつ人は、不足したさいに入手が困難になるので、より多くの備蓄が必要です。また、外国の方は避難所で食べられないものがあるかもしれません。災害が起きた時はまず手に入らないと思って、自分で備えておかないといけないのです。 

備蓄方法

備蓄食料品をたくさん用意しても、取り出しにくい棚の奥のほうに入れっぱなし、あるいはどこにしまったか忘れてしまった…というケースは少なくありません。いざというときに役立てられなければ、せっかく購入・備蓄しておいても意味がありません。

どの家庭でも食料品の多くは台所に収納していると思いますが、大災害が起こると台所はとても危険な場所になります。食器棚が転倒し、割れた食器類が散乱し、食料品を取り出せなくなることもあります。常温で長期保存できる食料品は、台所にこだわらず、各部屋で分散備蓄することをおすすめします。

備蓄する上で大切なのは、賞味期限を切らさないこと。賞味期限切れを防ぐために、例えば缶詰は賞味期限がひと目でわかるように、見やすい場所に油性ペンで日付を大きく記入する。しまう時は種類別でなく、賞味期限の年(西暦)ごとにまとめるようにし、日付の古い順に、手前から奥、上から下に、棚の左から右に、などの使いやすい流れで収納し、賞味期限を意識するようにしてください。

我が家は箱に入っているレトルト食品を本棚に並べて収納しています。左に賞味期限の近いものを入れて、なるべく左の物から食べていき、新しく購入した物はずらして右にいれています。こうすることで家族全員が賞味期限を意識するようになりました。

備蓄食品の選ぶポイント

家にカンパンがある方は、マヨネーズなどをちょい足しして、召し上がってみてください。カンパンちょい足しは小学生にも大人気で、おかわり続出です。カンパンが苦手な方も食べやすくなると思います。ゆであずきやジャムをつける、クリームチーズに黒こしょうをかけてみる、など、自分の好きな味にして、まずは食べてみて下さい。食べてみて「やっぱり口にあわないな」と思った方は、備蓄しないほうがいいです。普段食べたくない物は、災害時もっと食べたくないです。普段食べて美味しいと思う物は、災害時にあって良かったと思える物です。

災害が起きた後も健康でいるためには、栄養のバランスがとれた食事を適量とることがとても大切ですが、それと同時に心の栄養をとることも大切です。備蓄食料を選ぶポイントは、自分や家族が好きな物で、普段から食べ慣れているものを選ぶこと。非常時だからといって特別な物を食べるのではなく、いつも食べている普段の食事を摂ることが、安心につながります。震災後の食事調査で分かったことは、非常時だからこそいつも食べている普段の食事を強く求めるという事でした。自分と家族が好きな食べ物を備えましょう。

子供のための防災イベント

ある食材がないから作れないのではなく、ある物で何ができるかといった思考回路も災害において大切です。私はポリ袋クッキングをおすすめします。湯煎する時は必ず半透明の高密度ポリエチレン製ポリ袋(耐熱性)を使ってください。災害が起きてしまうと停電したり、水があまり使えなくなってしまいます。そこでいざという時、火や水を使わず、ポリ袋だけでできる美味しいレシピを覚えておくべきです。例えば、ポリ袋に切り干し大根、ツナ缶とマヨネーズを入れるとすごく美味しくなります。でも聞いただけではわからないと思います。まずやってみてください。色々な食材とポリ袋を使って、自分にあった味を探してみてください。特別な食材を買うのではなく、家にある物、自分の好きな食材を組み合わせて作ってみてください。これとこれを組み合わせれば美味しくなるのではないか、といった臨機応変に考えられる発想が災害の際大切なのです。

2018東京国際消防防災展での講演の様子

私たちは今何ができるのか

私は「毎月お給料日前の一週間を備蓄品消費週間にしましょう」とお伝えしています。毎月毎月家にあるものでやってみて、カセットコンロや現在備蓄している水や食材だけで生活してみてください。ストレスになってはいけないので「嫌だな」と思ったらすぐにやめてもいいのです。そこで、あなたは災害が起きたら何日間やっていけるのかがわかるのです。その経験を実際にすることで、自分はどのように災害に備えればより良く生活ができるのかを学ぶことができます。「まずやってみる!」ことをみなさんには心がけてほしいです。

最後に

経験、体験したことは全て自分の糧になります。即食レシピなどを作ってみてください。美味しい物を食べるとニッコリ笑顔になります。みんなが笑顔でいられるように、いつもの食事ができるように、備えて下さい。災害が起きてからできる事は限りがありますが、今できる事はたくさんあります。備える事をきっかけに、防災について考えて欲しいと思っています。災害の備えが、日常の当たり前になることを願ってやみません。

  1. おすすめお湯ポチャレシピ

◆「ごはん」
材料(1合分)
・米(無洗米)…1合(150g)
・水…1カップ(200ml)

◆「全粥」
材料(2膳分)
・米(無洗米)…1/4カップ(40g)
・水…1カップ(200ml)

共通の作り方
①高密度ポリエチレン製のポリ袋に米と水を入れて、空気を抜きながら根元からねじり上げ、上の方で結ぶ。
②1/3の水を入れてお皿を敷いた鍋に①を入れ、蓋をして火をつける。沸騰したら中火にし、20分経ったら火を消して10分蒸らす。

◆「高野麻婆豆腐」
材料(3人分)
・一口高野豆腐…小18個(53g)
・水…1カップ(200ml)
・レトルト麻婆豆腐の素…1袋(3人分用)
(トロミが別添えタイプの物は全て入れて下さい)
(1袋3人分以上の物は出来上がりの味が濃くなるので調整してください)

作り方
①高密度ポリエチレン製のポリ袋に材料を全て入れて、空気を抜きながら根元からねじり上げ、上の方で結ぶ。
②1/3の水を入れてお皿を敷いた鍋に①を入れ、蓋をして火をつける。沸騰したら中火にし、15分加熱する。

 

  1. おすすめ即食レシピ

◆「ツナと切り干し大根のマヨ和え」
材料(2人分)
・切り干し大根…30g
・ツナ(オイル、食塩入り)…1缶
・マヨネーズ、白すりごま…各大さじ1
・おろし生姜…小さじ1

作り方
ポリ袋に缶汁ごと材料を全て入れて混ぜる。

◆「お茶で戻した切り干し大根塩こぶ和え」
材料(2人分)
・切り干し大根…30g
・お茶(緑茶、麦茶など)…100ml
・塩こぶ……大さじ1強

作り方
ポリ袋に材料を全て入れて混ぜる。

◆「鯖とわかめの酢味噌和え」
材料(2人分)
・サバ味噌煮缶…1缶
・カットわかめ…大さじ1
・黒酢(酢)……小さじ1

作り方
ポリ袋に材料を缶汁ごと全て入れて混ぜる。

◆「いかと大豆とひじきの煮物風」
材料(作りやすい分量)
・いか味付き缶…1缶
・大豆ドライパック缶…1缶
・ひじきドライパック缶…1缶

作り方
ポリ袋に材料を缶汁ごと全て入れて混ぜる。

◆「ミックスビーンズの栗あん風」
材料(2人分)
・ミックスビーンズドライパック…1缶
・ゆであずき煮缶…ミックスビーンズと同じ分量

作り方
①ポリ袋にミックスビーンズを入れて潰しその中にゆであずきを入れて混ぜる。
※平常時はスプーンで丸め、きなこをまぶすとより美味しいです。

 

(インタビュー:2018年11月)

この記事にコメントする

コメント

名前

メールアドレス

  • 今泉先生がいつも大切にされていることや注意して欲しいところ、やってみる大切さなどのことが簡潔に分かりやすくまとまっていて素晴らしかったです。 また、お二人の取材力が素晴らしいなと思います。 これからも、色々なことに興味を持たれて、色々なところ、色々な人達に思いを伝えていって下さい。

    2019-2-24

Related Articles関連記事

防災 大阪大学