おもてなしは人を喜ばせる力

おもてなしは人を喜ばせる力

PEOPLEこの人に取材しました!

吉戸三貴さん

コミュニケーションスタイリスト

中小企業や個人を対象としたコミュニケーションやPRのコンサルティングをされている吉戸三貴さん。コミュニケーションを洋服のように「着替える」というのが吉戸さんのお仕事のキーワードですが、それはどういうことなのかお話を聞きました。

日本人のおもてなし

「おもてなし」というと、礼儀作法やプロトコルを連想する人もいるかもしれませんが、私が考えるおもてなしは、もっとフレキシブルなものです。(もてなす)相手や時期、状況によって、何がもてなしになるのかは変わると感じています。

例えば、普通に考えると上質な緑茶をお出しするような場面でも、相手の方が紅茶好きなら、くつろいでもらえるように飲み慣れた紅茶を準備するのが、おもてなしになることもあります。お祝いごとがあった時に、豪華なアレンジメントを届けるのも良いけれど、たくさん花が届いているだろうなと思ったら、あえて、自分で育てたハーブや野生のスミレなんかをカゴに入れて届けるのもアイディアですよね。相手の気持ちを考えて行動する、というのが基本なのかなと。

だから、おもてなしって、型通りのものじゃないと思っているんです。日本は島国なので、そういった、相手の気持ちだとか状況を察したり表現したりする文化が発達したのかもしれませんね。おもてなしをされる側になった場合でも、ああ、こんな風に考えていろいろと準備をしてくれたんだろうなということをちゃんと想像して感謝できるという部分もあると思います。

おもてなしについて気を付けていること

吉戸さんの手作りプチギフト:身近なものを使い、かわいい心の込もったお菓子のギフトができました

おもてなしをする時、気を付けていることは、相手にとっても自分にとっても負担にならないということです。いろいろと想像して工夫をするわけですから、なにかしらの手間はかかるわけですが、相手の重荷になったり、自分が無理をしたりしていると続きませんから。毎回高価なプレゼントを用意したり、手の込んだラッピングをしたりしていたら、それはサステーナブルではありません。気持ちはちゃんと込める、でも、頑張りすぎないバランス。プチギフトなら、相手がもらったことを忘れてしまうくらいがちょうどいいなって思っています。何かお返しをしなくちゃと感じさせてしまうのは良くないので、私もあげたことを忘れるくらい、相手も気にせず受け取れるくらいを大切にしています。写真のギフトも、チョコレートたった1粒ですが、ラッピングと手書きのメッセージで気持ちをこめています。

四季との繋がり

日本は四季がはっきりしていて、暮らしに季節感をとりいれることを大切にしている人も多いと思います。私が贈物をする時などに意識しているのは、季節を少しだけ先取りするということです。たとえば、桜のデザインのものを、冬の終わりくらいからあえて使うとか。春がやってくるのを楽しみに待ちましょう、という気持ちをこめて贈物をすることがあります。例えば、桜のブックマーカーを贈るとして、桜が満開の時期にもらうのも嬉しいですが、これから咲くよっていう時にもらえたら、春をもっと楽しめますよね。

全体に気を付けているのはそういうことですが、四季の考え方や表現の仕方は、場所によっても違ってきます。私は沖縄出身なんですけど、沖縄って、あまり四季がはっきりしていないんです。桜は1月に咲くし、1年を通して暖かい日が多いしで、たとえば、東京だったら自然と感じられる春や秋の風情みたいなものを感じる機会が少ないというか。ですから、沖縄に帰省する時のお土産を選ぶときは「9月に紅葉の和菓子」のようにオンシーズンを意識しています。そのお菓子を通して、秋を感じてもらえたらいいなという気持ちをこめているんです。季節を先取りすることもあれば、まさに今!というわかりやすいチョイスをすることもある。いつ、どこで、相手にどんな気持ちになってほしくて贈るかによって、季節の意識の仕方とか、表現の仕方も変わってきます。

人に喜んでもらいたい

おもてなしの例:沖縄テーマの出版パーティー

想像力をはたらかせたおもてなしの例をひとつあげるなら、去年の春に開催した出版パーティーかなと思います。沖縄の人が県外に出る時のコミュニケーションギャップについて書いた本を出版したので、その記念の会を東京で開催したんです。会場はフレンチビストロで、ゲストはほとんど東京に住んでいる人たちだったのですが、本の内容が沖縄のことなので、なにか沖縄を感じてもらえる工夫をしたいなと思っていろいろと考えました。そこで思いついたのが、お土産。沖縄らしいものを2つ用意しました。1つは、沖縄の伝統的なお菓子「ちんすこう」(クッキーみたいなもの)。色々な味のちんすこうを、カラフルな袋にいれて、ポップコーンのような雰囲気でカジュアルにラッピングしました。もう1つは、「その日の沖縄」を感じてもらえるアイテムを!と考えて、パーティー当日の沖縄の朝日の写真にしました。全部同じだとつまらないので、早起きの友人にお願いして、朝6時くらいに朝日の写真を4種類送ってもらって、それを印刷して、さらに別の3種類の写真ケースに入れて、すべてに日付と手書きのメッセージを入れてランダムに準備したんです。ささやかですが、私なりの、沖縄らしいおもてなしをしたくて。準備は結構ギリギリでしたが、「今日の沖縄を皆さんとシェアしたい」という気持ちを伝えてお配りしたら、喜んでくださる方が多くて嬉しかったです。

ラッピング

ラッピングをする時も、精一杯、想像力をはたらかせます。相手のことを考えて、何を贈ったら喜んでくれるかな、いつどこでどんな風に開けるかな、どうすれば開けやすく持ち帰りやすいかななど、具体的にイメージするんです。

例えば、いつも小さいバッグを持っている人や、会った後に移動することが多い人と会うなら、どんなにおいしくても、チョコレートとか大きいものは渡さないようにします。高級だとか、キレイだとか、贈り手の基準だけで選ぶのではなくて、できる限り、相手の受け止め方を想像したい。そういう意味で、ラッピングにも、おもてなしの要素があるのかなと思います。

ラッピングのアイディアは、いつも楽しみながら考えています。本を出した時は、表紙のデザインをプリントしたキャンディーのボックスを注文したり、切手風のシールに本のデザインを印刷してハガキに貼って「よろしくお願いいたします」というメッセージカードをつくったりしました。どうしたら面白いかな、楽しんでもらえるかな、驚いてもらえるかな、みたいな想像をするのは苦になりません。

吉戸さんがベトナムで行ったラッピング講座

包み方から表される和の意味

私のラッピングは自己流ですが、海外でラッピングレッスンの講師を依頼された時に、日本の伝統的な「包む」文化について少し勉強したことがあります。例えば、のし1つとっても、何度でもあった方が良いお祝い事の場合は蝶結び(ほどけるもの)、重ねて起きてほしくないお見舞いなどの場合は結びきり(ほどけない)のように意味があるんです。百貨店などで品物を買ってラッピングをお願いすると、用途にあわせてのしだけではなく包み方も変えてくれることもあります。包みの裏面を見るとわかるのですが、最後に包装紙をとめたところって、少しポケットみたいにあいていますよね。良いことの場合は、もっともっと良いことが入ってきますようにという願いをこめて、そのあいているところが上にくるようになっていて、反対に、悪いことの場合はその逆(悪いことが出ていってしまうよう)になっていると聞きました。私も、これは教えてもらうまで知らなかったのですが、そんな見えない、気付かないようなところにまで思いが込められているって、良い意味で日本的だなと感じています。

外国人と日本人の感情の表し方の違い

日本のおもてなしには素晴らしい点がたくさんあると思っていますが、それは、日本に限らないとも思っています。国や文化によって、表現の方法が違うだけというか。海外の場合、日本よりも色々なバックグラウンドを持つ人同士がコミュニケーションをとる必要があるので、より、わかりやすい表現が求められると感じています。フランスに留学していたとき、「ようこそ」とか「おかえり」「元気ないね。大丈夫?」など、いろんな場面で友達がハグやビズ(フランス語で頬のキスのこと)をしてくれました。言葉があまりできなくても、ああ、歓迎されているんだなあ、励まされているんだなあということがわかりやすく伝わってきて元気をもらえた経験があります。

きっと、相手を思いやってそれを表現する文化は、どの国にも存在していて、その表現方法が違うだけなんですよね。日常的なことでいえば、海外だと、かたい握手、優しいハグ、くしゃみをした人に声をかけてあげる、エレベーターで知らない人と目が合ったら微笑むとか、バックグラウンドが違っても伝わるコミュニケーションの方法がある。日本の場合、ある程度共通の文化のもとでやりとりができるので、より繊細な工夫がしやすいし、受け手もそこに込められた思いを感じ取れるみたいな。どちらが良い悪い、上か下かなんてことはなくて、気持ちの表し方が違うだけなんだと思います。

写真:全て吉戸さんより提供

(インタビュー:2017年12月)

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