公益財団法人国際文化フォーラム

外国語学習のめやす報告

外国語教育に新しい役割を

2007年3月、『高等学校の中国語と韓国朝鮮語 学習のめやす(試行版)』を発行した。2005年度から高校・大学の教師19名と取り組んでいた文部科学省の委嘱事業「高等学校における外国語教育の目標・内容・方法に関する研究」の報告書でもあった。高校の学習指導要領には英語以外の外国語については具体的な記述がなく、ガイドラインづくりが長年の課題となっていた。

試行版では、従来のように文法を積み上げるのではなく、学んだ中国語、韓国語を使ってどのようなコミュニケーションができるようになるのかという目標をcan-do で示した。試行版としたのは、これらのコミュニケーション指標を実際に現場の教師に使ってもらい、そのフィードバックをうけて完成版をつくりたいという思いがあったからだ。

そして2009年、完成版に向けて新たなプロジェクトを立ち上げた。何回もの議論を重ね、コミュニケーション指標を充実させるだけでなく、21 世紀に必要とされるスキルの育成、人間的成長を促す外国語教育をめざし、そのための内容と方法を提示することがメンバー間で共有された。さらに、学習者が教室内だけでなく、学習した言語を現実の社会で使って同世代と交流できるようになることも重要な目的として掲げられた。

そして3年後に発表したのが『外国語学習のめやす2012 高等学校の中国語と韓国語教育からの提言』(以下、「めやす」)だ。5,000 部発行し、教育関係者や希望者に配布したところ、1年を待たずしてすべてなくなったが、その後も配布を希望する声が多く寄せられたことから、can-do指標を新たにブックインブックとして加え、市販版を発行することとした。

マスターの誕生

©但馬一憲

「めやす」はすべての外国語教育に共通する理念や目標を掲げている。しかし、副題に中国語と韓国語教育が入っていることから「中国語と韓国語のためのもの」と判断する人も多くいた。
その誤解を解くために、さまざまな言語の教師に「めやす」の理念や目標、方法などを理解してもらい、実際にどうやって活用できるのかを体験できる場をつくることにした。それが、8 言語(英・韓・西・中・独・日・仏・露)の高校、大学の教師を対象に2013 年から3 年計画で始めた「めやすマスター」研修だ。3 泊4 日の夏の研修で授業案をつくり、秋に各自の現場でその授業を実践、その後1 泊2 日の研修で経過と結果を報告する。3 年間で研修修了者は55 人。「めやす」の理解者でもあり、実践者でもあるめやすマスターの誕生である。
マスターが企画、実施する「めやす」ワークショップやセミナーは、「めやす」について知りたい、活用したい人たちが対象である。異なる言語のマスターが合同で実施するケースもある。国内だけでなく海外でもワークショップを実施したり、学会や研究会で発表したりするマスターも多く、「めやす」は大きな広がりを見せている。

参加者の声

  • 中国語と韓国語のみならず、すべての外国語教育のアプローチが変わるきっかけになると確信しています。(高校英語教師)
  • 「めやす」を取り入れると、初級レベルでも生徒の興味に応じられます。(外国語教育コーディネーター)

※30周年記念誌『Tracks』に掲載