公益財団法人国際文化フォーラム

学びの探究とデザイン報告

「語って、ほぐして、仕込み」ました!―探究する学びを分析・デザインするワークショップ

2015年度から続けてきた、探究学習やプロジェクト型学習実践のためのワークショップも第5回を迎えました。講師は、初回からお願いしている稲垣忠先生(東北学院大学教授、教育工学・情報教育)。参加者は、小学校から高校まで、外国語、国語、社会、家庭科、美術、理科などを教える先生がた25人。東京近郊の各都県のほか、北海道、宮城、石川、愛知、大阪、鹿児島、沖縄、そして南米コロンビアから集まってくださいました。

「語る」「ほぐす」「仕込む」の3ステップ!

稲垣先生が日本の教育現場の現状をふまえて考案した「情報活用型プロジェクト学習」の理論をベースに構成されています。先生がたは、実践した(あるいは、これから実践したい)単元の資料を持参。次の3つのステップにそって、個人作業と、参加者間での共有やディスカッションを繰り返します。全員が、4月から実施できる単元のデザインを1日で完成させました。

Step 1【語る】子どもの目からみた学びの道のりって?

それぞれの実践を子ども(学習者)になりきってたどってみると、どのような道のりがみえてくるのか。学習活動カードを並べてシミュレーションしながら、子どもの探究のストーリーを描き出します。

Step 2【ほぐす】探究を支えるスキルって?

Step1「語る」で描き出された子どもの探究のプロセスにどのような学びが含まれているのか考察します。具体的には、子どもたちが探究を進める際の支えとなる情報活用スキルについて検討します。また、学習成果の深まりを思考と表現の2観点にしぼってルーブリックを作成します。
思考×表現のルーブリックの詳細はコチラ

Step 3【仕込む】 探究を支える教師の手立てって?

Step 3【仕込む】 探究を支える教師の手立てって? Step1とStep2の作業をふまえ、単元のデザインを完成させます。子どもたちの課題への出会いをどのようにつくるか、活動を助けるためのツールやしかけをどうするか、発表・ふりかえりでなにをするのか、それぞれにどのくらいの時間をかけるのか。具体的な計画を立て、 単元デザインシートを完成させます。

*Step1-3を経て参加者が完成させた単元デザインとルーブリックは、稲垣先生が運営するRubric Bankで閲覧することができます。

デザインがしやすい。実践のモティベーションが高まった。

参加者のアンケートをみると、概ね、高評価だったようです。具体的には、
・学習活動カードを使うことで考えが可視化された。
・学習活動カードを使ったシミュレーションは今後も活用できる。
・単元デザインシートがあると、探究学習の計画や、ほかの教員との共有がしやすい。
・他校種、他教科の先生たちとの話が参考・刺激になった。
などの感想がありました。

ルーブリックづくりは難しい?

一方で、ルーブリックづくりが難しかったというコメントも複数ありました。稲垣先生によると、「ルーブリックづくりは、教材を分析的、構造的に捉えた上で、子どもがつくる成果物の質をイメージする必要があります。実際の成果物から質的な違いを検討したり、何度か試したりすることで、ポイントがつかめるようになります」とのこと。ある程度試行錯誤の期間が必要なようです。1日のワークショップでもアプローチできることがあるかどうか。稲垣先生のお知恵を借りながら考えていきたいと思います。

子どもの目線から語る意味とは

Step1で、「子ども(学習者)の目線」をキープしながら探究の道のりをたどるのが難しかった方もいたようです。途中から、教師目線で「この学びを深めるにはどうしたらいいんだろう」と手立てを考え始めてしまうケースも。子どもの目線から道のりを語ることの意味を、あらためて稲垣先生に聞いてみました。

【稲垣先生談】
探究は子どもたちが自立して学ぶのが究極の姿です。教師自ら、その課題を探究したらどこまでいけるのか、何が学べるのかを想像しないまま手立てを考えると、手取り足取りお膳立てしすぎる探究になってしまいます。もっと時間をかけられれば、教師自身で一通り探究してみて、そこから授業をつくることも考えられます。学習活動カードはその代わりに使うものです。あくまで探究する人の立場になって探究を物語ってみてほしいのです。

オンラインでのフォローアップセッションも計画中

この2年ほど、リピーターや同僚の先生などからの口コミ参加が増えています。1年の実践をふりかえり、次の1年の計画を立てる。春休みの恒例行事として利用していただいているようです。今後は、実践のプロセスもフォローできるよう、稲垣先生と、オンラインを使ったセッションも計画しています。気軽に実践の状況を共有したり、課題解決のヒントを得られるような場をつくっていきます。今のところ、初回の予定は、8月19日(月)の夕方〜夜。決まり次第、TJFのメルマガ、Facebookその他でご案内いたします。

(事業担当:室中直美、宮川咲)

事業データ

語って、ほぐして、仕込みます! 探究する学びを分析・デザインするワークショップ

期日

2019年3月24日(日)

場所

SHIBAURA HOUSE(東京都港区)

ファシリテーター

稲垣忠・東北学院大学教授(教育工学、情報教育)
https://www.ina-lab.net/

参加者

小中高校の教員 25名

主催

TJF、学びの質ルーブリック研究プロジェクト

助成

JSPS 科研費 16K01123

協力

一般社団法人iOSコンソーシアム