世界をフィールドに働くための「グローバルランゲージ」教育。宮嶋淳一さん

  • 記事更新日:

今年で創立7年目を迎えた東京都立王子総合高校(王総)は、来年度から2年次に週2回、英語以外の外国語2~4言語から1言語を必修選択とする「グローバルランゲージ」科目が導入されます。この「グローバルランゲージ」を構想し、実現させた王総の校長、宮嶋淳一さんの「んじゃめな」は?

*...*...*...*...*...*...*...*
世界をフィールドに働くための「グローバルランゲージ」教育
*...*...*...*...*...*...*...*

1999年、私は物理の教員になって8年目になる年に、JICAの青年海外協力隊員としてガーナに赴任しました。現地の教師養成カレッジで2年間、英語で物理と物理の教え方を教えました。

そもそも私がアフリカに興味を持ったのは、中学2年生のときです。偶然とあるテレビ番組で取り上げられたアフリカの貧困、飢えの惨状を目にし衝撃を受けました。そして、自分に何ができるのかと考えるなかで、青年海外協力隊の存在を知り、自分も力になりたいと思うようになりました。大学4年生のときには、青年協力隊の試験と教員採用試験を同時に受けました。青年協力隊の一次と教員採用試験の両方に合格しましたが、当時倍率の高かった教員の道を選びました。しかし教員になったあともアフリカ行きの思いを捨てきれず、休職が可能になる5年目に入った年から、青年協力隊の試験を受け続け、落ち続けました。理系だった私は英語が大の苦手で、必死に勉強しました。4回目のチャレンジでやっと合格。実に18年越しでしたが、アフリカ行きが実現したのです。

困っている人びとを「救いたい」。そんな気持ちで赴任した私ですが、いざ行ってみると、教えてもらう、助けてもらうことのほうがはるかに多かったです。私の住まいにはガスも水道もなく、生活用水は雨水をタンクに貯めて使っていました。雨期はよいのですが、乾期は節水を余儀なくされます。そしてついに残りの水がバケツ1杯ほどになってしまったとき、不安な気持ちを学生にぽろりとつぶやいたのです。すると翌朝の朝4時頃だったでしょうか。外でザザーッという物音がする。恐る恐る戸を開けて見てみると、学生たちが何十人と集まっていて、手にした桶からタンクへ次々と水を注いでいるではありませんか。聞くと、まだ暗いうちから皆で40分以上山を下った沢へ行き、水を汲んできたというのです。貧しく、三度の食事も満足に食べられない状況にあっても、人びとは助け合い、結束して生きていました。

◎「第二外国語」ということばは使わない
日本とガーナは地球の表と裏のように文化もことばも何もかもが違います。でも英語を話すことで、教師をめざす現地の人びとの力になれたし、街の人たちと楽しくお酒を酌み交わすこともできた。そのとき思いました。英語は、アメリカで使いたいから学ぶわけではないのです。そのことばを使う世界何十億という人と話すんだという意識で、外国語を考えるべきだと思います。その考えが、王総の「グローバルランゲージ」構想につながりました。

王総の構想では、「第二外国語」ではなく「グローバルランゲージ」ということばを使っています。言語に順位をつけたくないからです。何が第一外国語で何が第二外国語か、その順序は個人により異なるはずです。あくまで将来自分がどんなフィールドで活躍するかを想定して、必要となる外国語を選んでほしいと思います。例えば自分はサッカーのインストラクターをめざして中南米に行きたいからスペイン語、というように、やりたいフィールドと「グローバルランゲージ」を結びつけて考えてほしいです。

よく生徒に、「日本一をめざすのではなく、世界100位をめざしてほしい」と話すのですが、広いフィールドで活躍したほうがおもしろいし、自分を伸ばせると思います。生徒たちには、総合学科での3年間を通し自分の視野を広げ、「世界」を意識して進路を考えてほしいと思っています。