山あり谷あり!? 第二外国語必修化までの道のり。若林直司さん

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東京都立杉並総合高等学校では2017年度から第二外国語が必修となり、第1学年で中国語か韓国語を学びます。東京都立では初めて、全国的にみてもあまり例がありません。もともと同校では、第2、3学年は選択科目として韓国語、中国語、スペイン語、フランス語を設置していました。今回は、第二外国語必修化を決め、実行に移した若林校長の「んじゃめな!」。

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山あり谷あり!? 第二外国語必修化までの道のり

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◎きっかけは日韓校長交流

第二外国語を必修化しようと思ったきっかけは、2015年8月に参加した「日韓校長交流プログラム」でした。韓国では、多くの高校生が選択必修で日本語を勉強していることを知って驚きました。では逆に日本はどうなのか、日本でも第二外国語をやるべきだと思ったんです。

帰国後、まず教育委員会に相談してみました。そのときの対応から、やれるかなという感触を得たので、導入を決めました。



◎ピンチ!? 教員から心配のメールの嵐

その年の12月、第二外国語必修化の具体案を職員会議の議題として挙げました。メールで自由に意見を送ってほしいと伝えたところ、十数人の先生から心配や反対の声が届きました。プリントアウトすると多い人はA4用紙にびっしり4枚。合計で24ページにも上りました。

中学生が第二外国語の必修化に魅力を感じるだろうか、から始まり、それより英語をもっとやるべきだとか、いや国語だろうとか、進学校でもやっていないのにうちの生徒に向いてない、というものまでいろいろでした。

一つひとつは、ごもっともな心配だと思います。でも一方で、第二外国語を必修化することと、他の科目の出来不出来は別な話ですし、うちの生徒に合うかどうかはやり方次第です。これらの心配や質問に対する私の意見をまとめて、次の職員会議で渡しました。そこからは反対の声は上がらなくなりました。

年が明けて、教育委員会に試案をもっていったところ、課題をいくつか挙げられたものの、割とすんなりOKをもらえました。そして、3月に第二外国語としての韓国語と中国語の必修化が正式に決定したのです。



◎2つの言語を選んだ理由

実は当初、選択授業で教えているスペイン語とフランス語も含めて、4言語を想定していました。でも、「なぜ自分は第二外国語を必修化したいのか」「自分は何をしたいのか」と考えてみたのです。

その結果、出した答えが韓国語と中国語でした。韓国や中国の人たちは日本に多くいるし、今後もっと増えることを考えると、国内にもビジネス市場があります。このビジネスチャンスを見逃す手はない。

さらに日韓と日中は、仲が冷え込むこともありますが、だからこそ理解して仲良くしていかなければならないと思うのです。それに、実務的に4言語は非常に難しいという事情もありました。

こんなことを言っている私も実は、韓国への心の扉を閉ざした時期がありました。それまでは韓国ドラマが大好きでよく観ていたのに、です。ある時期日本をバッシングするニュースがたくさん流れ、それを見るうちに、韓国ドラマさえも嫌になってしまったのです。

もちろん、その状態がいいと思ってはいませんでした。そんなとき、冒頭の日韓校長交流プログラムのことを知ったのです。そして「行ってみよう」と思い参加しました。



◎決断したら前へ進むのみ

必修化しようと思ってから、実現するまで約半年。もう少し慎重にやったほうがいいという意見も出ましたが、早くやらないとダメなんです。ビジネスチャンスではありませんが、良いと思ったことはすぐにやることが大切です。すぐにやるからみんなが取り組んでくれるのです。

できない理由ばかり言っても何もできません。校長が決断し、やると決めたら、正しいと思うことを進める。自信をもってぶれないで進めば結果はついてくる、そう思っています。