日本語教育の専門家だったからベトナム語の辞書が作れた 一橋大学教授・五味政信さんの「んじゃめな!」

  • 記事更新日:


┌【参加者募集】───────
●「外国語学習のめやす」独・仏教師研修 2015年12月20日
https://www.tjf.or.jp/meyasu/support/topics/post-16.php

●【あと3日】11/7(土)トークイベント: 暮らしの中の祈り タイの民間信仰【締切間近】
https://www.tjf.or.jp/jp/information/2015/inf2015_09.html
└─────────


■〓■〓■〓■〓■〓■〓■

 わやわや 2015年11月4日

■〓■〓■〓■〓■〓■〓■


◆◆─────────
◆◆ んじゃめな!
───────────

今回の「んじゃめな!」は、日本のベトナム語辞書としては5冊目となる『五味版 学習者用ベトナム語辞典』を刊行した一橋大学教授・五味政信さん。日本語教育の専門家である五味さんがなぜベトナム語辞書を? それはどんな辞書?

*...*...*...*...*...*...*...*
◎ベトナム人の生活が浮かび上がる辞書
*...*...*...*...*...*...*...*


実は私は大学でベトナム語を専攻していたのです。しかし、当時は留学生としてベトナムに渡るチャンスはほとんどなく、1979年ハノイ貿易大学の日本語教員として南北統一して間もないベトナムに渡りました。夏は気温40度、湿度100%のハノイですが、当時はエアコンもありません。朝起きるとまず、水道水を沸かして飲料水を作ることから一日が始まる生活でした。

日本語教育についてはほとんどしろうとの状態で、ベトナム人の若い日本語教師から「あなたのことが好きです」と「あなたが好きです」の違いを聞かれてぼう然となってしまったり、「〜的」はどんな単語につけられるのかと質問されて答えられなかったりと、行きたくてたまらなかったベトナムでしたが、仕事上では苦労の多い2年間でした(もちろん、楽しいことも喜びもたくさんたくさんありました)。今思うと、この2年間の苦労がその後の人生を支えてくれたことは間違いありません。

 帰国してからは東京外国語大学附属日本語学校で働き始め、その後東京工業大学、一橋大学とこれまで30年間日本語教育に携わってきました。その間に日本語を客観的に見る訓練を重ねて、「言葉を観察する視点」を一つずつ獲得していきました。その結果、ベトナム語も学生時代に比べたら、はるかに分析的に見ることができるようになり、18年前、ベトナム語学習者のための辞書を作りたいと思い始めました。

◎辞書作りの基本をはずれて
 まず考えたのは「学習者にとって必要な情報は何か」ということです。語の最小単位まで刈り込んで見出し語にするという辞書作りの基本は、あえて無視しました。語と語の呼応関係で語は生きてくるので、例えば、日本語の「〜だけでなく...も」を意味する "không những〜mà còn...'"が見出し語になっていたりもします。見出し語は8,000ですが、用例は21,000。すべてオリジナルの用例です。自分がベトナム語を学んだ経験、そして日本語教師としての経験から、一文で文意が伝わり、語の使い方がわかるような例文を作りたかったのです。また、日常的な会話例やコロケーション情報なども掲載しました。

 ベトナム語は長い歴史をもつ言語です。千年ほど中国に支配されていたことから漢語由来の語が数多く存在しますので、それらの語には漢字表記も入れました。さらに、動詞が表す体の動きや動作の対象物となった物の動きなどをイラストで示したり、現地の写真も掲載したり、さらに35のコラムでは私自身のベトナム語感、現地の事情をたくさん書き入れました。「読む辞書」を楽しみながら、ベトナム人の生活や姿が想像できるような辞書にしたかったのです。

 刊行までの17年間、休みはほとんどすべて辞書編纂に費やしましたが、苦しくも本当に楽しい日々でした。実は現在、2年後の増補改訂版刊行をめざして作業しています。今後もベトナム語の素晴らしさを辞書から伝えていきたいと思います。


◆◆─────────
◆◆ いくか ъ( ゚ー^)イェー♪
───────────

「こんな素晴らしいものを今まで知らなかったなんて......」

1999年に仕事で訪れた台湾で中国結びを見て、みなみりょうこさんは衝撃をうけたのだそうだ。

鮮やかな色の紐を結んで華やかな形を作る中国結び。日本でやってみようと思っても、当時は本も材料も教室もなかった。あきらめられなかったみなみさんは、仕事のスケジュール(本職はマンガ家)を調整して、台湾の友人宅に泊まり1ヵ月教室に通うことを年に3、4回繰り返した。7年前に、「もう教えることはない」と先生からお墨付きをもらった。

自分と同じように中国結びをやってみたくてもできない人がいるにちがいない。そんな思いから、教室を開いたり、カルチャーセンターで教えたりしている。そして、中国結び協会代表も務めている。

11月28日(土)の「りんごをかじろう:中国結びを体験」では、中国結びに深い愛情をもつみなみさんに教えてもらえる。1本のひもからさまざまな形がうまれる中国結びを体験するまたとない機会。参加費は500円。材料も道具も揃えてお待ちしています。

このチャンスを逃す手はないですよ、みなさん! ぜひ参加してみてださい。(千葉)
https://www.tjf.or.jp/jp/information/2015/inf2015_10.html


◆◆─────────
◆◆ スタッフのつぶやき
───────────

こんにちは。千葉です。

日本情報発信ウェブサイト「くりっくにっぽん」で現在進行中のテーマは「妖怪」。夏から来る日も来る日もずっと「妖怪」のことを考えています(ちょっと大げさ)。小泉八雲の曾孫で民俗学者の小泉凡さん、妖怪研究家の多田克己さん、小さい頃から妖怪が大好きでサークルを立ち上げた大学生。みなさんが語る妖怪・怪談はとても魅力的です。

日本で今知られている妖怪の半分以上は中国がルーツで、江戸時代に大量に入ってきたそうです。江戸時代には「百物語」という遊びが流行したのだとか。ここでいう物語とは怪談のこと。100本のロウソクに火を灯し、物語がひとつ終わると1本のロウソクを消し、またひとつ......、そして100本目のロウソクが消えたときに、ホンモノが出てキャ~となるかも、という遊びだそうです。百物語の会はあちこちで開かれ、しかも100もの物語が披露されるわけですから、え~これ知ってる~とか、この間も聞いたよ~とならないように、ネタ探しが大変だったとか......。その手の話が苦手な私にはこの遊びは楽しめそうにないのですが、いろいろな文化を生み出した江戸時代にタイムスリップしたくなります。

さて、「妖怪ウォッチ」がすんなり子どもに受け入れられるなど日本にしっかり根づいた妖怪。なぜ日本で根づいたのでしょうか。そもそも「妖怪」って何? と思われる方、ぜひ、「くりっくにっぽん」の記事をお読みください。

●怪談を観光にいかす(小泉凡さんインタビュー記事)
https://www.tjf.or.jp/clicknippon/ja/mywayyourway/07/post-16.php

多田克己さん、大学生の記事も順次掲載していきます。

===〔お役立ち情報〕=====

他団体が主催する、参加者募集中のイベントをご紹介します。
詳細は、各団体にお問い合わせください。

●朝鮮語教育学会 第68回例会
主催:朝鮮語教育学会、12/20(日)
http://jakle.sakura.ne.jp

─────────────
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
━━━━━━━━━━━━━
◆発行元:公益財団法人 国際文化フォーラム
◆発行責任者:水口景子
◆編集:千葉美由紀、森亮介、沈炫旼


━━━━━━━━━━━━━
Copyright(c) The Japan Forum