年越しと正月
としこしとしょうがつ
Year End and the New Year


 年末年始には、さまざまな伝統的行事や慣習が残っている。「大晦日」と呼ばれる12月31日には、多くの人がそばを食べる。年を越すときに食べるので、「年越しそば」と呼ばれている。長く細いそばを食べながら、家族の幸運が新しい年にも長く続くようにと祈るものである。

夜がふけてくると、古い年を送り新しい年を迎えるにあたって、寺院では鐘の音が鳴り響く(除夜の鐘)。人間は108の煩悩に悩まされているとする仏教の教えにもとづき、鐘を108回つき、1回つくごとに煩悩がひとつなくなるとされる。


初詣で
 年が明けると、多くの人は神社や寺院にお参りする。ふだんは神社や寺院に参詣しない人でも正月にはお参りする人が多い。その年の初めに参詣することを「初詣で」と言う。神社・寺院に参ると、社殿などの前に置かれたさいせん箱にさいせんを投げ入れ、その年の幸運を祈る。神社では拍手を打つが、寺院ではうたない。また、寺院では線香を供えるが、神社では備えないなどの参詣の仕方には違いがある。

おみくじ
 初詣でで神社・寺院に置いてあるおみくじをひき、その年の運勢を占う人も多い。運勢の種類は「大吉」「吉」「中吉」「小吉」「凶」「大凶」などである。「凶」や「大凶」などの悪い運勢をひいたときは、そのおみくじを神社・寺院内の木の枝に結び、そのとおりにならないように祈る。おみくじは、900年代、天台宗の慈恵大師がつくった「観音くじ」が起源だと言われている。

絵馬
 また、自分の願いを書いた「絵馬」を奉納し、祈ることもある。日本では古くから、馬は神様の乗りものであるとされ、お祭りやお祈りのときには馬を奉納する風習があった。馬の代わりに、板に馬の絵を描いて奉納するようになったのが絵馬の起源で、一般に広まったのは鎌倉時代以降だと言われている。そのころから、馬の絵だけでなく、さまざまな絵が描かれるようになった。

正月を祝う
 家庭で行う正月にまつわる慣習は地域によって異なるが、よく知られているものに、家の門には正月に神様を迎える目印となる門松を飾り、床の間などには平たく円形の鏡の形につくった餅を大小二つ重ねて飾る(鏡餅)というものである。また、神棚がある家では、そこに不浄なものの侵入を禁ずる印としてしめ縄を張る。正月の料理としては、雑煮やおせち料理がある。雑煮は、餅を野菜や肉、魚などといっしょに煮込んだ味噌汁または清汁(すまし)だが、地域や家庭によってさまざまなものがある。おせち料理は、野菜の煮物や魚、かまぼこなどで、通常重箱に盛りつける。縁起をかついだ材料を使う。→おせち料理

 ほかには、新年に初めて習字で今年の決意などを書く書き初めなどもある。小学生は冬休みの宿題になることもある。古来正月二日にをめでたい意味の詩歌などを書いたのが始まりのようだ。

 しかし、最近は、正月の過ごしかたも多様化している。海外旅行に行ったり、スキー場などの行楽地で過ごしたりする人も多い。また、おせち料理もいろいろなタイプのもの、たとえば中華風や洋風のものがスーパーやデパートなどで売られている。


新村出編『広辞苑 第五版』岩波書店(1998年)
倉林正次編『日本まつりと年中行事事典』桜楓社(1983年)
『英文日本大辞典』講談社インターナショナル (1999年)

The Japan Forum Newsletter No.15, "A Day in the Life: Toshikoshi"
http://www.tjf.or.jp/eng/content/japaneseculture/10toshi.htm
http://www.tjf.or.jp/eng/content/japaneseculture/pdf/ge10toshi.pdf (PDF)

The Japan Forum Newsletter No.12, "A Day in the Life: Nengajo"
http://www.tjf.or.jp/eng/content/japaneseculture/07nenga.htm
http://www.tjf.or.jp/eng/content/japaneseculture/pdf/ge07nenga.pdf (PDF)




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