誰かの幸せに繋がるデザイナー

東京女子大学

誰かの幸せに繋がるデザイナー

PEOPLEこの人に取材しました!

工藤拓志

フリーデザイナー

工藤拓志さんは、会社員として商業施設のポスターやチラシ等のデザインを担当した後、現在、フリーのデザイナーとして活動しています。プライベート作品をHPに掲載したり、杉並区をはじめ多くの地域で福祉活動のポスターを作ったりしています。なぜ、フリーデザイナーに転身したのか、そして、今している仕事についてお話を伺いました。

フリーデザイナーの世界へ

Q.なぜ美術という分野に興味を持ちましたか?

美術がもともと好きだったというよりも、幼い時から漫画やアニメを見るのがすごく好きでした。授業中にノートとか教科書の端っこに落書きをするのも好きだったんです。それで、お絵描きとか漫画とかの分野に関わる仕事がしたいと思うようになり、美術大学に入学しました。美術大学でいろいろなことを勉強して、その勉強したことを活かそうと思ってデザインの世界に入りました。

Q.工藤さんは、元々勤めていた会社を辞めて、2020年からフリーデザイナーになったそうですね。そのように決断したきっかけは何ですか。

そうですね、そもそも小さい時から、人と一緒に働くことがあまり得意なタイプではなくて、無理するとメンタルが落ちちゃうタイプなんです。できるのかわからないけど、一人で仕事をした方が自分の性に合っているとずっと感じていました。去年コロナで色々あって、一回仕事がストップしたんですけど、また、再開したときには、ストレスが思っていた以上に溜まっていて、このまま仕事をするのは無理だと思いました。そこで、思い切って独立したんです。

デザインしている工藤さん

フリーデザイナーになって

Q.どのようなとき、フリーデザイナーとしてやりがいを感じますか。

今作っているものの中に、街中の掲示板や図書館、駅などに貼られている物もあったりするので、そういうのを見ると、ちゃんと人の目に触れているというのが自分自身でも分かります。いろんな人から「広告見ましたよ」みたいなことも言ってもらえるので、自分が地域とか福祉の分野でやっていることが、ちゃんと世に出て誰かの役に立ってるというのはちょっと感じたりします。

Q. では、フリーになって大変なことは何ですか。

特別に何か準備をしてフリーになったわけではないので、未だに収入が不安定です。自分をアピールするのが得意なタイプではないので、今後もずっと付き合う自分の課題だと思います。今までの経験上、自分なりに動くと、その分何かしらの変化が起こることもわかっているので、不安も多いですがきっとなんとかなると信じています。

顔が好きなデザイナー

Q.工藤さんの作品に、365日人の顔のイラストを描く「DAYFACE」というプログラムがありますよね。毎日このプログラムを続けている目的はなんですか。

「DAYFACE」を最初にやり始めた時は、会社で仕事をしていた時で、もっと自分のこともやりたい、自分のデザインをレベルアップさせたいと思っていました。どうしたらいいかなと思った時に、私はさぼっちゃう人なので、毎日やりたい、習慣にしたい、好きなことをやりたいと考えて、「DAYFACE」を思いつきました。人の顔を描くことが好きなので、毎日顔を描くようにしたら、楽しみながらできると思いました。「DAYFACE」という名前を付けて、毎日Facebookにもアップしました。毎日Facebookにアップすることで、自分のモチベーションの維持にも繋がりました。
「DAYFACE」のプログラムを作る時に考えることは、その日の気分によって違います。例えば「このようなものを作りたい」、「今、仕事でこのようなことをしているから、何か参考にできるものを作りたい」などと思うことがあります。毎日作るときに、やはり自分が好きなものや得意なものではないと、毎日続けられないと思います。

Q. 数多くの作品の中で、一番気に入っている作品はなんですか?

「DAYFACE」の作品の中で自分が気に入っているのは初期の中だと11月24、25、26日です。今までなかった、新しいものを作ったような感じで、今までの作品よりも上手に描けたと思います。最初の年は月毎のテーマを決めていなかったので、ずっと平面的な作品とか、自分が撮った写真を使って描いていました。ですが、テーマを決めていない期間がしばらく続いていたので、変化を出したいなと思いました。それで作ったのが、11月24日、25日、26日の作品です。自分なりので今までにないパターンで作ったので、この作品が一番気に入っています。

「DAYFACE」の11月24日、25日、26日

相手に寄り添うデザイナー

Q.工藤さんは地域活動とかNPOの活動に関してのポスターやチラシを作っていますね。作り始めたきっかけはなんですか。

私はもともと人と積極的に関わるのが得意ではないタイプです。小さい時から友達が遊んでいるところや、話の中に入っていけないタイプでした。自分がこういうタイプだから、自分と同じように人の輪に入れない人が気になったり、社会に馴染めていない人に共感して、社会の中で弱い立場にいる人に対して何かできればいいなと思いました。ずっとデザインの勉強をしていて、仕事もしてきたので、自分がしてきたことが役に立つようなことをやりたいなというのがありました。そして、その想いから地域活動やNPOについてのポスターを作り始めました。

Q.工藤さんが今まで作ったポスターやチラシの中で一番愛着があるものはなんですか。

杉並区には「きずなサロン」という公共施設や個人宅で定期的に行われている交流の場がありますが、そのパンフレットに愛着があります。それも顔の作品で、「きずなサロン」と書いています。ぱっと目に付くものを作ってみたいとずっと思っていました。それが達成できたというのと、地域に関わる最初の活動経験として自信がついたっていうのもあり、すごく気に入っています。

「きずなサロン」の様子

工藤さんがデザインした「きずなサロン」のパンフレット

Q.工藤さんは「DAYFACE」をグッズ販売(https://suzuri.jp/910megane)をして、それで得た利益を赤い羽根に寄付すると書いていましたが、その理由はなんですか。

杉並区の赤い羽根共同募金のお仕事を何年間かやらせてもらっています。赤い羽根共同募金は寄付されたお金を地域で活動している団体に審査を通じて配分する仕組みです。私も赤い羽根の共同募金の仕事を長くやらせてもらっていますし、自分も出来る範囲で協力したいという想いがあります。それで、グッズなどを作って販売して、私の手元に入る金額を全部赤い羽根共同募金に寄付しようと決めました。

Q. 今後仕事してみたい団体や活動がありますか。

今までは杉並区の中の仕事が多くありましたが、地域の範囲を広げて、よりフォーカスした福祉分野の仕事をやってみたいと思っています。具体的にいうと、児童福祉の分野や、貧困の分野などです。また、自分はメンタルが弱いと思うので、メンタル分野にも興味あります。

未来への語り

Q. 今後の目標はなんですか。

フリーになったとはいえ、仕事もまだまだ不安定だし、今はコロナのせいでお金の集まりも良くないし、どうなるか分からないという中で、やっぱり自分が興味ある福祉という分野のお仕事をちゃんとこれからもやっていくというのが目標です。今は、福祉の仕事だけじゃなくて他の仕事も少しずつやっていますが、将来的には福祉の分野の仕事だけに絞って、フリーでやっていけたらいいなって考えています。

Q. 工藤さんにとって西荻窪はどんな街ですか。

今は引っ越しして近くには住んでいないんですけど、前はもうちょっと西荻窪の近くに住んでいました。私にとって西荻窪は、日常の延長線にある楽しい所っていう感じがします。商店街や街が面白くて、歩ける距離にあり、自転車でも、いろいろなところに遊びに行けます。それと、古本屋さんも多くて、商店街が元気で、イベントもよくやっているので遊びに行くと楽しい街です。

Q. 将来フリーデザイナーになりたい人々にアドバイスやメッセージお願いします。

自分の場合は、しっかり準備をして会社を辞めたわけではなかったので不安を感じることも多いですが、後悔はしてないです。人様にアドバイスできるほど、何かができたわけではありませんが、何かしら無理して会社に勤めているのであれば、そこを離れる選択肢を持つのも悪くないと思います。

(インタビュー:2021年5月)

Related Articles関連記事

個性の光る街・西荻
個々の夢を叶えてくれるカフェ

個性の光る街・西荻

個々の夢を叶えてくれるカフェ

「KOKOPLUS」オーナー
井出あかりさん

西荻窪にある特別なコワーキングスペース「KOKOPLUS」。ここには、一般的なコワーキングスペースにはないカフェが設置されている。時にはイベントも行われる。そこのオーナーである井出あかりさんは、会社員時代を経て、2019年にKOKOPLUS…(続きを見る)

私たちが
取材しました

東京女子大学

編集者―鏡のような、拡声器のような

個性の光る街・西荻

編集者―鏡のような、拡声器のような

ダイヤモンド社編集者
廣畑達也さん

廣畑さんは出版社ダイヤモンド社の編集者として、2008年からこれまでに合計71冊の本を編集した。書籍を中心に、人と人の関係性まで幅広く編んでいく編集者であり、ウェブ、デジタルで幅広く活動している。 廣畑さんは、大学生時代の書店でのアルバイ…(続きを見る)

私たちが
取材しました

東京女子大学

目で見るビタミン~ロシアの絵本

個性の光る街・西荻

目で見るビタミン~ロシアの絵本

出版社カランダーシ代表
上野直子さん

上野さんは一人で東京・西荻という町でこじんまりしたロシア絵本の出版社カランダーシを経営しています。また、ロシア絵本を実際に見てもらうために、カランダーシの部屋でオープンルームを開催しています(現在はコロナの影響でオンライン開催になり、要予約…(続きを見る)

私たちが
取材しました

東京女子大学