日本留学の魅力 ~もう一歩踏み出して挑戦~

武蔵野大学

日本留学の魅力 ~もう一歩踏み出して挑戦~

PEOPLEこの人に取材しました!

王雪揚さん

Vtuber

王雪揚(オウセツヨウ)さんは、2022年に武蔵野大学に1年間留学し、オーケストラのメンバーとして、チェロを演奏していた。サークル活動で活躍するほか、色々なアルバイトもしていた。現在は中国で日本留学の経験を生かしてVTuberとして活動している。日本の留学生活について聞いてみた。

音楽で言葉の壁を越える

Q:どんなきかっけでオーケストラに入りましたか

私は元々音楽を趣味として、特にボーカロイドとシンフォニーが好きなんですから、学校の掲示板に「武蔵野大学管弦楽団」のポスターを見て、QRコードをスキャンしてDMで連絡しました。私はたまたまチェロを演奏することができて、オーケストラ担当者の方に「体験でも構いませんから、是非来てみてください!」って言われて、そして成り行きでチェロ役としてメンバーの一員になりました。同じ趣味を持っている人たちと音楽について歓談できるし、オーケストラの皆さんと一緒に練習していた時間が本当に楽しかったです。

王さんと管弦楽団のメンバーたち

Q:オーケストラで何か特別な経験はありますか?

2023年9月に合宿で長野県の黒姫に行きました。皆が各自の楽器をもって、新幹線に乗って黒姫に行って、ある別荘を借りて3日間泊まりました。初めに、1日目は単純な合奏の練習でしたが、その後野尻湖を訪れました。そこで素晴らしい自然の景色を楽しんで、ナウマンゾウ博物館にも行きました。ナウマンゾウの化石や、古代の野尻湖人が狩りに使った古い石器や骨器などが展示されていて、いろいろ勉強になりました。

みんなと手持ち花火を遊ぶ

夜になったら、湖の畔でピクニックをしました。自炊をしたり、手持ち花火を遊んだりして、ロマン溢れる雰囲気でのんびりと時間を過ごせました。特に、日本人が目の前で手作りした料理を食べることができて、本当に嬉しかったです。合宿で練習以外のことを一緒にすることで、メンバーの仲もより深まりました。黒姫も自然豊かな町ですので、心が澄んでいる感じがしましたね。

3種類のバイトで文化を味わう

Q:どんなバイトをやったことがありましたか?

日本では3つの全く異なる仕事を経験しました。コンビニの夜勤、介護施設の介護助手、そしてバーテンダーです。

コンビニでバイトの様子

コンビニの夜勤に行ったのは、時給が高かったのと、中国で夜勤をしたことがなかったから、ふとした思いつきで行ったのです。時給は留学生にとっては正直に高いが、体調を崩すほど疲れましたので、2ヶ月ぐらいやって辞めました。

介護の仕事は、アルバイト求人アプリで見たものですけど、「これなんか楽しそう」と思いながら、試しに応募しました。しかも、私自分も大学の専攻は医学、薬学関係でしたので、これもやってみたいなあって思って、3ヶ月介護施設で働きました。

介護施設の制服を着ている王さん

そして、帰国前に日本で働いた最後のバイト先は八王子にあるダーツバーです。バーテンダーとして、お客さんと一緒に話し会って、喜んでもらえたら私にも「一杯頂戴」みたいな言葉を言ったり、音楽を聴きながらお客さんと一緒にダーツをやったりすることで、お給料も貰えるし、お酒も享受できて、やった3つのバイトの中で一番楽しかった仕事なんです。

バーテンダーの王さん

Q:3つのバイトは、それぞれ具体的にどんな感じでしたか?あるいは何か困ったことがありましたか?

印象的だったのは、日本人特有の距離感とそれに応じた職場文化でした。昔、家族と旅行で日本に来た時に、家族と私は意見一致で、「日本人は優しい」「日本人は距離感がない」みたいな感じがしましたが、留学生として、日本の社会の一員になると、日本人は本当に「集団」と「個人」をはっきりと分けて、距離感を持っていると感じました。

具体的に言うと、挨拶と返事において口調や言葉遣いなどに拘っている。これも職場文化に反映されている。例えば、介護施設でバイトしていた時、毎朝到着したら皆さんが「おはようございます!」って声をかけていましたが、私はある日、ちょっと無気力で、やる気がない気持ちで「おはようございます~」って言っちゃったところ、同僚に「えっ、王さん今日元気ない?」って言われました。きつい仕事が始まろうとしているのに、日本人は毎日元気いっぱいで挨拶をしているのが不思議な気がします。でも、職場でのこのような気遣いは、「集団」の形を保つための他人への礼儀で、仕事中に限られると思います。一旦仕事が終わると、同僚はすぐに自分と他人の距離をはっきりと、線を引いたみたいな感じになりました。一見「優しい」「親切」などのイメージがありましたが、実際には心に壁ができていました。多分これこそ日本文化の醍醐味でしょう(笑)。

バーで働いている王さん

それに対してダーツバーのほうは、ママさんが中国人で、店員5人のうちに4人が中国人、残る1人の日本人もハーフということで、雰囲気が全く違いました。お客さんは、6割は中国人で4割は日本人でした。中国人のお客さんが大体中国人同士の友達と一緒に来て、自分たちで話して、私たちバーテンダーは、話しかけなくても大丈夫という状態で、主に日本人のお客さんとおしゃべりながら働いていました。そこで日本人はとても気軽で、明るくはしゃいでいて、仕事中とは対照的で結構面白いです

Q:その職場文化に対してどう考えますか?

中国人と日本人の性格の違いについて、私は新しい見方ができたと思います。比較的に言えば、より繊細な性格を持っている多くの日本人は、よくても悪くても、敏感すぎる面がある一方、楽しませるときには気ままに盛り上がることができます。バランスを取らなくても、両方において極めている気がしています。これは日本に来て留学を通してしか実感できないことでしょう。

この異文化間の困難を克服するよりも、むしろ、その中に融け込むことこそ挑戦なのです。その異文化に慣れる過程で、環境に適応する能力も養われると思います。特に私のように日本で2度も転職を繰り返した人にとっては(笑)。大切なのは、その過程で自分自身が成長していることを感じることです。

経験は学問に勝る

Q:帰国後、日本での留学経験をどのように活かしていますか?

日本留学の前に、私は日本の「レトルト」「キヨ。」といったYouTuberたちの動画が大好きで、日本語の元の動画を編集、翻訳などして、中国語の字幕を作って付けて、日本語のわからない人でも見られる動画にします。その時からずっとYouTuberにあこがれています。

近年、VTuber(バーチャルYouTuber)がホットではありませんか?日本から帰国したら、私も挑戦してみたいです。それで、今はバーチャル教師のキャラクターであるVTuberとして活動しています。日本語の教師なので、視聴者にいろんな簡単な日本語やおもしろい日本語を教えて、それは確かに日本での経験を活かして活動しているのです。そして、たまには日本人や日本で留学している、あるいはしていた人が視聴者になったところ、皆はお互いに日本での経験を話し合います。例えば、ある視聴者が「あっ、私は今、日本のどこどこで何々をやっていますよ」って言っていたら、私も「あ、なるほどですね!私もそこに行ったことがありますよ」って、話が成り行きで続きます。多くの場合、日本での経験のおかげで、私は話すことがあります。もちろん、視聴者が少ない時に少し寂しくなることもありますが、全体的に配信は面白くて楽しいです!

Q:なぜこんなに勇気を持って日本の色々なことを体験できたのですか?

簡単に言うと、後悔したくないからです。それに、日本語が好きなのです。せっかく日本に来たのですから、日本で経験したことは、良いことも悪いことも、その後いつか感謝することになるでしょう。こうした経験から生まれるものは、キャリアアップであれ、価値観の転換であれ、単に会話のきっかけであれ、全部は精神的な宝物です。

魅力を感じるからこそ享受できる

Q:王さんにとって、日本留学の魅力とは?

やはり文化だと思います。前に言った職場文化かからのカルチャーショックではなく、エンターテイメントの面です。特に中国にはそういうお店、例えばよく秋葉原と新宿などで見られるメイドカフェとか、コンカフェとか、ガールズバーとか、そんな店に行くのが趣味の1つなのです。いつも新しい体験ができるところがあるからこそ、日本は魅力的だと思います。行ったことのない店に何度も入っていたからこそ、やったことのないいろんな仕事に挑戦する勇気を持つことができるのかもしれません(笑)。

カービィカフェの前で撮った写真

また、日本にいる間に、何度もサロンに行ってカラーをして、髪色をピンクとか、金髪とか、灰色とか、いろんな色に変えました。もし中国の場合は、社会的にも家族的にも、黒以外の髪色だと人に指摘される可能性があります。国にいれば、髪型が黒じゃないと、両親と親戚にちょっと怒られるかもしれないが、日本に来たら、誰にも縛られたくなかったから、自由に髪の色を変えました。特に東京は、正式な場合を除き、他人に迷惑をかけない限り、どのような外見でも構わないという気持ちにさせてくれました。オシャレな都市なんですから。この点から見れば、日本のほうは受容性が高いです。これも文化の一部ですよね。

Q:最後に日本での留学生活を享受したい留学生たちに一言をお願いします。

やりたいことがあるけれど、勇気がなくて躊躇しているのなら、迷わずに挑戦しよう!最後の結果を問わず、いつか自分の選択に感謝する日が来るでしょう。心を込めて、毎日感謝の気持ちを抱えていて、生きよう!

(インタビュー:2024年7月)

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