公益財団法人国際文化フォーラム

日露交流報告

極東地域日本語教師研修会を初開催

2020年1月25~26日、ロシア・ウラジオストクにおいて極東地域日本語教師研修会を初めて開催しました。国際交流基金派遣日本語専門家、下郡健志氏のコーディネートでウラジオストク日本語教師会との共催が実現し、ウラジオストク2番ギムナジアから会場提供をうけました。下郡氏には参加者募集から会場手配、研修に向けた説明会合など実施準備に尽力いただいたほか、現地の日本人教師の方々にも研修会運営などで協力をいただいたことが、初めての極東での日本語教師研修会開催につながりました。

TJFは日本から山崎直樹氏(関西大学教授)とボンダレンコ・オクサーナ氏(金沢大学、富山県立伏木高校ほか非常勤講師)、ノボシビルスクからプーリック・イリーナ氏(シベリア・北海道文化センター副館長、シベリア日本語教育協会会長)を講師として現地に派遣し、オンラインを含め20名の初中等学校及び大学の日本語教師を対象に研修を行いました。遠くはイルクーツク、アンガルスクなど、深夜発、早朝着の飛行機で駆けつけてくれました。25日は教材についての研修、26日は「外国語学習のめやす」研修を実施しました。

総合司会の下郡氏(左)と教師会を代表して挨拶するヴォローベヴァ先生(右)
初日に研修参加者にエールを送る櫻木雄介副領事(中央)
左から山崎先生、ボンダレンコ先生、プーリック先生
研修の合間は日露のお菓子とお茶でリラックス

1日目:教材研修

プーリック氏がロシアの初中等における日本語教育の現状と課題についてレクチャーをした後、初中等における日本語教育が目指すべき目標と、各現場が独自に設定している目標を比較し、ずれはないか、また現場で設定している目標とシラバス間に矛盾はないかを、いくつかの具体例を用いて参加者に考えてもらいました。そのうえで、自身が構想している中高生向けの「日本語クラブ用日本語教材」の内容について参加者と共有しました。

グループの意見を発表するハバロフスクからの参加者

2日目:「外国語学習のめやす」研修

26日の主任講師を務めた山崎直樹先生は「めやす」の開発メンバーであり、3年間にわたって実施し55名の「めやす」マスターが輩出した「めやすマスター研修」の主任講師でもあり、日本内外において「めやす」研修を行ってきました。ボンダレンコ先生は「めやす」マスターで、ロシア語教育用「めやす」の作成メンバーです。講義で使うパワーポイント及びすべての配布資料にロシア語訳を付けるなど入念に研修資料を準備しました。本番では、必要に応じてボンダレンコ先生が通訳をしたり、ロシア語で補足説明をしたり、自らの実践例を示しました。

この日の研修では、授業づくりにおける目標設定の大切さを「めやす」の基本コンセプトである3×3+3を通して考えてもらい、その目標を達成するために必要な学習要素や小さい文化(small c)についてレクチャーを行いました。そしてその後は「めやす」マスター研修のために山崎直樹先生が開発した「目標分解表」についてワークを行いました。「目標分解表」とはプロジェクト型学習の設計図になるもので、最初にプロジェクトの大目標を立て、それを逆向きに中目標、小目標、タスクへと分解し、最終的に扱う語彙・表現を盛り込み、各学習ステップで行う形成的評価及び最後の総括的評価を予め想定しておく手法です。

「めやす」についてはじめて触れるロシアの日本語教師たちは、熱心に説明を聞き、真剣にグループ・ディスカッションを行い、「姉妹校との交流」「年中行事」など学習プロジェクトのテーマを立て、目標分解をしていきました。限られた作業時間の中、机を模造紙に見立て、ポストイットとカラーテープを駆使して、目標分解表を作っていき、ポスター発表までやり遂げました。

ロシア語に訳された目標分解表(左から大目標、中目標、小目標、タスク)
グループでつくった目標分解表。
お昼はケータリング弁当と手作りのおにぎりなどで和気あいあいのひと時を楽しんだ。

二日間にわたる研修の最後にTJFの担当者と共催者のウラジオストク日本語教師会の代表から参加者全員に参加証明を手渡しました。実施後のアンケートでは、ほぼ全員から「満足」「大変満足」との回答があり、「楽しかった」「勉強になった」「わかりやすかった」という記述がありました。一方、専門用語リストがあればよかった、という声も複数あり、次回に生かしていきたいと思います。また、ロシアの教師にはロシア語によるフォローが効果的でしたが、現地の日本人教師はロシア語によるディスカッションに苦労したという声があり、今後グループ分けの際に考慮すべき点だと気づかされました。

参加証明を一人ひとりに授与した。

今後に向けて

極東は非常に広い地域で、ここに散在している日本語教師には集まっていただくだけでも大変なことです。しかし、この地の日本語教師を応援し、この地域の初中等をはじめ日本語教育全体の活性化につながればと願う共催者、日露の協力者の心強い協力があったからこそ、充実した研修会が実現できました。
今回の研修はTJFの極東地域における初中等日本語教育の活性化プロジェクトの初の試みです。このネットワークの発展のために、今回参加した初中等学校への図書・教材の寄贈を行うほか、今後の極東日本語大会に合わせて実践発表会や研修会の開催を構想しています。「めやす」という、言語や学習段階を問わない参照枠組みを用いて、言語学習、文化理解、相互交流をつなげた総合的な教育実践活動を応援していきます。

前列左から、ヴォローベヴァ先生、下郡氏、長江、プーリック先生、山崎先生、ボンダレンコ先生

(事業担当:長江春子)

事業データ

日露交流プログラム「極東地域日本語教師研修」

期間

2020年1月25日(土)、26日(日)

場所

ウラジオストク第2ギムナジア

主催

ウラジオストク日本語教師会

協力

国際交流基金派遣日本語専門家

講師

プーリック・イリーナ(シベリア・北海道文化センター副館長、シベリア日本語教育協会会長)、ボンダレンコ・オクサーナ(金沢大学、富山県立伏木高等学校ほか非常勤講師)、山崎直樹(関西大学教授)

参加者

極東地域初中等及び大学の日本語教師20名