公益財団法人国際文化フォーラム

日露交流報告

日露交流「図書館プロジェクト」を実施しました

一般社団法人尚友倶楽部の助成を受け、2019年度の日露交流プログラムの一環として、サンクトペテルブルク市マヤコフスキー記念中央公共図書館に対し、日本語の図書・教材388冊を寄贈する「図書館プロジェクト」を一年にわたって実施し、2020年1月29日、本図書館において寄贈式が行われました。

実施の経緯と内容

図書館プロジェクトの始まりは、TJFが当該図書館に東洋文化センターが設立されたということを知った2018年5月にさかのぼります。同センターが日本語・日本文化理解の拠点になりうると考え、同センターの日本語蔵書の現状とニーズの調査を行うとともに、図書館とのスムーズな意思疎通のために日露翻訳家であるリャーボヴァ・エカテリーナ氏にコーディネートを依頼しました。同センターの要望を聞き入れながら寄贈図書リストをつくっていきました。それと並行して、寄贈図書を活用してもらうためには図書館リーダーに対日理解を深めていただく必要があると考え、 東洋文化センター 長を日本に招聘するほか、日本文化理解セミナーの企画を行いました。

図書館リーダーの招聘

2019年11月1~8日、初中等校長等招聘プログラムにあわせて、東洋文化センター長のトチールキナ・イリーナ氏とコーディネーターのリャーボヴァ氏の2名を招聘しました。日本滞在中、70名の日露教育関係者が来場した「日露教育交流会」で図書館プロジェクトについて発表するほか、図書の追加選定、図書寄贈式、日本文化理解セミナーをはじめとする図書の活用についてTJFと協議し、訪問先の金沢では公共図書館の見学も行いました。

日露教育交流会で発表する東洋文化センター長のトチールキナ・イリーナ氏
通訳するリャーボヴァ・エカテリーナ氏

日本語図書、教材の寄贈

図書館の要望に加え、コーディネーターのリャーボヴァ氏の調査と助言をもとに作成した寄贈図書リストは、各学習レベルに合った日本語教材、日本への留学・就労に関するガイドブック、衣・食・住・仕事・自然・暮らし・伝統・学校生活などのテーマに関する日本文化紹介図書、日本の主たる文学賞の近年の受賞作品、ロシア語に翻訳されている人気文学作品の原書、日本のノーベル文学賞受賞作家の主たる作品や作品集、小中学生のための文学書、日本の有名アニメ絵本、山や里の写真集など388点に上りました。

すべての寄贈図書にこのシールが貼られました。

寄贈式の実施

2020年1月29日、マヤコフスキー記念中央公共図書館において、図書寄贈式が行われました。当日、会場に388冊の寄贈図書がすべて展示され、約50名の参加者が興味深く手に取ったり、写真やビデオに納めたりしていました。

展示図書を手にする参加者

寄贈式には、図書館長、東洋文化センター長、司書が出席し、来賓として在サンクトペテルブルク日本総領事館の広報・文化担当副領事、筒井暁之氏が列席されました。TJFからは事務局長がビデオメッセージで参加し、担当職員が財団を代表して図書館長に寄贈目録を手渡しました。

TJF事務局長の鈴木律子のビデオメッセージが上映されました
TJF担当職員の長江春子から図書館長に目録を手渡す

寄贈式のなかで、寄贈図書のジャンルや内容、魅力のポイント、作家のバックグラウンドなどについて詳細な説明が司書からありました。

たくさんのスライドを使って説明していました

寄贈式の様子はテレビ番組でも報道されましたが、この日の早朝、図書館側の手配で、日本語のできる司書とTJFの担当職員が地元テレビ78チャンネルに生出演し、図書寄贈プロジェクトそして夕方に行われる予定の寄贈式について紹介しました。

出演した「主要都市テレビチャンネル78」のロゴ

日本文化理解セミナーの共催

寄贈式のあと、同図書館とTJFの共催で、日本文化理解セミナーとして、リャーボヴァ氏が翻訳した『ごんぎつね』の紙芝居の実演と、リャーボヴァ氏が講師となり古川日出夫氏の短編小説の抜粋を翻訳課題とする若手翻訳者セミナーを行いました。

リャーボヴァ氏は翻訳セミナーの冒頭で、ロシアにおいて日本語から訳すプロの若手翻訳家は片手で数えられるほど非常に少ないことに触れ、セミナーに参加していた11名の若者に期待と激励のことばを述べました。参加者のなかには2020年春に出版予定のリャーボヴァ氏が編著を手掛ける日本童話集の翻訳に携わっている人も複数いました。その童話集はTJFの寄贈図書にも含まれています。セミナーでは、リャーボヴァ氏が、翻訳本が作成されるプロセスや、魅力的なタイトルの付け方、文化を翻訳するコツなどについてレクチャーした後、参加者が予め訳した課題を読み合わせ、誤訳箇所について確認し合い、熱心なディスカッションが行われました。

紙芝居
若手翻訳者セミナー

プロジェクト実施の効果と今後の展望

図書館関係者から、これまで個人からの図書寄贈はあったものの、図書館側のニーズとは必ずしも一致しないことも多かったことから、今回の「図書館プロジェクト」で寄贈された本は、ジャンルが幅広いうえに、図書館側のリクエストにも応えてくれて、大変感謝している、という感想が寄せられました。そして、今後、日本文化理解セミナーも第2弾、第3弾を企画し、さらに小中高生を対象とする図書館ツアーを実施したい、と話されていました。同図書館では、定期的にことばクラブが無料で実施されていて、多くの若者が日本語を学んでいるそうです。TJFが寄贈した多くの日本語教材はこのクラブでも活用される予定です。

今後、より多くの若者や市民が図書館を訪れ、寄贈図書を閲覧・活用し、より一層日本語に対する学習意欲や日本文化に対する興味・関心が高まり、その輪が図書館という場を中心に少しずつ広がっていくことを確信しています。

(事業担当:長江春子)

事業データ

日露交流プログラム「図書館プロジェクト」

期間

2019年4月~2020年1月

場所

ロシアサンクトペテルブルク市マヤコフスキー記念中央公共図書館

助成

一般社団法人尚友倶楽部

寄贈数

日本語書籍・教材計388点

図書寄贈式・日本文化理解セミナー(紙芝居・若手翻訳セミナー)

期日

2020年1月29日(水)

場所

ロシアサンクトペテルブルク市マヤコフスキー記念中央公共図書館

セミナー講師

リャーボヴァ・エカテリーナ(翻訳家)

参加者

寄贈式50名、紙芝居8名、翻訳セミナー11名