公益財団法人国際文化フォーラム

日露交流報告

ロシアの初中等校長等招聘を実施しました

2019年11月1~8日の日程で、ロシア・サンクトペテルブルク、モスクワ、ノボシビルスクの初中等日本語教育実施校及び文化機関の管理職、日本語教師など、計17名からなる訪日団を招聘しました。招聘したのは、2018年度に行った「日露交流学習プロジェクト」*の参加校・機関が中心で、主な目的はこれらの学校・機関の管理職の方々に日本についての理解を深めていただき、今後、日本語教育、日本文化理解、日露交流を主体的に推進してもらうためです。一行には観光名所の見学、教育交流会、ロシア語実施校訪問、文化理解ワークショップなどを体験してもらいました。

訪日団17名が成田空港に到着

*「日露交流学習プロジェクト」についてはこちらをご参照ください。
中間報告会をサンクトペテルブルクで開催
https://www.tjf.or.jp/information/2171/
「日露交流学習プロジェクト」最終報告会をオンラインで実施しました
https://www.tjf.or.jp/information/684/

日露交流学習プロジェクトをまとめた本書をご希望の方は、件名「日露交流報告書希望」として、ご住所・お名前を明記の上、forum@tjf.or.jpまでメールをお送りください。

日露教育交流会

日露双方の初中等における互いの言語教育の現状と課題、日露交流への取り組みについて広く知っていただき、日露間の新たな交流のきっかけを作ることを目的に、11月3日、約50名の日本の教育関係者にご来場いただき、17名の訪日団と一堂に会した日露教育交流会を開きました。東京近辺のみならず、北海道や青森、秋田、大阪、山形からもたくさんの教育関係者が参加してくださり、日露交流に対する関心の高さの一端がうかがえました。

日本出版クラブにて日露教育交流会(左)、 交流会場に到着する訪日団(右)

交流会では、日露でそれぞれ企画・進行中の教材作りプロジェクトについて、ロシア側はシベリア北海道文化センター副センター長、プーリック・イリーナ氏に、日本側は大阪大学准教授の横井幸子氏と北海道札幌国際情報高校教諭の依田幸子氏に報告していただきました。日本側が作成中のロシア語教材は、限られた単位数の中で交流を通じて学ぶ楽しさ、達成感を味わってもらうために学習者の伝えたいことが言えるようにするための工夫が施され、ロシア側が企画中の日本語教材は、検定教科書作りという国家プロジェクトが遅々として進まない中で、日々高まる学校現場のニーズに応えるためにも急ぐことが期待されています。

日本語教育事情について発表するプーリック氏(左)、ロシア語教育事情について発表する横井氏と依田氏(右)

学校間交流のケーススタディとして、生徒の相互派遣を行っている日露2組の学校にご報告いただきました。北海道札幌国際情報高校とノボシビルスク工科大学附属ITリツェイとの交流は、TJFの交流プログラムがきっかけとなり、その後日露青年交流センターの財政支援を受けて実現したケースでした(発表者は依田幸子氏とモスクヴィナ・オリガ氏)。青森県立青森南高校とサンクトペテルブルク583番学校との交流もTJFの交流プログラムによってきっかけが作られましたが、その後学校間協定を結ぶに至り、全学年ないし全校の生徒を対象とする継続的交流を行っているケースでした(発表者は竹谷保氏とジュラー・ナデージュダ氏)。

学校間交流のケース報告を行う依田氏とモスクヴィナ氏(左)、学校間交流のケース報告を行う竹谷氏とジュラー氏(右)

また、TJFは2019年度、学校以外において日本語・日本文化にアクセスできる場づくりへの取り組みとして、サンクトペテルブルクマヤコフスキー記念中央図書館に日本語の図書・教材寄贈を行っています。寄贈図書の管理と活用の責任を負っている同図書館の東洋文化センター長、トチールキナ・イリーナ氏に同センターにおける日本語学習、日本文学や日本文化の理解を促すさまざまな取り組みと今後の構想について紹介していただきました。

トチールキナ氏(右)とTJF図書寄贈のコーディネーターを務めるリャーボヴァ氏

交流会のあとの懇親会では、日本とロシアの食文化体験をテーマに、料理研究家、中川亜紀氏によるミニレクチャー、ブリヌイ(ロシアのクレープ)作りの実演、おにぎり作りとお弁当詰め体験を行いました。日本の参加者はブリヌイのほか、代表的なロシア料理であるピロシキ、サリャンカに舌鼓を打ちました。

懇親会場(左)、おにぎり作り体験(右)
お弁当箱詰め体験。お弁当箱はお土産に!(左)、きれいなお弁当ができました!(右)
ブリヌイ、ピロシキ、サリャンカを堪能(左)、ジョージアワインやコンポートも用意(右)

懇親会中盤では、酒田南高校とサンクトペテルブルク583番学校の友好校提携式が参加者の立会いのもと行われ、その様子は庄内新聞に掲載されました。

協定書に署名する中原校長とチェレドニチェーンコ校長(左)
庄内新聞の記事(右)

交流会・懇親会実施後、参加された方々から感想が寄せられました。「ロシアの日本語教育事情について、ロシア側の皆さんが素晴らしい報告をされ、それにとても美しい日本語で話され、敬服しました。また、日本とロシアの高校の交流事業を推進しておられる皆様から、有意義なお話を拝聴できて嬉しかったです」「日露教育交流会では、本当に貴重なお話をたくさん聞くことができて、国際交流担当の教員として、非常によい刺激を頂くことができました。もっともっと頑張らないといけないと思うこともできました。さまざまな交流をされている他校を、本当にうらやましく思いました。是非とも、本校も他校に負けないよう、交流をより盛んにさせていただき、姉妹校というところに持っていきたいと思います」

地方都市とロシア語実施校訪問

訪日団はまず東京で皇居、浅草、湯島、東京タワー、大型書店などを見学したあと、11月4日に北陸に移り、5日に金沢を見学し、翌6日にはロシア語教育を行う富山県の二つの学校を見学し、ロシア語履修者をはじめ、高校生たちと交流しました。

東京見学の最初のスポットは皇居(左)、浅草で着物体験(右)

金沢では、兼六園、金沢城公園、近江町市場、東茶屋街を見学しました。兼六園を見学したとき、一行は北陸放送の取材を受け、ガイドさんから金沢の冬の名物詩である雪吊りの説明を受けたり、インタビューにこたえている様子がお昼のニュース番組で流れました。ロシアの方は、東京以外に京都や奈良、大阪の都市名を知っていても、金沢を知る人が少ないとのことでした。一日の見学を通じ、濃厚な伝統文化の雰囲気と地方都市ならではの落ち着いたたたずまいに魅了され、来てよかった、次は家族や友人を連れて来たいとおっしゃっていました。近江町市場では学校の日本行事用やご家族へのお土産用の浴衣を買ったり、東茶屋街では金粉入りの日本酒を買ったりしていました。

兼六園で北陸放送の取材を受ける(左)、金沢城公園の芝生上で日向ぼっこ(右)
近江町市場で金沢市民の暮らしに触れる

学校訪問の1校目は富山県立伏木高等学校でした。同校のロシア語教師2人がそれぞれ日露交流学習プロジェクトでペアを組んだロシアの相手校の校長と日本語教師も訪日団のメンバーとして同校を訪問しました。朝の全校生徒一斉の英語聴解活動や2年生と3年生のロシア語の授業を見学しました。授業中に生徒が訪問団にロシア語で質問する活動のとき、皆さんはすっかり教師の顔に戻り、生徒たちにたいへん優しくていねいに対応していた姿がほほえましく、印象的でした。

富山県立伏木高校を訪問(左)、生徒からのロシア語の質問にていねいに答える校長先生(右)

海を眺望できる屋上に上がった時、「日本のドラマやアニメで高校の屋上でお弁当を食べるシーンがよく出てくるが、この学校でもそうですか」という質問が飛び出すなど、日本の学校文化に対する関心の高さが覗えました。図書室に貼ってあったお弁当コンテストの掲示物や、廊下のあちこちに掲示されていた多言語のあいさつことばと慣用表現に大きな興味を示し、自分の学校でも真似てみたいと、盛んにカメラを向けていました。

続いて訪問したのは富山高等専門学校です。同校も2018年度の日露交流学習プロジェクトでペアを組んだ相手校の校長と日本語教師が訪日団メンバーとして訪問しました。生徒はロシア語で地元や学校についてプレゼンを行ったり、訪問団にインタビューを行ったりしました。そのあと、小グループに分かれて折り紙を教える活動では、「初めて折り紙で作品を仕上げることができた」とうれしそうに話す校長先生もいらっしゃいました。

富山高等専門学校のロシア履修生徒に折り紙の折り方を教わる

放課後には、茶道部のもてなしを受けました。茶道部の顧問やソロプチミストのボランティアのお手伝いのもと、部員たちが訪日団の一人ひとりに1セットずつ茶道具を用意してくれました。部員によるデモンストレーションを参考に、訪日団メンバーは自分で茶筅を振ってお茶を点てる体験をし、美味しい茶菓子と抹茶を堪能しました。また、剣道部の練習風景も見学し、部員たちとうれしそうに記念撮影を行っていました。富山高等専門学校の授業見学と茶道体験はそれぞれ富山新聞、北日本新聞に掲載されました。

富山新聞の記事(左)、北日本新聞の記事(右)

日本文化理解「畳ワークショップ」

訪日の締めくくりは11月7日のミニ畳作りワークショップです。前田畳製作所の前田敏康社長が日本の大切な畳文化の由来、畳の構造、材質の特性、用いる材料の変化、イグサを育て提供する人びとの生き様、日常生活における畳文化の移り変わり、現代文化の中に息づく伝統……といったさまざまな角度からレクチャーを行いつつ、その合間、合間に訪日団の方々に手を動かしてもらい、一人一枚のミニ畳を完成させてお土産に持ち帰ってもらうことができました。畳文化の奥深さ、「ていねいに暮らす」という前田社長のモットー、伝統を大切にする日本の心に触れ、訪日団の皆さんは「用意されたさまざまなプログラムの中で一番印象深いワークショップとなった」とおっしゃっていました。

ミニ畳制作中(左)、講師の前田敏康社長を囲んで(右)

招聘プログラムを終えて

訪日団の送別会では、ある校長先生のことばが印象的でした。「これまで日本語教師が熱く語る日本について漠然とイメージすることしかできませんでした。今回の訪問でよく理解でき、日本語教師と同じ目線になりました」とおっしゃいました。校長等管理職に日本を理解していただき、今後の日本語教育、日本文化理解や日露交流への取り組みを支持してほしい、という今回の招聘目的の一つが達成されたと思える瞬間でした。

他には、「広いロシアはいうまでもなく、各都市内においても、日本語教育に取り組む学校同士の交流機会が少ない。TJFの招聘で一週間を共に過ごし、同じ体験をしたお蔭で、訪日メンバーや学校同士の結びつきが強くなった。これから自分たちのほうでどのように日本語教育や日露交流を発展させていけるか、一緒に相談しやすくなった」という声が寄せられました。

また、帰国された団長さんから以下のお礼のメールが届きました。
「一週間の訪問でしたが、あっという間に終わりました。今回は出会いも多く、発見も多く、とても豊かな訪問になりました。今後、学校の交流をどう展開するか、種もたくさんいただきましたし、素晴らしい日露ネットワークも出来ました。数多くの関係者にご参加していただきましたカンファレンス(筆者注:日露教育交流会)でも発表と報告を聞いて、意見交換なども出来て、刺激が多かったのです。素晴らしい機会をあたえていただきまして、皆さまに心から感謝しております。」

TJFが日露交流プログラムを始めて5年という節目に、管理職の方々を招聘し、対日理解を深めていただいたことで、今後各学校が主体的に日本語教育や日露交流を進めていただく弾みとなったと確信しています。

(事業担当:長江春子)

ロシアの初中等校長等招聘

期間

2019年11月1日(金)~11月8日(金)

場所

東京、金沢、富山

主催

TJF

助成

(一社)尚友倶楽部

輸送協力

JAL

参加者

サンクトペテルブルク、モスクワ、ノボシビルスクの日本語実施校・文化機関の管理職及び日本語教師計17名