公益財団法人国際文化フォーラム

つなげる報告

日露教師交流会をオンラインで開催しました

TJFは2015年度より、日本の高校ロシア語教育とロシアの初中等日本語教育をつなげるため、隔年で招聘と派遣を行い、日露の生徒間、教師間、管理職間の交流を進めてきました。特に日露教師共同セミナーなどを通じてネットワーク形成に力を入れてきました。2018年には日露9組の教師に、互いの言語学習、文化理解、交流を融合させた「交流学習プロジェクト」に取り組んでもらいました。2019年から極東地域の日本語教育実施校もこのネットワークに加わり、ロシア全地域と日本全地域の学校間交流を進める環境が整いました。そこで、時間、距離、費用、規模などの制限を受けないオンライン交流の可能性に着目し、経験共有と意見交換のために「日露教師交流会2021」を、2021年9月19日に実施しました。

交流会に先んじて、交流に関心のある日露の教師が情報共有できるように、Slack(チャットツール)でグループをつくりました。交流会での情報交換をスムーズにするために、グループに参加した方々には、学校、居住地のほかに、どんな交流がしたいのかなどを自己紹介であらかじめ書いてもらいました。

交流会の目的

  • 日露の学校間でオンライン交流を実践している先行事例を紹介する。
  • 参加教師間の経験共有、情報交換、意見交換を行う。
  • 日露間で新たな交流希望校をつなげる。
  • TJF主催の「日露高校生パフォーマンス交流」(第1回、オンライン、2021年冬実施予定)について説明を行い、協力をお願いする。

参加者

交流会当日は、日露の初中等の教師を中心に45名が参加しました。日本側は北海道、秋田、新潟、富山、東京、神奈川などから、ロシア側はサンクトペテルブルク、モスクワ、ペルミ、ノボシビルスク、ヴォルゴグラード、イルクーツク、アンガルスク、ハバロフスク、ウラジオストク、サハリン各地からZoom上に集まってくださいました。

プログラム

交流会のプログラムは二部に分けました。第1部は全体会で、日露混合4組にオンライン交流実践報告をしていただき、各報告について質疑応答を行いました。第2部は2グループに分かれた分科会で、報告者以外の教師にオンライン交流の経験について発表してもらい、情報共有をしました。

オンライン交流実践報告

■1組め:旭川南高等学校(鈴木桃子氏)とノボシビルスク130番リツェイ(イリーナ・クズメンコ氏)

TJFのプログラムがきっかけとなって、オンラインでの交流につながりました。まずは教師同士がつながり、その次に生徒の交流につながりました。

行事を紹介し合うことで、すべてが生教材になる

■2組め:札幌国際情報高校(依田幸子氏)とサンクトペテルブルク583番学校(マリア・サヴァロヴァ氏)、ノボシビルスク工科大学付属ITリツェイ(オリガ・モスクヴィナ氏、アリョーナ・ナウメンコ氏)

姉妹校提携を結んでいる学校交流の実践で、学校を巻き込みながら、活発な交流が行われています。

学校を巻き込んでコンサートが行われた
札幌国際情報高校の生徒がつくった動画が、日本語の授業の教材になる

■3組め:ウラジオストク51番学校(ダリア・オニシチ氏)

新潟の小学校や兵庫の高校と交流しているケースです。

交流校がつくったニュースレター

■4組め:カリタス女子中学高等学校(櫻木千尋氏、松本浩史氏)とハバロフスク5番ギムナジア(アレクサンドラ・マフラコヴァ氏)

ロシア語教育を実施していない日本の学校とロシアの日本語教育実施校との交流です。ロシア語は学習していなくても、生徒は自分の名前やあいさつをロシア語で表現し、そのほかは英語を使っての交流を行っています。

英語を使って互いの学校生活について情報交換を行った

実践報告は日露両言語で行われました。全体会ではエカテリーナ・リャーボヴァ氏(翻訳家)が通訳を務め、分科会ではオクサーナ・ボンダレンコ氏(日本在住、金沢大学および富山県立伏木高校ほかロシア語教師)にも言語サポートしていただきました。

たくさんの質問で盛り上がる

各報告についての質問は、報告と併行してその都度Zoomのチャットに記入してもらいました。参加教師から日本語とロシア語でたくさんの質問が投稿され、限られた時間の中で、全体会で答えることができなかった質問については、本交流会のためにあらかじめ作成しておいたSlackのグループ内で、交流会終了後に回答してもらいました。

各報告についての質問は以下の通りです。ロシア語で書かれた質問は日本語に訳してあります。これらの質問を通して、参加教師の具体的な興味・関心の一端をうかがい知ることができました。

1組めの発表についての質問

1)学習言語で文を投稿するとき、事前に先生にチェックしてもらいましたか。
2)相手の投稿に対して、日本の生徒は進んでリアクションしましたか。遠慮しましたか。
3)評価、復習、テスト関係の質問です。評価基準を教えてください。使った語彙の予習、復習、授業でやりましたか?考査やテストで使いましたか?
4)自由な交際に近い、けれども完全に自由でないというのは、どういうことでしょうか。
5)日本側においてメッセージアプリ活用する場合、学校、保護者に対してどのような手続きを踏んでいますか? 
6)WhatsApp(ロシアでも広く使われているSNS)を使ったとのことですが、何か困難な点はありましたか?

2組めの発表についての質問

1)ZoomのブレイクルームでPPTを使ってクイズをしましたか。Zoomでその機能がありましたか。私の知識不足だったら、ごめんなさい!
2)交流のための準備は授業の中で行いますか。交流への参加を評価に取り入れていますか。交流で使う言葉や表現をテストに組み込んでいますか。
3)交流する際、学校内の英語やフランス語などの担当教員と協力していますか。
4)(日本側への質問)どうして極東ロシアの学校と交流しようと思いましたか。
5)日本でWhatsAppをダウンロードするとき制限はありますか。

3組めの発表についての質問

1)交流はカリキュラムの一部として行っていますか。それとも課外活動として実施していますか。
2)H高校との交流は定期的にやっている交流ですか。それとも一回だけのイベントとして行いました。
3)何年生の学生が交流に参加しましたか。

4組めの発表についての質問

1)日本は生徒の個人情報(写真、ビデオを含め)に対してかなりきびしいそうですが、両親に許可をもらわなければなりませんか。
2)ビデオの編集、字幕などを誰がしましたか。先生ですか。生徒ですか。
3)どんな方法でビデオを交換していますか。何かSNSを使っていましたか。生徒が直接送受信していますか。それとも先生同士が送受信して教室に見せていましたか。ビデオ交換はどのくらいの頻度で行われましたか。
4)日本語やロシア語を学ぶ子供たちだけが交流に関わっていますか。
5)交流は希望しているけれどもカメラが嫌な学生は、何か他の方法で交流に参加することができますか? カメラが嫌な学生は交流に参加しませんでしたか。
6)とても良いイベントですが、準備に時間がかかりそうです。授業時間を準備に使いましたか。

質問以外にも、たくさんの熱いコメントがZoomのチャットに寄せられました。

「非常に豊富な交流を実施してくだっていることに感動!」「真似ができません!このようなビデオ作成がすごすぎる」「刺激的でした。参加できてうれしかった」「私たちは共通の目標に向かっている!日本語を広げよう!」「高校生交流に参加できる生徒を探してきます!」「引き続きSlackで会いましょう!」「今日の交流会の録画を見直したい」

オプションタイム

交流会の最後に、交流相手を探したい教師に残っていただき、その思いを語っていただきました。イルクーツクの学校から、Zoomのチャットで次のような呼びかけもありました。

「皆さま、私たちの学校はオンライン交流の経験がありません。 でも私はとてもやりたいです。10歳から18歳までの子供たちが日本語と英語を学んでいます。誰かWhatsAppを通して交流したい方がいたら、ここに書いてください!」 これに対して、さっそく反応した日本側教師が現れました。他にも学校以外で成人クラスを教えている教師もいて、社会人学習者もつなげよう、と連絡を取り合うことにしたようです。

日露学校間交流の今後につなげる

交流会を通じて、日露教師が生徒間、学校間交流に高い関心と意欲を持っていることがわかりました。しかし、ロシア側教師の熱意に対して、ロシア語教育を実施している日本の高校が少なく、その熱意に応えることができていません。一方、今回の4組めの報告のように、ロシア語を実施していなくても、日本語と英語とフランス語で極東の学校と交流している日本側の学校もあります。地理的に近いというメリットを生かして、将来生徒による相互訪問を目指しているそうです。そのようなケースが増えることを願っています。

また、学校同士の交流では荷が重い、クラス同士の交流でも、非常勤の教師にとってはハードルが高い、でも生徒の学習意欲を高めるのに交流が効果的というジレンマを感じている教師も多くいるようです。そのため、TJFは日本とロシアにおいて、互いのことばと文化を学ぶ高校生のためのオンライン交流プロジェクトとして、「日露高校生パフォーマンス交流」を企画しました。今年12月から来年1月にかけて実施する予定であり、交流会に参加した教員の方々に募集説明と生徒推薦へのご協力をお願いしたところ、高い関心が寄せられ、たくさんの教員がさっそく生徒を推薦したいと手を挙げました。

https://www.tjf.or.jp/information/9863/

参加者アンケート

交流会後の参加者アンケートでは、17名の方から回答が得られました。

「日露教師交流会に参加していかがでしたか。」という質問に対し、16名から5段階評価中の5の評価、1名から4の評価をいただきました。

 「参考になる実践はありましたか。」という質問に対し、4組の実践報告はどれも50%以上の回答者が参考になったと回答し、70%以上の回答者がSNSを使った気軽な交流に1票を入れていました。

「自分もやってみたいと思った実践やアイディアを具体的に書いてください」という質問に対し、以下の具体的な書き込みがありました。交流会をきっかけに新しいつながりが芽生えそうです。

  • 生徒さんたちはWhatsAppなどのメッセンジャーでやり取りをすること
  • 交流経験、面白いクイズ
  • 姉妹校交流は荷が重いですが、気軽に日露の学校間でオンライン交流をしてみたいです。 また、日露の先生方との交流も続けたいです。
  • 日本の生徒たちとWhatsAppでメッセージを交換すると思います。
  • 青年生活をめぐる問題に関して共同研究を実施してほしいです。
  • 何に興味があるのか​​生徒に聞いてみたい。
  • まだメッセージやビデオの交流だけなので、ZOOMで繋ぎ、実際にオンライン交流をしてみたいと思っています。
  • 前から社会人の学習者をつなげたいと思っていました。相手を見つけました。コツコツ進んでいます。イルクーツクー富山 ノヴォデヴィチとー高岡。高校生を小さい4つのグループに分けて、ロシアの生徒とつなげているところです。イルクーツクと2つのグループで、ウラジオストクと2つのグループ。
  • WhatsAppをつかってしてみたいです。
  • 高校生はまだいないですから、まず年賀状交換をやってみたいです。

今回の交流会をきっかけに作成したSlackグループは今後も日露教師交流のプラットフォームとして生かしていきたいと願い、「今後、Slackでどんな情報交換をしたいですか。」という質問もしてみました。17名の選択結果(複数回答あり)は以下の通りです。

  • 日本語/ロシア語の表現について 8名
  • 日本/ロシアの文化、若い人たちの流行などについて 12名
  • 教え方や面白いアクティビティについて 17名
  • 小学生の教え方と中学生の教え方 1名
  • 実践の発表の場として 1名

終わりに

TJFにとって、日露学校間のオンライン交流をテーマにした日露教師交流会は初めての試みでした。また、全ロシアの初中等教師に集まっていただいたことも初めてです。実施日程を決め、募集を開始しつつ、実践報告を依頼し、本番を迎えるまでの期間はわずか2ヵ月。日露教師の皆様の熱意とオンラインでの開催だからこそ実現しました。

今後は交流会前に立ち上げたSlackでの日露教師交流を運営するとともに、ロシア語教育実施校以外の交流希望校の掘り起こしも行いつつ、日露学校間交流の成果を報告しあう交流会を定期的に実施していきたいと願っています。

(担当:長江・千葉)

事業データ

日露教師交流会2021

期日

2021年9月19日(日)15:00~17:30(日本時間)
①教師交流会15:00~17:00
②オプション17:00~17:30

場所

オンライン(Zoom)

主催

TJF

参加者

日露初等中等教師を中心に45名

通訳

エカテリーナ・リャーボヴァ氏(全体と分科会2)、ボンダレンコ・オクサーナ氏(分科会1)