自動販売機ブログ――「山田屋」の裏話

大阪大学

自動販売機ブログ――「山田屋」の裏話

PEOPLEこの人に取材しました!

野村誠さん

自動販売機専門家

野村さんは会社員でありながら、20年以上日本全国の自販機を紹介するブログ「山田屋」を運営している自販機の専門家でもある。今回のインタビューで、野村さんに自販機事情とご自身の自販機経歴について話を聞いた。

Q:野村さんが自動販売機に興味を持ち、ブログを始めたきっかけは?

野村:高校の時に、自動販売機だけのドライブインレストランとかあってですね。そこに、パスタとか蕎麦とか珍しい自動販売機が多く置いてあったんですね。さらに、友達から群馬に珍しい自動販売機がいっぱいあるぞという情報を頂いてですね。当時ちょうど社会人になりたてで、パソコンの勉強とかやってたので、ホームページを作ってみようと思ったのがきっかけですね。

Q:ブログを運営する中、面白いエピソードとかありましたら教えていただけないのでしょうか。

野村:自販機マニアでのオフ会というのを開いて、自販機マニアが何人も集まって実際に自販機の食べ物を食べながら、自販機の話で盛り上がりました。そういうのをブログで紹介したらテレビ局の方が見ていたようで、テレビの出演依頼まできました。1度テレビに出演したら、他のテレビからも出演依頼があり、テレビやラジオ雑誌などメディアに出演する度にいろいろな自販機の裏情報を得られて、それをまた別のテレビなどで話して、といった感じで自販機の情報はどんどん集まってきました。そんなこともあったので、余計に自販機が好きになりました。大阪でしたら、東梅田の駅の近くのポプラというコンビニが全部自販機で提供されています。あとは、大阪では有名な大阪地卵という問屋の前に10円のジュースの自販機があります。10円でも商品は普通に100円位で売っているもので賞味期限が数日後くらいに迫っていたりするものです。面白いので、ぜひ見に行ってみてください。

Q:同じ商品でも自販機によって値段が異なることがあります。この差はどこから来ているのでしょうか。

野村:それはですね。やすいドリンクをいっぱい仕入れてやっている業者が、そのまま自販機の運営もしているので安いことが多いですね。仕入れて、コストはあんまりかからないというか…

Q:自販機の品質管理、または衛生管理は、その自販機の商品を提供する業者がやるんですか?

野村:それはですね… 業者次第なんですけど。やっぱり、商品の入れ替えとかも、一括でやってる場合もあるんですけど、酒屋さんの前に置いてあって、酒屋さんがご自分で商品を入れている自動販売機とかは、酒屋さんがやっています。だから、賞味期限がもう迫っているとか、切れているとか、そういうものがたまにあったりします。

Q:自販機の中身を入れ替えるのが業者の場合、所有権も業者にあるんですか。それとも、お店の方で自販機を所有しているということもあるんですか。

野村:ありますね。お店で置いてて、お店に所有権があるものは、利益は店のものになります。業者がやっているものは、大体その業者が、利益の何パーセントかを置いてるオーナーのほうに支払うことになります。自販機をおく場合は土地の所有者に許可を取らなきゃいけないんですね。

Q:土地の所有者にも何パーセントか利益がいくことがありますか。

野村:大体は、土地の所有者が自動販売機の利益を受け取っていますね。例えば、100円のジュースが売れたら、80円は業者がとって、20円は土地の所有者がとるという感じです。

Q:色んな珍しい自動販売機があったとおっしゃいましたけど、その中でも、一番記憶に残る自動販売機は何でしょうか。

野村:それはですね、カレーライスの自販機ですね。これはお金を入れると、カレーライスがお皿に盛り付けられて出てくるんです。その仕組みは複雑そうで、初めて見た時は、その中に人がいるのじゃないかなと思いましたが、既にご飯が盛り付けられている皿が自販機の中に入っていて、そこにレトルトカレーの袋を中でカッターで切って作られるようになってるらしいです。

Q:野村さんが思う自動販売機の魅力は何ですか。

野村:日本だと表を歩いているだけで自販機が色んなところに現れるので、それだけで面白いですね。色んな場所に無造作においてあるのでそういうところがすごい好きです。
あと、最近コンビニがいろんなところにあるんですけど、みんな自動販売機をどれぐらい使っているのだろうというのが今気になっています。

Q:コンビニのような24時間空いているお店が増え続けている今、結局コンビニが自動販売機の役割を代わりに果たしてしまうという感じでしょうかね。

野村:はい、そういうことです。昔だったら夜中は自動販売機でしか(ものを)買えなかったんですが、今だったらコンビニもあるし、ファーストフードだとかも24時間開いているので、自動販売機がどんどん減っていく傾向があります。

Q:留学生たちと自動販売機について話していると、夜中とかだったら、直接人に会わず、何かを買いたいと思う人はけっこういるんですね。

野村:そうですね、実は私も同じです。ジュース一本を買うためにレジをやってもらうのは申し訳ないなと思って、それで、自販機で買った方がいい、いいっていうか楽かなとか思います。

Q:自動販売機のこれからの展望、例えば、需要とか数はどうなると予測されていますか。

野村:全体的に言えばですね、しばらくはどんどん減っていくでしょうけど、人口が少ない田舎にコンビニがあっても多分あんまり売れないと思うので、逆に自販機が戻るんじゃないかなと思っています。
あとコンビニも、自動販売機化しているみたいで、例えば、オフィスの中とかで、売れるお弁当やパン、おにぎりを自動販売機で販売するオフィスファミリマートというのもけっこう増えています。

大阪府東梅田駅の自動販売機コンビニエンスストア

Q:自動販売機をずっとおいかけてきて今、どんなことを思っていますか。

野村:私の自動販売機のホームページなんですが、もう二十年ぐらい続けていてですね、最初はほんとに個人の趣味でやってたんですが、いつの間にかテレビなどか雑誌などか、色んなところで紹介されるようになって、ほんとなんかすごい自動販売機が注目されるようになったので、やってて本当に良かったなと思うのと、他の国ではこんなに盛り上がることはあまりないですよね。

(インタビュー:2017年12月)