笑顔溢れる定年生活

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笑顔溢れる定年生活

PEOPLEこの人に取材しました!

金川宗正さん

老人ホーム「池袋敬心苑」施設長

東京、池袋に開所12年の老人ホーム「池袋敬心苑」がある。金川宗正さんは24年間介護の仕事を続け、「利用者さんの笑顔を作る」という志を抱きながら、日本の社会福祉に貢献している。
私たちは、池袋敬心苑のお年寄りたちの生活や、金川さんの定年後の生活に対する考えを聞いた。

Q:介護の仕事を始めたきっかけは?

うちの親が寝たきりだったというのが一つ、それで福祉の専門学校に行って、介護に最初は携わっていました。

老人ホームでの生活

Q:今この施設の利用状況は。

今、私たちの施設には、ここで生活してる方が82名、家から通っている方が10名の92名。あと身体障害者の方が10名と、ショートステイの方が1名で、合計103名の方がいらっしゃいます。

Q:利用者さんは毎日何をしますか。

午前中とか午後の空いてる時間はレクリエーション、音楽、歌、楽器を使って歌を歌ったり、あと書道をやったり、お花をやったり、体操したり、将棋や碁をしたり色々な活動をする。そして、ジムや訓練もやっています。パソコンが使える人もいらっしゃいますが、多くの利用者さんにとって、パソコンはちょっと難しいかな。細かい作業になってくると、ちょっと大変な感じ。
お風呂には一般浴と特殊浴があって、一般浴っていうのは普通にお風呂に入る。特殊浴というのは機械でやりますね。だからそんなに手間がかかるというほどでもないけどね。主に寝たきりの人とか、歩けない人とかが使います。そして、テレビを見てゆっくり過ごしたり、趣味活動をやったりしています。昨日の食事はね、「イベント食」といって、握り寿司を食べてもらって、そういったこともやってますね。

Q:施設外の活動はありますか。

お花見とか、買い物に行く人もいるし、今日はたまたま生け花の先生が来てて、その先生の個展があるから、それを見に日本橋のデパートまで行きました。交通事故があっても困りますので、職員付き添いでという形ですね。

Q:入所している方はここの生活を寂しいと感じないですか。

寂しいって考える人もいると思いますよ。その寂しさを、どうやって緩和してあげるかというのも私たちの仕事の一環です。
面会しに家族も来ます。毎日来る人もいらっしゃるし、たまに来る人もいるし、あと家族がみなさんで集まってお正月も来てくれるし、あと夏祭りとかにも来てくれる。
家だとね、日中一人にしておけないとかね、おむつ交換とかも大変でちょっと在宅では、家では無理かなという人が入るという形かな。ここだと、24時間誰かしら職員が付いてるし。

Q:中国、特に大都市に住んでいる人は仕事が忙しくて、お年寄りの面倒を見る余裕がないから親を老人ホームに送ります。日本は大体中国と同じ状況ですか。

そうだよね。もし親を見るんだったら、仕事を辞めなくちゃいけないっていうのがあって、今ちょっと社会的に問題になってるのが「介護離職」。まだ働ける若さなんだけど会社を辞めて介護に入っちゃう人がいるのが日本の福祉の問題になってるんですね。

Q:今日本では、多くのお年寄りが定年の後でも、またアルバイトしています。例えばタクシーのドライバーとか…

うん、今、そうですね、昔は65歳といったら、もうおじいちゃんおばあちゃんの世界だったんだけど、今の65はまだ全然若いから、ほんとにしっかりしてるなあと思うし…。だからまだまだ社会に貢献できるっていうのがあると思います。

金川さんの定年生活

Q:ここにお勤めしてから、この老人ホームについて、一番記憶に残っていることや大変なことは何ですか。

記憶に残るのは、利用者さんの表情かな。どこでも、どこの国でも一緒だと思うけど、笑顔を見ると、こっちも嬉しくなってくるし、和やかになる。それが一番印象に残っていますね。
大変なことは、職員の管理かな。やはり働いてくれる人がいて、それで成り立つんだけど、福祉の業界ってキツイとか辛いとか言って、辞めちゃう人がいると、利用者さんにサービスが出来なくなるから、それが一番辛い。利用者さんの笑顔を作るためには、職員も頑張らないといけないんだけど、まず、人手不足というのがやっぱりね、一番キツイと思います。

Q:金川さんは定年してから、どうしたいとお考えですか。

定年してから、働ける間は、なんかの役に立とうかなぁとは思いますね、それが何で役に立つかっていうのはわからないし、あとは、資格を持っているから、その資格を生かせればいいかなとは思うし、福祉関係の資格がいっぱいあるから、それを生かせればいいのかなって。ただ定年して、体力的にきつかったら、もうそんなには働けないと思う。フルではね。

Q:定年後の生活に慣れないお年寄りは多いですか。

定年になってね、張りがある生活を続けるためには、何かしらやったほうがいいと思うしね、でも定年になったら、少し旅行とか行って、ゆっくりしたいなぁーとは思いますけどね

日本のお年寄りへの生活保障について

Q:日本のお年寄りへの生活保障について、簡単に教えていただけませんか。

一番の生活保障としては年金。65歳から、一応もらえるけど、本人の意志によって、70歳からもらう人もいるし。ただ、65歳からもらう人はお金その分少なくて、70歳以降でもらう人がちょっと多めにもらえる。
一応日本では、年金は働いた期間によって金額が決まってくるから。25年以上働いた人には年金が出る。もし、年金がもらえなくて、生活に困った人には「生活保護」という制度があって、それで、医療費とか、食事代とかもらう。

Q:今、日本のお年寄りがどんどん増えて行く、政府の負担も重くなって、税金が足りなかったら、どうすればいいですか。

お年寄りが増えて、増えるものといったら、介護保険料。今、日本では、40歳以上の人はもう取られているだけど。介護保険料というのね。その負担が大きくなるというのが現状。これから、もしかしたら、年齢も下がっていくかもしれないしね。まだまだ介護保険使わなくても、それは国民の義務じゃないけど、払っていかないと、お年寄りの生活、サポートできないというのはありますね。

老人ホームの対策と改善すべき点

Q:日本少子高齢化の状況により、この施設は、これからどうなると思いますか。

老人ホームはたぶんこれから増えていくとは思います。要介護の低い人とかもこれから入れていくためには、老人ホームはいっぱいできると思う。
それに、職員の質っていうのはすごい必要になってくると思うし、よくいわれているのが選ばれる施設ということ。家族や利用者から選ばれる施設を目指していくっていうのが一つですね。

外国人介護士の雇用について

Q:これから老人ホームを利用の方がどんどん増えていきます。それで、職員が足りない場合もありますか。

あります(笑)。今もそんな状況だし、絶対にね、出てくると思いますね。うん、やっぱりお年寄りが増えて、あなたたちみたいな若い子が数が減っていく。職員は不足してくるからね。

Q:今、日本は少子化の影響を受けて、福祉関係に入る職員の数も少なくなっています。現在、外国人の留学で、福祉の専門学校に入る人もいますが、これから老人ホームでは外国人の雇用も考えていますか。

入れていかないとだめだよね。だから今いわれてるのが、フィリピンとか、カンボジアとか、アジアの外国の方。まあ、日本で介護をやってもらうようにっていう施策があるんだけど、なかなかそれも進んでないっていうのが現状。私から考えると、中国の方だと、漢字やっぱり使うから、その辺は少し楽かなと思うんだけと、英語圏の方だと、日本語とか、ちょっと難しいかなっていうところですかね。で、あと、変わってきてるのが日本の国家資格を取ると、日本で働けるっていう制度に変わってきてるみたいですね。だから外国の方も専門学校に行って、介護福祉士っていう国家資格を取って、日本で働きたいっていう人がいっぱいいますね。

Q:外国人に介護されるのが嫌だなあというお年寄りもいますか。

たぶんこれからは平気だと思う。これからはやっぱりお年寄りも私たちの世代ちょっと上の人たちぐらいになるから、外国の方とお付き合いする機会とかもある。昔は本当に茶髪とか、髪の毛が茶色とかはダメっていう時代があったんだけど、今もう利用者さんのほうが黙認してくれている。今はもう当たり前だねっていう、そんな感じですかね。

Q:カルチャーショックもありますね。

その違いっていうのがあると思うけど、気持ちで働けば別に国境関係ないかなって。だから言い方が変だけど、アメリカの人だろうが、ロシアの人だろうが、中国だろうが、韓国だろうが、北朝鮮だろうか、やっぱり福祉でだれかのために働きたいっていったら、想いは1つだからね。変わんないと思いますけどね。

(インタビュー:2017年5月)

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