ずっと続けてきたものは、やめたくない

ずっと続けてきたものは、やめたくない

PEOPLEこの人に取材しました!

富美子さん

名曲喫茶「でんえん」オーナー

昭和32年創業の名曲喫茶「でんえん」。30数年前に亡くなったご主人の代わりに一人で店を続けてきた富美子さんに話を聞いた。

クラシックは好きではありません


主人が音楽と絵が好きなので、この店を始めました。今はもう60年営業してますね。主人のクラシック好きにあんまり影響されてません。私はあんまり好きじゃなかったし。詳しく知らないから、主人が作ったレコードリストがないと難しいです。例えばお客様がベートーベンの「田園」を聞きたい時には、レコードリストを開いて自分で番号を探し、リクエストにこたえます。店で流す音楽を選ぶ基準はないですね、あくまでもお客さんがリクエストしたものを流す。開店当時は朝から閉店まで、お客さんからのリクエストが多くて、ずっと待っていたお客さんもいました。かけ終わらない時もありました。

大きなスピーカーは劇場用なんです。今も音楽はあそこから出ています。アメリカのエレクトロボイスという会社のスピーカーです。奥にある小型スピーカーは手作りなんです。お客さんが作ってくれたんです。レコードは今千枚ぐらい。CDはここにあるだけ。昔はレコードが主流でCDはなかったから。今流してるのはCDです。レコードはリクエストがあればかけます。

でんえんの誕生

主人は会社を退職してこの店を開きました。当時は、東京都北多摩郡大字国分寺でした。中野から来たので、田舎に来たなあと思いました。水道もガスもなく、都会とは思えない生活が始まりました。
開店当時から順調にスタートしたんです。美人ウェートレスさんがいたおかげです(笑)。私たちは素人でしたから、毎日が緊張の連続でした。お客様のリクエストにはどう対応すべきかとか、コーヒーの風味についてはどうかとか、さまざまなことに戸惑う日々でした。

すべてが60年前のまま

現在も店内は開店当時のままです。照明には苦労しました。適度の明るさはどうすればいいか難しいと思いました。主人は時おり骨董品店に足を運び、店内のインテリアを考え、ランプ、置物などを見つけてきました。机のガラスに入っているコーヒー豆は本物の豆ですよ。一度変えました。一度捨てて、全部新しい豆にしました。
主人はコーヒーにもこだわってました。今は世界中のコーヒーが手軽に楽しめると思いますが、ここはブレンド一種類だけです。モカとかコロンビアとか何種類かをミックスしたもののブレンドです。やっぱり美味しいものを出したいから、コーヒー屋さんと交渉していろんなものを試してみました。これも開店当時のままです。味も変わってない、昔風のコーヒーです。

私は、ケーキにこだわりというのはないけど、レシピの通りに作っているんです。レシピは娘がオーストラリアに行った時にホテルのオーナーから聞いたものです。
花が好きというか、こんな殺風景な店だから、お花ぐらいないとね。花の他にも絵をたくさん飾っています。絵はお客さんの希望で飾ったりします。個展を開くこともありますよ。以前は武蔵野美術大学の学生さんが自分の絵を飾りたいって言ってよくもってきていたんですよ。1年ぐらい武蔵野美術大学の学生さんの絵だったこともあります。
このお店を知ってる人もいるけど、誰でも知っているわけではないから、常連さんがいないとやっていけないですよね。若者たちも来てますよ。ヒッピーたちも来てたんですよ。国分寺にはヒッピーが結構いたの。でも別に暴れないし、インテリの人が多かったですよ。

英語の勉強も60年間

わたし英語の勉強に行ってるの。だから、ある年配のリタイアしたお客さんは「僕が来たら英語で話してくれ」って言うの。他のお客様がいたらそれはできないですけど。もう60年前からやってます。上手というより、続けて来たものだから、やめたくないのね。
やっぱり、日本の文化とか、日本の料理とか、今すごく世界で取り上げられていたり、オリンピックの前で注目されていますよね。そのせいじゃないですか。外国からの観光客も多いですね。

でんえんが特別な存在

木曜日以外は1時から7時まで開いてます。でも休みをもう一日増やそうと思ってるんです。まだ決まったわけじゃないですけど。
今風の喫茶店とかカフェとかにもたまに行きますよ。カフェだけじゃなくて、レストラン形式でお茶も飲めるところとかも。でも喫茶店の文化って、皆さん若いから知らないかもしれないけど、とてもわたしはいいと思うんですよ。ちょっとお茶飲んでね、一休みするっていうのはね。やっぱり、でんえんは自分の城だと思うから、一番落ち着きますよね。これからもみなさまの期待にそって、でんえんの灯を消さないようつとめてまいります。

(インタビュー:2017年6月)

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