誰かが喜んでくれれば

横浜国立大学

誰かが喜んでくれれば

PEOPLEこの人に取材しました!

佐藤裕郁(さとう ひろふみ)さん

神奈川県動物保護センター(*)職員 *2019年6月より「神奈川県動物愛護センター」に改称

中学生の時から犬や猫の命を守りたいと思った佐藤裕郁さんは神奈川県にある動物保護センター(現、動物愛護センター)で広報を担当しています。獣医師の仕事をしていた佐藤さんは2019年6月に新しい建物に引っ越す動物保護センターに多くの人に来てもらえるように頑張っています。そんな佐藤さんに動物保護センターで働き始めたきっかけや日本の動物保護の状況などを聞きました。

犬や猫の命を守りたい

もともと中学生の時から動物が好きで、犬を飼っていました。犬や猫の命を守りたいと思うようになって、それがきっかけで動物保護センターで働くようになりました。このセンターで仕事を始めたのは8年前です。昨年までは、神奈川県の動物愛護の方針を決める部署にいました。今の仕事はやりがいがあるんです。通常、獣医師だと、動物病院で治療しますが、私は違う役割をしています。どちらかと言うとデスクワークが多いです。ただ実際に犬や猫にそんなに接しなくても、犬や猫の命に繋がっている仕事ができているので、そういうことがやりがいになっています。やはり誰かが喜んでくれる、その犬や猫が喜んでくれる、もちろん、飼い主さん、そして新しい飼い主さんが喜んでくれるので、それが励みになっています。

(写真提供:神奈川県動物愛護センター)

イギリスの動物保護センターに

イギリスは動物愛護の取り組みがすごく進んでいるという話を聞くので、どういった取り組みをしているのかを学びたくて、去年の9月に行ってきました。自分で計画を立てて、3週間ぐらい見学させてもらって、保護されている犬や猫の新しい飼い主さんをどのようにして見つけているかを学びました。イギリスの動物保護センターの最初の印象はとても明るい施設だということでした。クラシック音楽が流れていて、その中で、多くの人が気軽に来て、犬や猫を見ているというのが印象的でした。明るいところとやり方が工夫されていて、イギリスで保護されている犬や猫を多くの新しい飼い主に届けるという取り組みで、それぞれの動物がどういった飼い主に向いているのかをきちんと評価しています。評価をして、それをウエブサイトでわかりやすく書いています。例えば小さな子供が家庭にいるとか、あるいはもともと犬や猫がいるといった場合に、それで検索すると、あなたにマッチしている犬や猫はこちらですとパッと出るような形になっています。ここは特にそういうのはなくて、ただ写真と文書の設定だけなので、それをちょっと取り入れたいと思っています。

1年間に300匹の野良猫の赤ちゃんが?!

ここで働いて大変なことは、1年間に300匹ぐらいの野良猫の赤ちゃんが入ってくることです。ボランテイアの方が今協力してくれていて、300匹はほとんどボランテイアさんに渡しているので、赤ちゃんの猫はここにいないです。ただボランテイアさんはその赤ちゃんの猫を育てるために、3時間おきにミルクを与えないといけなくて、年間300匹をボランテイアさんにお願いしているので、ボランテイアさんもかなり苦しい状況です。

あとは、迷子の犬も200匹とか300匹は入って来るんですが、60%しか飼い主さんの元に戻れなくて、残りの40%は飼い主さんが出てこないということです。マイクロチップはイギリスでは義務化されているので、私はイギリスにいた時にインタビューをしたら、ほぼ100%近い人がマイクロチップを入れていました。ただ日本だと、まだ20%ぐらいしか埋めていないので、やはり迷子で入って来ると飼い主の元に戻れない場合もあります。それをどうにかしたいです。ペットショップに対しては今年か来年に義務化されるとは思われます。ペットショップは必ずマイクロチップを埋め込んでから販売することになります。ただ今すでに犬を飼っている飼い主には義務化されないので対策が必要と考えています。

(写真提供:神奈川県動物愛護センター)

一つの日本という社会

この仕事をしてよかったと思ったのはやはり、こちらに迷子の犬がたくさん入って来て、飼い主さんからも電話がかかって来るんですね。それが最近あって、「迷子の犬いませんか?」と飼い主さんから電話がかかって来て、ちょうどその犬がこちらに保護されていました。それで、飼い主さんがすぐにやって来て、犬がすごく喜んでいたんですよ。無事に飼い主さんに戻って来て、やっぱりそういった瞬間に立ち会えると嬉しいことです。

あとはこの仕事をして自分が変わったことがあります。私はもともと動物が大好きです。ただやはり人の考えはそれぞれで犬や猫を好きな人もいれば嫌いな人もいます。嫌いな人はどういう風に犬や猫を扱うかというのを見てきて、自分の考えとは違う人たちもいるんだというのが、やっぱり普段接してみて気付いたことでもあります。もちろん考えは人それぞれなので、それは当たり前といえば当たり前なんですけど、この仕事をしていると色々な人が関わって来ますので、色んな考えに触れたことで、自分の中では変化がありました。色んな考えを持っている人がいて、その中で一つの日本という社会をよく知っていくには、それぞれが一方的な意見を言っているわけなので、それぞれが共通しているところをいま捉えてちょっと進めていくというのは大事だなというところです。

関心がある?

イギリスに行った時に、400人ぐらいの人にインタビューしました。そうしたところ、90%の人が動物保護施設のことを知っていました。日本はそのようなアンケートはしていないので一般的の人々にどのぐらい知られているのか言えないですけれども、多分6割か7割ぐらいは知っていると思います。ここのボランテイアの人数は団体と個人を合わせて80ぐらいですが、ただ一団体あたり何人かいます。それぞれ、犬や猫、得意分野がありますので、犬専門の方もいれば、猫専門の方もいますし、あるいは赤ちゃんの猫専門の方もいるという形で、それぞれで役割分担をしています。
こちらの保護センターでは寄付を集めて新しい建物を建てました。そして、新しい寄付の募集を2018年から始めて、新しい建物に引っ越したらその寄付を犬や猫の治療だとか訓練に使って、どんどんそういった取り組みを進めようかなというところです。

2019年6月にオープンした神奈川県動物愛護センター (写真提供:神奈川県動物愛護センター)

動物が過ごしやすい環境に

こちらはもともと、処分するため、動物を安楽死させる施設でした。今度は6月から新しい建物になって、動物を過ごしやすい環境に連れて行く施設です。なので、そういったいい環境の中で動物たちを保護して、良い飼い主をどんどん見つけて譲渡していきたいということです。イギリスと割と近いような形で、明るい施設になって良くなるのかなと思っています。個人的に、やはり一番やりたいのは、イギリスで学んで来たことを新しい施設で取り入れることです。ウエブサイトでイギリスのやり方をやってみたいなと。そうすると多くの方がウエブサイトを見て、この犬や猫をほしいと言ってくれるようになるんじゃないかなと思っています。それが今の一番の目標です。

(写真提供:神奈川県動物愛護センター)

(インタビュー:2019年5月)

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