暖かく活動し見守る

横浜国立大学

暖かく活動し見守る

PEOPLEこの人に取材しました!

小川恵美さん

「こそあど ぐるん」所長

「こそあど ぐるん」は神奈川県横浜市弘明寺にある地域活動支援センター。障がいのある方の働く場であり、社会参加を支援する場である。ハンバーガーショップに小箱ショップが併設されている。「ここ」だけに留まらず、周りで関わる人の「そこ」、地域の「あそこ」、まだ見ぬ「どこ」、たくさんの「こ・そ・あ・ど」がギュっとつまった出会いの場。そして、その出会いから「こ・そ・あ・ど」は「ぐるん」とつながっていく。
 そんな「こそあど ぐるん」の活動の目的や、ここで活動してきた方々の今までの経験についてお話をうかがった。

 

親御さんの望みからできあがった「こそあど ぐるん」

「こそあど ぐるん」ができたのは7年前。当時、車椅子の方、重度の障がいのあるお子さんがいらっしゃる親御さんが地域で自分たちの子供を行かせたいという場所がなかった。「あってほしい」という家族の方々の望み、「ないのなら作ろう」という親御さんの想いを形にするため、社会福祉法人横浜共生会がお手伝いし、「こそあど ぐるん」はできあがった。そして、どんなに重たい障がいをお持ちの方でも、医療ケアが必要であっても、自分たちの地域で働いて、地域で生活をしている、そして、そのことを発信できる場所が「こそあど ぐるん」なのだ。

障がい者だからではない、いい場所だから訪れるように

障がいがあったり、車椅子の方が働いていることは、まだまだ地域の人たちに知ってもらう機会はすごく少ない。なので、できあがったころの思いも引き継いで、「こそあど ぐるん」を通して重たい障がいの方々でも仕事をして活動していることを自分達で発信する場所にしていけるように毎日「こそあど ぐるん」のみんなは努力しているのだ。

「こそあど ぐるん」はハンバーガーショップと小箱ショップの2つのショップ部門がある。だが、「障がいの方々が働いているから行こう」とか、「福祉の場所だから行こう」ではなくて、「ハンバーガーが美味しかったからまたここに来たい!」と思ってもらえるような「こそあど ぐるん」にして行こうというのがみんなの目標。作業所という場所ではあるけど今までにない場所、こんなことができるのかという場所を作っていきたいというのがスタッフの希望だ。なので、「こそあど ぐるん」がどのように変わっていくのか楽しみだ。

小箱ショップのスペース

照り焼きのハンバーガーとおすすめのハッシュドポテトにオレンジジュース

小箱ショップの手作り商品

もっともっと発信!

「こそあど ぐるん」をより多くの方々に知ってもらうために従業員たちが作っているチラシを配りに行ったり、インターネットで地域交流部門のおーぷんすぺーすでどんなことをやっているのかを発信している。また、ハンバーガーを食べてくださった方が「そこ美味しいよ」と宣伝をし、「美味しいと聞いたから来てみた!」と言ってくださる方がいるようだ。それは地域の方々の力だ。

一緒にやっていて良かった、必ずやりがいはある

障がいがある方々はすごく純粋だ。車椅子の方も、重たい障がいの方も自分が言葉で発言できることは非常に少なくても、その中で自分なりの発信の仕方を見つける。「こそあど ぐるん」を通してより豊かに表現できるようになったり、「こそあど ぐるん」を自分たちの場として自慢してくれている時に充足感がある。それを見ると「ここで一緒にやっていて良かったな」と感じるのだ。

もっと広い世界で

さとしさん (仮名)「こそあど ぐるん」従業員

楽しく仕事をし、楽しく生きる

ダウン症のさとしさんは「こそあど ぐるん」で働いている。パンを焼いたり、チラシ作ったりしている。さとしさんに職場の様子を聞くと仕事が楽しいと答えた。一番好きな活動に関して尋ねると「やっぱりあれかな、パン焼きの仕事かな」と笑顔で答えた。さとしさんとのお話をする間、隣にいてくれた小川さんは「上手になりましたよね、さとしさんね」と笑顔で言った。

家族の思い

あきこさん (仮名)

現在25歳の娘さんは高校卒業後、週に3回「こそあど ぐるん」に通っている。あきこさんも「こそあど ぐるん」の小箱ショップのスペースを借りて手作りの商品を販売している。手作りが元々好きだったので趣味の一環で活動している。毎日ではないが娘の様子も見に訪れている。週に3回通う娘にとっては貴重な昼間の活動の場所。この場所がみんなに受け入れてもらってお店が繁盛することを願っている。

困難に立ち向かいながら

娘さんの生活は学生の時とは一変したと感じている。25歳である以上、成人として見てもらえる。そして、日々の過ごし方も学習も社会に出て働くと、小学校や高校の時期とは大きな違いがある。また、娘さんの能力だと徐々にしか慣れていかないのだが、今は年々と場所や仕事に慣れてきている。もっと自分たちの生活を楽しみ、自分でできることが増えてくれればいいと願いながらサポートをする。しかし、社会には出たが自立することはやはり難しい。言葉が話せないので自分の気持ちをどのように伝えるのか、この世の中でどのように1人で生きていくかというのは途方もなく雲をつかむような話になるのだ。「私は歳をとって順番に死んじゃうから。そうなった時に、娘がどうやって生活するのかっていうのを考えておかないといけないかな。そこが一番難しいところかな。理想というか目標を持って、どこまで一人暮らしとか一人で生きていくことの方法を、どこまで整えればいいのかっていうのがちょっとね、わからない、予測中というか。それがとても難しいと思っています」とあきこさんは言う。

これからも温かく強い思いで

娘さんは重度の障がいを持っているので日常の生活で殆ど全てのことに援助が必要だ。なので、街の中や家族だけに限定されないように環境を親が与えてあげようと考えた。そこで、「こそあど ぐるん」は最適だと思い、娘を通わせることを希望したことがこの場所とのつながりの始まりだ。なので、今後も地域の方と触れ合うような事業内容を続け、安全に暮らしていける日中の時間の過ごし方を継続して提供してもらえたらと願っている。また、小箱ショップに出店している商品の売り上げはあまり多くないが、手作りは趣味なのでこれからも続けようと思っている。

(インタビュー:2017年11月)

  • こんな素敵な場所があるんですね

    2018-8-23

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