私の大切な場所の紹介/一週間の活動マニュアル作り

私の大切な場所の紹介/一週間の活動マニュアル作り

田中祐輔(たなか  ゆうすけ)

田中祐輔(たなか ゆうすけ)

大学の日本語学習者が、東京に来る同世代に向けて、自分の興味や関心のある場所やものについて案内する情報をまとめ、一週間の活動マニュアルを作成するという活動。普段インプット活動の多い留学生にとって、伝えることを通してより広く他者と交流することができ、情報への理解も深まる。

2014年12月19日

Category

言語
  • 日本語
対象
  • 大学生
活動タイプ
  • インタビュー
  • フィールドワーク
  • プレゼンテーション
  • 交流
  • 資料制作
  • 資料調査
アウトプット
  • スライド
  • マニュアル
話題分野
  • 交通と旅行
  • 地域社会と世界
  • 自分と身近な人びと
  • 行事
  • 衣とファッション
  • 買い物
  • 趣味と遊び

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単元目標

学習レベル3・4
A 大学の日本語学習者が、東京に来る同世代の若者(国籍の別問わず)に向けて、自分の興味や関心のある場所やものについて案内する情報をまとめ、一週間の活動マニュアルを作成する。

<この単元案のセールスポイント>
・来日した留学生が、留学生活で得た知識や情報を、学んでいる日本語を用いた調査を通して深め、また得られた情報を他者とまとめ、議論することを通して協働活動・コミュニケーション活動のストラテジーを高めることができる。なにより、外にある情報を自らの内に入れる活動に終始しがちな留学生が、みずからの興味や関心、知識や情報を他者に伝える活動であること、そして、そうした活動を他者との交流を通して深めること、この二点にこの単元案のポイントがある。
・既に活動は実施済であることから実現可能性は高い。また、学習者の取り組む姿勢・態度から学習の動機付けも十分に強化できる活動となっていることが示唆される。また、留学予定者や他大学の学生との交流は、教室や教室周辺だけでなく、より幅広い他者との複合的なコミュニケーション活動の実現が期待される。

インタビュー

このプランは実践したものですか。
実践してみようと思ったものですか。
実現の可能性はありますか。

2013 年度秋学期と2014 年度春学期に担当した交換留学生対象の日本語科目の中で実践したものです。

どうしてこのプランを作ろうと思ったのですか。
発想の原点はなんですか 。

かねてより学習者が習得した言語知識や言語技能をフルに活用して取り組める授業を模索して来ました。教室実践の見学や、関連する資料等から学んだことも授業に少しずつ反映させながら試行錯誤を続けました。しかし、なかなか核になる考え方や活動の基盤を得ることができず、また、実施した活動をどのように整理し、次につなげてゆけば良いのかが掴めない状況が続いていました。『外国語学習のめやす』と出会い、加えて、活動が自由に行える科目を新たに担当したことがきっかけとなり、プランを組み立てなおしてみようと思いました。

実践してみて生徒の反応はどうですか。
実践していない場合、生徒のどんな反応が予想され、または期待していますか。

「グループで興味や関心のある場所やものについて案内する情報をまとめ、他者に日本語を通して伝える。」というテーマに対し、学生達は私が想定していたよりも非常に幅広い活動に日本語を用いて取り組んでくれました。渋谷や秋葉原の文化に関心があるグループは、自分たちが普段行く場所そのものについてだけでなく、その歴史や取り巻く環境、背景についても調べました。また、現地に足を運ぶ他の人々や現地で生活する人々への取材を行って情報を収集したり、自文化との比較をしたりし、対象の魅力や特徴、人々への影響を他者に分かり易く伝えられるよう奮闘していました。原宿ファッションを選んだグループは、現地でさまざまなファッションに身を包む人々にインタビューをし、その理念や工夫、伝統文化との関わりについて考察していました。教師の役割としては、学習者が活動プランを練り、実施してゆく過程に寄り添い、必要な情報、手続き、その他の支援を考えサポートすることに専念しました。

このプランに対する自己評価を教えて下さい。
また、学習のめやすを取り入れた授業を試みるにあたって、どんな課題や効果があると思いますか。

学生達が学内外において、様々な人々とふれあい、それぞれに何かを発見し、そして自分たちの考えや想いを他者に伝え対話する活動が出来たことは大きな収穫だったと思います。
課題もさまざまにあり、組み立てたプラン通りに全てを進められたということではありません。ただ、『外国語学習のめやす』を参照しながらコンセプトを据えて教室活動を行うと、本来の目標から逸脱するということはないように感じました。全体のテーマや個別の活動についても、教師が内容を固定的に設定するよりも、コンセプトに基づいて学生達と協議して設計してゆくと、学習者のニーズや教室を取り巻く環境との調整もでき、先に述べたような学生達の広がりのある活動に繋がるように思いました。

同業者仲間に向けて、ワンポイントアドバイスや感想を一言お願いします。

『外国語学習のめやす』は外国語教育実践の一つのコンセプトとして大変参考になると感じます。また、担当するクラスやコース全体を構造的に捉え、展開してゆく際の骨子にもなると思います。具体的な教室活動を行う際にも、記載されている「大目標⇒中目標⇒小目標⇒個々のタスク」の流れで手順を追って進めることができ、こうした枠組みを学習者と共有できていると活動の意義や目的が非常にクリアになりました。一方、「3×3+3」についても、教員自身が活動の全体像を把握する際に、また、教員間や組織全体でクラスの内容や主旨を共有するときにも役立つと思います。

執筆者

田中祐輔(たなか  ゆうすけ)

田中祐輔(たなか ゆうすけ)

「外国語学習のめやす」マスター研修の修了者(2013)。参加当時、東洋大学国際センター講師(日本語担当)。2014「めやす」マスター研修のコーディネーター。

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