公益財団法人国際文化フォーラム

日露交流報告

「日露交流学習プロジェクト」最終報告会をオンラインで実施しました

「日露交流学習プロジェクト」とは、TJFが「日露交流プログラム」の一環として2018年度に実施した「言語学習」「文化理解」「相互交流」を融合した教育実践活動です。日本の高校ロシア語教師とロシアの初中等日本語教師9ペア(各8校、計18名)が、2018年4月~2019年3月の一年間をかけて、教室活動を共に考え、協力して実践しました。今回は2019年3月31日にオンラインで行った「最終報告会」を中心に報告します。

2018年11月に行った中間報告会の様子はこちらをご参照ください。
「日露交流学習プロジェクト」中間報告会をサンクトペテルブルクで開催
http://www.tjf.or.jp/information/2171/

プロジェクトのアドバイザーをお願いした早稲田大学日本語教育研究センター准教授の金孝卿氏は、2018年4月のオンライン事前研修に始まり、①プランの作成とメンバー間共有、②各ペアで作成プランを実施、③中間報告会、改善・発展プラン作成会合、④各ペアで改善プランを実施、⑤最終報告会、⑥振返り・総括の6段階で、常にプロジェクト・メンバーの先生方に寄り添ってくださいました。

TJFとしては、日露の教師方が本プロジェクトに参加することにより、「交流学習」をデザイン・実施・評価する一連のプロセスを経験し、実践力の向上を図るとともに、日露間で自立的、継続的、実質的な交流学習ができる体制を作ることも、プロジェクトの大きな目的でした。

オンライン報告会の試み

ロシア側はモスクワ、サンクトペテルブルク、ノボシビルスク、日本側は北海道、青森、秋田、富山、東京各地に在住しているプロジェクト・メンバー全員が報告し、さらに世界各地の教師たちと共有するために、当初の計画どおり最終報告会はオンライン(ZOOM)で行いました。プロジェクト・メンバー全員のほか、日本とロシアに限らず、ハンガリー、オーストラリアからも参加がありました。4時間半にわたる、総勢40名参加のオンライン報告会は、テクニカルサポーターの協力も得て無事終えることができました。

発表は18名のメンバーを3ラウンドに分けて行い、各ラウンド終了後、発表者とそれ以外のプロジェクト・メンバー、一般参加者の混合グループを二つ作り、各グループにおいてオンラインで質疑応答とディスカッションを行いました。

2019年3月31日に行った「日露交流学習プロジェクト」最終報告会の様子

交流学習実践の概要

アドバイザーから「プロジェクトの概要」を説明したあと、それぞれのペアが発表を行いました。

①北海道札幌丘珠高校とノボシビルスク北海道文化センター
発表のテーマ:文化にまつわるクイズを出題しあう
■目的とゴール
文化に関する表現の幅を広げ、相手の情報を理解できる。楽しみながら言語や文化の学習につなげる。
●内容
相手に興味を持ってもらえる内容やアイデアを出し合い、クイズの動画を作り、交換し、相互に答える活動。お互いのクイズを使ったクイズ大会の様子も動画で記録して交換し合う。振返り会や感想文を書くことを通して学んだことや交流の成果を確認する。

②北海道札幌国際情報高校とノボシビルスク4番ギムナジア
発表のテーマ:お互いの文化を知り、ツナガル活動をめざして
■目的とゴール
必要とすることばを学び、お互いの文化への理解を深めるだけではなく、ツナガルことで絆(良い関係性)をつくる。
●内容
日露生徒を1対1でマッチングし、プロフィール紹介シートを交換したり、相手の喜びそうなプレゼントを選び、説明のお手紙を添えて送りあったり、受取った感想やお礼のことばを動画で伝えあう活動。また、「私の朝食」「好きなスイーツ」などを写真と説明メモで教えあい、ことばと文化学習の生教材にする。

③富山高等専門学校とロシアキリスト教人文アカデミー附属カレッジ発表のテーマ:案ずるより産むが易し?
■目的とゴール
交流授業を通して、相手の文化について知るとともに、自分の国の文化についても改めて学び、理解を深める。学習言語を用いて、自分自身、学校、町、文化についての情報を伝える、あるいはこのテーマについて質問できる。
●内容
ロシア側はロシア文化をよく表現しているアニメ作品に日本語字幕をつけて日本側に送る。日本側は相手の都市や自分の都市、学校生活について紹介するプレゼンを行う。また、チャットアプリを使って日露のペアで課題インタビューや自由会話を日露併記で行う。

④富山県立伏木高校とノボシビルスク130番リツェイ
発表のテーマ:日露ふるさと交換会
■目的
「日本」と「ロシア」、「富山」と「ノボシビルスク」といった自分のふるさとを、いろいろな手段を用いて紹介し、共有する。「もっと、お互いのことを知りたい。互いの言語を習得したい。」 「直に顔を合わせてみたい。」 「互いのふるさとを訪れてみたい。」と思えるような活動に取り組む。語学学習の動機を高め、相互理解を深め、豊かな人生の糧になるような活動の仕掛けを作る。
●内容
ビデオやメッセージを作成して交換し、お互いの言語学習教材にするだけでなく、お互いの共通性や相違性を分析し、理解につなげ、相手にフィードバックする。話題は自分や家族、学校や地域、日常生活(食、趣味、行事、ニュース)などを扱う。プレゼント交換も行う。

⑤北海道旭川南高校とサンクトペテルブルク83番学校
発表のテーマ:友だちになろう
■目的とゴール
お互いの日常生活や両国の文化・社会を知り、相互理解を深め、言語学習のモチベーションを高める。自分と身近な人々のこと、学校生活や日常生活のことを学習言語で話せるようになる。
●友だちになるには何が必要かと考えさせてテーマを決め、テーマに関することばを学び、それを使ってビデオ、アンケート、メール、手紙、年賀状などさまざまなフォームや手段を使って交流する。まとめとして「私の友だち」と題して、自分の学校の生徒に交流相手を紹介する。

⑥秋田県立能代松陽高校と高等経済学院附属リツェイ
発表のテーマ:やさしい母国語で自国の文化を説明しよう
■目的とゴール
自国の文化と比較しながら相手の文化について深く考えさせ、異文化への敬意につながることを期待する。非母語話者の入門者または初級者に向って話すときの意識を身につけさせ国際対話力の向上につなげる。母語の論理的構造を意識しながら、相手の言語能力を想定しそれに合せて母語を使うことができる。活動の中で、授業で習った文法・語彙が実際に使用できる。
●内容
月に一回、ビデオレターまたは手紙を交換する。自分のこと(私の家、部屋、家族、趣味など)、学校のこと(私たちの一日、時間割、学校の一年、部活など)、年間行事や祭りなどをテーマに、習ったことばややさしい母語でビデオレターを作ったり、手紙を書いたりして交換する。それをお互いに見て共通点や相違点を探し文化についても学ぶ。

⑦富山県立伏木高校とノボシビルスク工科大学附属ITリツェイ
発表のテーマ:交流学習は何のために必要か
■目的とゴール
交流学習を通して、もっとロシア(日本)について知る。ロシア語(日本語)を用いて自分を他国の同世代の相手に紹介することができる。SNSを通してロシア(日本)にいる同世代の日本語(ロシア語)学習者と交流する。交流の中に、相手に見せたい自分の町の見所や自国のお菓子を紹介することができる。
●自己紹介、自分の町の見せたいところ、お菓子について説明する動画を作ってSNS(Whatsapp)にアップし、お互いコメントを書いたり、見た感想を作文に書いて相手に送ったり、食べてもらいたいお菓子を実際に送りあったりする。また、自分の作った動画をもとにクイズを作成し、相手のクイズに教室で答える。

⑧早稲大学高等学院とサンクトペテルブルク583番学校
発表のテーマ:「かわいい子に旅をさせよ」プロジェクト
■目的とゴール
文化の紹介、日常生活の体験、学校の体験。ホームステイ先へのアンケートを実施するなど、留学中を通して出会った日本人/ロシア人を捕らえて自らのことばで表現し、また自身が体験してきた異国での生活が自国のそれとどのように異なりまたは同じか、客観的に見つめることができる。
●内容
お互いの学校間で年間数人規模の交換留学を行っている。渡航する生徒が興味を持っている科目についてアンケートを取り、それに合せて受入カリキュラムを作る。ホームステイのホストファミリーと一緒に答えてもらうためのアンケートを作成し、それをツールにしてホストファミリーとコミュニケーションをとり、ロシア人やロシアの生活・文化について知り、帰国後、自校の生徒と共有するためにプレゼンをする。

⑨青森県立青森南高校とサンクトペテルブルク583番学校
発表のテーマ:ロシアとの交流を通じて
■目的とゴール
「姉妹校との交流を活用した、英語を媒体とする異文化理解学習の試み」をテーマに、主にビデオを活用して、多数の高校生の意見を通して、相互の文化理解を促進する。異文化の人であっても言語を媒介としてわかりあうことができる。結果として積極的にコミュニケーションする人間になれる。
●内容
日本側は第一学年全員(ロシア語1クラス、英語5クラス)が参加し、総合英語、国語総合、総合的な学習の時間を利用する。ロシア側は日本語を履修する3年生から11年生(11クラス、300人)が参加する。「将来の夢」または「今、夢中になっていること」をテーマにビデオを作って交換する。そのビデオを視聴して感じた疑問、興味について話し合ったり、相手の質問に答えるために全校生徒にアンケートを取ったり、取材も行う。手紙の交換、リーダー訪問、生徒の相互派遣も実施し、メッセージ、映像、ものの交流と対面交流の内容を有機的につなげる。

発表資料の抜粋

プロジェクトの成果

終了時にプロジェクト・メンバーを対象にアンケートを行いました。ここでは特にプロジェクト全体についての回答の一部と紹介します。

生徒の学習や交流意欲が向上した

  • プロジェクトのおかげで、学生たちは多分初めて直接日本の生徒たちと話すことが出来ました。成績も、モチベーションも上がったような気がします。
  • 生徒が自発的な活動に自信を持ち始め、これからは自分で交流のプランを立てて実施してみたいという声が出た。

教師としてのチャレンジやスキルアップにつながった

  • 「到達できたところがゴール」ではなく、バックワードデザインを意識するようになりました。ゴールを明確にした活動をするから、ゴールできたことへの達成感や喜びが生まれるのだと思います。今後も毎回の授業で小さなゴールに到達するという意識をもって、授業デザインをしていきたいです。
  • やってみたい、と思っていたことに、実際に挑戦することができたことです。このプロジェクトに入っていなければ、やってみたいという希望だけで終わっていたかもしれません。

日露教師間、自国教師間の交流が促進された

  • ペアを組んだ先生にも恵まれました。こちら側の提案に乗ってくれて、予想を超えるすばらしい実践を行ってくださり、生徒ともども大変勉強になりました。
  • 的確なプランとよいアドバイスのもと、よいメンバーと共に(しかも国境を越えて!)、理想的な環境でプロジェクトに参加することができ、たいへん有意義でよい経験になりました。参加者間の絆が深まったのも、私にとってはとても嬉しいことです。
  • プロジェクトに参加しながらいろいろなチャレンジをしてみました。相手の日本の先生との交流はとても大事です。また、ロシアのほかの町の先生とつながりができてよかったと思います。

校内交流、教師と生徒間の交流が促進された

  • プロジェクトを行うにあたってロシア語クラス以外の生徒にもアンケートなど協力を依頼したことをきっかけに、校内でロシアのイベントを開催するなど、積極的に発信するようになりました。
  • 日常の業務で忙殺されているときはしんどいと感じることもありましたが、マンネリ化した授業のスタイルを一新させる布石となりました。教師はやはり生徒に向き合って授業をよりよいものにすることこそ常に忘れてはいけないと実感しました。

プロジェクトの課題と今後の展望

1年間は長いということや、普段の仕事にプラスしての取組みが大変だった、ZOOMの使い方や時間調整がむずかしかった、ペアの相手とのやり取りがテンポよくいかず疲れた、という課題も指摘されましたが、ほとんどのペアはこれからもこのような交流学習を続けていきたいという意志を示しました。日露教師間、クラス間交流が、学校間交流に発展したケースもいくつかありました。

サンクトペテルブルクで行った中間報告では、市内の日本語教師に多く来てもらい、途中までの成果を共有することができました。オンラインで行った最終報告会では、交流学習に関心のある新たな参加者を得ることができました。最終報告会に参加してくれた一般参加者からは、「発表のスライドだけでもいただきたい」「今回発表された先生方の実践記録をHPにアップしてほしい」というコメントをいただきました。メンバーたちの創意・工夫、試行錯誤を含む実践記録、全体の分析や総括を含めたプロジェクトの成果をより広く共有していくために、2019年度内に報告書をまとめ、プロジェクト・メンバー、報告会参加者をはじめ、言語教師、教育関係者に向けて公開する予定です。

(事業担当:長江春子)

事業データ

「日露交流学習プロジェクト」最終報告会

期日

2019年3月31日(日)

場所

オンライン上

ファシリテーター

金孝卿(早稲田大学日本語教育研究センター准教授)

テクニカルサポーター

大隅紀子(東京大学ほか非常勤講師)

参加者

①プロジェクト・メンバー 18名
②一般参加者18名(日本、ロシア及び世界各地の言語教育関係者)
③TJF2名