公益財団法人国際文化フォーラム

くりっくにっぽん報告

人に迫る

2012年10月、ウェブサイト「くりっくにっぽん」(日本語版、英語版、中国語版)を含め、TJFの日本情報発信は、全面的に姿を変えた。
リニューアル前の「くりっくにっぽん」は、若い人たちが関心をもっている日本のモノを中心に紹介していた。しかし、モノの情報は氾濫していることから、モノではなく人にフォーカスした。

My Way Your Way、1/365(365分の1)、何コレ? マジコレ!? のコーナーを新設し、翌年3月には韓国語版を新たにオープンした。「人」を前面に打ち出したMy Way Your Wayでは、テーマを定め、人がなぜそのことにはまったのか、きっかけは何だったのかなど心の内に迫った。テーマ「ことばの力」では、詩人・和合亮一氏が東日本大震災後、福島の自宅に残りツイッターで次々と詩を発信し続けたときの心情を語り、詩のボクシングの高校生大会優勝者も登場している。

1/365 では、高校生や大学生レポーターが「お月見」や「ひな祭り」などの伝統行事を新しい世代としてどのように行っているのか、それぞれの生活の様子をつづっている。
何コレ? マジコレ!? は、旅行や留学で日本にやってきた海外の高校生、大学生が発見した「日本」を写真とキャプションで紹介することをめざしたが、作品が集まらずコーナーを閉じることとした。

日本語の授業で活用

2013年からは韓国、オーストラリア、ニュージーランドで日本語教師向けにワークショップを実施した。多くのワークショップでは、教えるためにつくられた教材ではなく、一般の記事を使うことの意義を日本語教育専門家が話したあと、参加者は「くりっくにっぽん」の記事を使った授業案を作成する。
長く海外に暮らす日本人教師は1/365 の「バレンタインデー」で40人に友チョコを渡したという記事に刺激を受け、韓国の教師は「父の日」「母の日」の記事から、韓国にある「親の日」と比較する授業案をつくった。いちばん人気だったのは、My Way Your Way に登場する「なんちゃって制服」をデザイン、販売する社長の記事で、ワークショップでつくった案で実際に多くの授業が行われ、韓国、オーストラリア、ニュージーランドで高校生が考える制服のデザインができあがった。

学生が発信

外部の視点を導入する試みとして、2012年に横田雅弘・明治大学教授、2016 年には三代純平・武蔵野美術大学准教授の授業で、学生たちの企画、インタビュー、記事づくりに協力した。「日本の魅力を再発見して世界に発信する」ことをミッションとする明治大学国際日本学部2年生の横田ゼミで学生たちが企画したのは、「アイドルは好きですか?」と「デコで気持ちを伝える」の2つ。
三代准教授の日本事情の授業では、留学生が「『キモカワ』はキモいの?カワイイの?」「銭湯の魅力ってなんだ?」をテーマに選んだ。これらの記事は2016 年に新しく開設したウェブサイト「ときめき取材記」に掲載している。

参加者の声

  • My Way Your Way で中学生の良太が自分でつくった詩を朗読しているのを聞いて、心にじ~んと響きました。(オーストラリア高校生)
  • 日本の文化を考えないといけなくなって、日本に住んでいても周りに興味をもたず生活していたことに気づいた。(武蔵野美術大学留学生)
  • 生徒から「原宿に行ったら、本当になんちゃって制服のお店があった!」とメールがきました。ホンモノで教えるってこういうことなんですね。(オーストラリアの日本語教師)

※30周年記念誌『Tracks』に掲載