公益財団法人国際文化フォーラム

りんごをかじろう報告

隣語講座 in 都立王子総合高等学校

高校で英語以外の外国語を学ぶことのできる学校は多くありません。文部科学省の調査(平成27年)によると英語以外の外国語の科目を開設している学校は677校で、全体の10%に満たない(約7.3%)という結果がでています。東京都では、2020東京オリンピック・パラリンピック競技大会後も見据え、英語以外の外国語を活用し国際貢献できる人材の育成を必要と考え、多様な外国語が学べる環境を充実させるための施策を進めていますが、履修者が少なく学校側に開講の意向があるにもかかわらず結果的に実現できない状況が発生しています。高校生に科目を選択するきっかけや動機付け、必然性などが十分でないことが原因の一つではないかと考え、「学びのきっかけづくり」をテーマに実施してきた隣語講座を、2018年度より英語以外の外国語科目を設置している学校の生徒を対象にしたオリエンテーションプログラムの提供を始めました。その第一弾として、グローバルランゲージ構想を掲げ、2019年度より英語以外に五つの言語(フランス語、ドイツ語、韓国語、スペイン語、中国語)を必修選択科目として開設予定の王子総合高等学校の1年生237名を対象に、科目「産業社会と人間」の2時限を使って実施しました。

ことばを学ぶきっかけをことばが必要になる活動を通じてつくる

例えば、韓国語学習のきっかけは、韓国語それ自体でなく、ドラマだったりダンスだったり。そこで、担当講師には、ことばが必要になる活動が中心となるよう講座をデザインしてほしいと依頼しました。あくまでも、ことばは活動に必要なもののひとつという位置づけです。生徒には、来年度受講するグローバルランゲージ選択のきっかけづくりのための時間であることを繰り返し説明した上で、ランダムに割り振った五つの活動の中から二つを体験してもらいました。体験できなかった三つの活動はクラスメートから聞いたり、相手の体験していない活動について伝えたりしながら10月末の科目選択に向けて考えるように促しました。

配布した2本のリストバンドで、会場案内と出欠確認(受講後提出)をしました。 ©TJF

活動

フランス語

フランス語は、DiXitというボードゲームを使った活動でした。DiXitは各プレイヤーが6枚ずつメルヘンチックなイラストが描かれた手札を持ち、一人ずつ交代で語り部となって進めるゲームです。語り部のキーワードをもとに全員が出すカードの中から、語り部の一枚を当てる2010年のゲーム・オブ・ザ・イヤーに輝いたフランス発のゲームです。語り部のキーワードを講師がフランス語にして書いたり話したりしてくれるのを見聞きながら進めました。ゲーム自体の楽しさはもちろん、キーワードのフランス語もきっと心に残ったのではないでしょうか。他に2種類あるフランスの菓子パンのうちのひとつをフランス語で注文するという活動も行われ、舌でもフランスを堪能する時間となりました。

ドイツ語

ドイツ語は、iPadを利用したオリエンテーション形式のゲームと、用意してきた看板やシートなどを利用したアナログなクイズをドイツ語に触れながら行いました。オリエンテーションゲームは、アクションバウンドというアプリケーションを利用したもので、実際に場所を移動しながら課題を解き進む宝探し的な要素のある活動でした。他に、たくさんのロゴの中からドイツ企業ではないものを選んだり、袋の中のドイツで発明された生活用品を手探りであてたり、デジタル機器をつかわないアナログな活動も行われました。これらを数人のチームで協力しながら進め、最後はお土産にドイツ語のかかれたバッジがプレゼントされるなど記憶にのこる時間となりました。

韓国語

韓国語は、K‐POPの紹介とダンスでした。準備体操の後、人気グループのダンスを動画で確認し、協力者の先生のダンスをお手本にしながら一部を実際に踊ってみるという活動です。鏡のある部屋で、自分の姿をみながら韓国語を聞きながら振りを覚える活動は始めての人にとっては新鮮だったのでは。短い時間の中で、踊れるようになった達成感は覚えた韓国語と共に忘れられない思い出となりました。

スペイン語

スペイン語は視聴覚室でヨーロッパ屈指のプロサッカーチームであるFCバルセロナと、バルセロナのあるカタルーニャ州の紹介が座学形式行われました。同じスペインの中に地域で大切にされている言葉や文化があることを知りました。その後、場所を体育館に変えて、サッカーボールを使った活動も行いました。FCバルセロナから派遣されたスペイン人ディレクターやスペインにサッカー留学していたコーチと、世界最高峰のサッカーチームのトレーニングの一端に触れられた生徒は本当に幸せだったと思います。

中国語

中国語は体育館ギャラリースペースで中国語に触れながら卓球を行いました。点数を中国語でカウントしたり、中国語で応援したり、6人が1グループを作り、8チーム対抗のダブルスゲームを行いました。卓球部の生徒が講師の先生に挑むシーンもありましたが、いいようにあしらわれるなど、卓球王国中国の実力に触れる機会となりました。楽しい中で覚えた中国語を口ずさむ生徒の姿が印象的でした。

今後の展開

今回実施したプログラムは、来年度、王子総合高等学校の選択必修科目となるグローバルランゲージ(英語以外の外国語)の学びのきっかけづくりが目的でした。何の準備もなく一覧にされた中からなんとなく選ぶのでなく、体験をもとに選択することができればより能動的に学習に取り組めるのではないかと考えました。多様な外国語の学びを通じて、多様な背景をもつ人と共に生きる力を身につけることが、かつてないほど重要になっていると大人は認識しています。しかし高校生はどうでしょうか。後になって高校で多様なことばを学んだことがよかったと思ってもらうためには、ただ機会を用意するだけでなく学びのきっかけづくりまで行うことが肝要だと思います。どんなに栄養価の高い食材も調理して皿にのらなければ口に運ばれることがないように、提供のための一手間がとても大切なのです。国際文化フォーラムは、多様な学びのきっかけ作りにこれからも真剣に取り組みたいと考えています。

(事業担当:中野敦)

事業データ

隣語講座

日時

2018年9月27日(木)13:25~15:15

場所

東京都立王子総合高等学校

主催

公益財団法人国際文化フォーラム

協力

アンスティチュ・フランセ東京、ゲーテ・インスティトゥート東京、東京韓国教育院、FCバルセロナアカデミー葛飾校

参加者

王子総合高等学校1年生(237名)

講師・協力者

■フランス語
講師/ガエル・フレネアル(アンスティチュ・フランセ東京 教育コーディネーター)
協力者/堀裕征、竹田恭子、志村響、新井実里

■ドイツ語
講師/マティアス・フォン・ゲーレン(ゲーテ・インスティトゥート東京 語学部長)
協力者/丸山智子、カロリン・ウォルター、アンナ・レイネン

■韓国語
講師/徐明煥(東京韓国教育院 講師)
協力者/水本まゆ、島田美悠、稲葉愛莉

■スペイン語
講師/アンドレウ・セラロス(FCバルセロナアカデミー葛飾校テクニカルディレクター)協力者/柿崎太亮、青木亮輔

■中国語
講師/田村由琴(新座卓球クラブ)
協力者/林玉華、史艶紅、許麗麗

写真:劉成吉(©TJF以外)