公益財団法人国際文化フォーラム

日韓の校長交流報告

高校生の互いのことばの学習と交流を実現するための校長交流プログラム

TJFはこれまで、日本にとって大切な隣人・隣国のことばである、韓国語の教育と韓国における日本語教育をサポートする事業を実施してきました。その中で互いのことばの学びの促進と同時に、これからを生きる高校生に多様な言語や文化を背景とする人々と交流する機会を提供したいと考えてきました。それを実現するためには、学校のリーダーの理解が欠かせないと考え、2015年度に日韓の校長交流プログラムを開始しました。このプログラムは、日本の校長の韓国派遣と韓国の校長の日本招聘をセットに考えています。今年もまず、3泊4日の日程(8/4(土)~8/7(火))で、千葉、東京、神奈川、大阪、岡山から10校14名(うち8名が校長)の先生が韓国ソウルを訪問しました。

出会いと対話がキーコンセプト

今年は、韓国の高校で日本語を学ぶ生徒、韓国の大学に留学中の日本の学生、韓国の高校の校長および日本語教師他と対話する場を作ったこと加え、近年日本の高校で韓国語を学習した生徒の卒業後の進路として注目されている韓国の大学の関係者との交流を新企画として加えました。また、実際に交流会場となった韓国の高校や大学を見学する他、できるだけ現地の生活がわかるような場(スーパーや街の中華料理店など)を選んで利用したり、高校生を引率して来た際の宿泊先としてのユースホステルに実際に宿泊したりしました。

漢西高等学校訪問(初日)

韓国の高校生がどのような想いで日本語を学んでいるのか、実際にことばを交わしながら、韓国の日本語教育の状況を把握し、翻って日本の第二外国語教育について考える機会になればと考え企画しました。

漢西高校の学校説明の後、日本語研究部の生徒との交流の時間をもちました。まず、代表生徒4名による研究発表の後、生徒15名日本の校長が7つのグループにわかれて交流しました。

参加者の感想

・現地の高校生と直接会って意見交換ができたのはとてもよい経験でした。
・日本語に興味のある高校生が、真面目に学習に取り組んでいる姿を見て、日本人への第二外国語教育をもっと発展させていこうと思った。すごく刺激になった。

留学生との交流(2日め午前)

日本から韓国の大学に留学している学生7名に協力を依頼し、7つのグループごとに交流しました。なぜ留学したのか、留学生活はどんなものか、留学終了後何をしたいとおもっているのかなど、先生方の質問に真摯に答えてくれました。韓国の大学に進学することをめざし語学堂(大学付属の語学学校)で勉強するもの、日本の大学からの交換留学生や韓国の大学学部生など留学の経緯はさまざまでした。

校長先生たちが、自身の学校生徒にとってのキャリアを考える上で、韓国語をはじめとする第二外国語や交流を通じて学ぶことの意味を考えるきっかけとなればと企画しました。

参加者の感想

・グローバル社会で生きていくということを教員たちが念頭において生徒たちを指導しアドバイスできる環境をつくる必要性を痛感しました。
・日本の学校は内向きになったといわれます。彼ら彼女らをみているとそうは思えない。むしろ、自分の夢や目標にむけて志高く生きている姿が印象的でした。
・自分の教えている生徒たちを会わせて、話をさせたい、と強く思いました。

韓国の大学関係者との交流(3日め、午前)

韓国延世大学を会場に、韓国外国語大学、延世大学、梨花女子大学の学生募集担当の教職員と留学生との交流を行いました。3校全ての関係者とやりとりできるようグループでの交流としました。

高校卒業後、韓国の大学に進学を希望する生徒の数が年々増加していますが、日本の高校教員は生徒の相談に応えることが難しいと聞いています。今回の交流をきっかけに生徒の韓国留学希望について相談できる相手が韓国の大学にもできればと考え企画しました。

参加者の感想

・実際に自分の学校の生徒の中から「留学したい」という生徒が出てきたときの指導に役立ちます。
・大学への留学の制度が知れて良かった。生徒の選択肢の幅を広げられると思う。

日韓校長及び教師交流会(3日め、午後)

国際交流基金ソウル日本文化センターを会場に、日本側10校14名の高校の校長等教員と、韓国側11校23名の高校の校長と日本語教師が交流しました。日韓計7-8人の5つのグループを作り、メンバーを変えながら、できるだけ多くの相手と交流できるようにしました。

交流会では、日韓の先生方ご自身にまず、交流を通じて学びの必然性を実感してもらうことをめざし、必ずしも具体的な学校間交流の話にならなくてもいいと考えました。

参加者の感想

・時間が足りなかったので、工夫していただけるといいと思います。
・相手校が求めているものが不鮮明で話しづらい。
・両国の教育事情についてもっと時間をかけて話ができると、より有意義でないかという思いも抱いた。
・時間は短いようで適切で、もう少し聞きたい、話したいという感じが次への期待を育む感じがします。

今後の展開

交流会から日をおかずに、韓国の先生から日本の先生に学校間交流へのアプローチがあったと複数の校長先生から報告がありました。TJFは11月21日(水)~24日(金)の日程で、8月の交流会に参加した校長と日本語教師を招聘し、二度目になる交流会を実施する予定です。また、学校からの要望に応じて今後以下のポイントを踏まえたフォローアップを行っていきます。

1)無理せずできるところから始める

2)周囲(教員、保護者)の理解を得る

3)学校外にフォローアップ体制をつくる

(事業担当:中野敦)

事業データ

日韓校長交流プログラム(派遣)

期間

2018年8月4日(土)~7日(火)

場所

韓国・ソウル

主催

東京韓国教育院、神奈川韓国綜合教育院、国際交流基金ソウル日本文化センター*、TJF
*国際交流基金ソウル日本文化センターは、8月6日(月)の日韓校長及び教師交流会に限り主催団体に加わります。

協力

千葉韓国教育院、埼玉韓国教育院

輸送協力

ANA

旅行取扱

ジエイエツチシー株式会社

参加者

東京、神奈川、千葉、大阪、岡山より10校から高等学校校長等14名

8/6の交流会には、韓国・江原道、京畿道、ソウル特別市、大邱広域市の11校から高等学校校長等23名の参加があった。