公益財団法人国際文化フォーラム

報告

日本の教育代表団の中国派遣事業

参加者それぞれに大きな収穫

TJFは、2010年11月22~26日、日本の教育行政関係者および高校の管理職等14名を北京に派遣しました。本事業は、中国国家漢弁(以下、漢弁)と協議のうえで実施している三つの中国語教育関連事業の一つで、2008年以来実施しています。中国語教育、中国理解教育、中国との教育交流に取り組む高校の管理職、地域の教育行政関係者等を対象とする事業であり、中国の教育、社会、文化について理解を深めるとともに、日中の学校間の人的ネットワークを構築して各学校や各地域における中国語教育、中国理解教育、中国との交流を発展させることを目的としています。2008年度、2009年度は神奈川と東京の私学関係者を対象に募集しましたが、3回めとなる今回は初めて公立私立を問わず全国から公募しました。その結果、北海道から沖縄まで9都道府県の13機関より、14名が参加しました。

さまざまな交流

代表団一行は、北京滞在中、漢弁をはじめ、北京市教育委員会、求実職業学校(高校)、第94中学(普通科の中高一貫校)を訪問して交流したり、万里の長城や天壇などの世界遺産を見学したり、京劇を鑑賞したりするなど、充実した時間を過ごしました。漢弁では、中国文化や中国語教材の展示を見学した後、中国語教育推進事業について懇談しました。北京市教育委員会では、北京市の基礎教育や国際交流の概況について説明を受けるとともに、代表団も日本の公教育、私学、職業教育について紹介しました。また、その後訪問した二つの学校では、学校運営、生徒指導、課外活動、進学、交流、留学生の受け入れなどについて意見を交わし、懇談は予定時間を超えて2時間以上にわたりました。

日本語秘書コースで日本語教育が行われている求実職業学校では、日本語の授業を見学しました。完全にオフィス・レイアウトになっている教室で、電話応対の演習を行うなど高度で実践的な学習内容、生徒の優秀さに一同は感心していました。授業後の懇談では、生徒たちも日本語による日本人とのコミュニケーションを楽しんでいました。第94中学では、一人っ子である生徒たちに、親や周囲に感謝の気持ちをもってもらうための徳育教育や、生徒や教師の心の問題に対処する取り組みなどについて話を聞き、大いに刺激を受けたようです。また、同校は、日本語を選択科目として2010年から導入しており、日中間で相互にことばを学び交流をする意味について考えるいい機会にもなりました。

来年度の実施に向けて

今回の派遣事業は参加者にとって実り多いものとなったようですが、TJFにとっても本事業を通じて全国各地で中国語教育に取り組む学校の管理職や教育行政関係者とのネットワークができたことは貴重な収穫でした。このネットワークを通じて得られた助言や協力をもとに、本事業を今後さらに発展させていきたいと考えています。また、本事業の目的である、中国語教育、中国理解教育、中国との交流を進めていくために、中国の学校との交流を望んでいる参加校の要望に応えること、中国語科目を新たに導入する参加校を支援していくこと、今回できたネットワークを拡大し、TJFの中国語教育関連事業(管理職、教師、生徒を対象とする)に関するスムーズな情報提供と事業間連携を図ることなど、一歩一歩課題に取り組んでいきたいと思います。

収穫があったことやよかったと思われたこと(事後アンケートの結果抜粋)

  • すべてが新鮮で収穫であった。2校の学校訪問では校長先生方との交流はもとより、生徒の生の声を聞くことができたことは、とても有意義であった。
  • 中国の教育現場にふれ、日中の教育に対するさまざまな違いを知ることができた。とりわけ国際色豊かな(外向きに開かれた)ところが印象的であった。
  • 中国への高校生の派遣(留学、研修等)について、展望が開けた感じがする。
  • 北京市教育委員会が基礎教育を重視し、さまざまな施策を実行し、各学校においては校長先生を先頭に特色ある学校づくりに尽力されている、今日の中国教育事情を理解することができました。
  • 学校管理、教員の資質向上方策について学べた。
  • 北京の校長先生も真剣に教育に取り組み、われわれと同じ悩みをもっていることがわかった。
  • 訪中団に参加した日本各地の先生方と交流し、互いに抱える教育問題について意見交換ができた。
  • 密度が濃い内容の研修企画で満足度が高かった。