教学設計
 
第13号 2002/10
概要
ある高校生の「出会い」についての素材文を読み、自分自身が経験した出会いについて考え、表現する。
目標
情意目標
日本の高校生、隆幸の写真を見たり、文章を読んだりして、隆幸について理解する。
隆幸のアメフットとの出会いがどんなものであったか、難聴というハンディキャップを持つ彼にとってアメフットはどんな意味があるのかを考え、それと比較しながら、自分はどんな出会いを経験したか、その出会いが自分にとってどんな意味を持っているかを考え、表現する。
言動目標
n/a
学習文法・文型
・~にとって
・~まで……ませんでした
・もし、~たら、……かもしれません
・~のは、……からです
対象学習者
高校1~3年
授業のヒント
用意するもの
素材文・語彙・文型・関連情報
・原稿用紙
・教師自身の作文「私にとっての大切な出会い」
写真
事前準備
1時間目: 1. 写真を観察させ、話し合わせる
(1)
写真に何が写っていますか。
(2)
誰が、何をしていますか。
(3)
時間は何時頃ですか、場所はどこですか。
(4)
どうしてそこにいるのですか。
(5)
何を考えていると思いますか。
(6)
どんな気持ちでしょうか。
1時間目: 2. 発表させて、読解の導入を行う
◆写真1「金閣寺」
(1)
山本隆幸です。隆幸は、何歳ぐらいだと思いますか。
[⇒18歳です。高校3年生です。]
(2)
(金閣寺を指差しながら)ここはどこでしょう。(金閣寺について、生徒の知っていることを話させる。教師は【関連情報】や写真の説明文、自分が調べたことを参考にしながら、適宜、補足説明を加える)
[⇒金閣寺です。金閣寺は、京都にある有名なお寺です。14世紀に足利義満という将軍によって建てられました。表面に金箔が貼られています。]
(3)
どうして隆幸は金閣寺の前にいると思いますか。旅行で京都に来たのでしょうか。京都に住んでいるのでしょうか。
[⇒隆幸は、京都で生まれて、京都に住んでいます。金閣寺は、隆幸が「京都らしいもの」として思い浮かべる場所だそうです]
◆写真2「大文字焼」
(1)
これは何でしょう。
[⇒山に「大」という字が書いてありますね。「大文字焼」といって、これも京都名物の一つです。京都では、お盆が終わる8月16日の夜、この山に「大」という火の文字が浮かび上がります。お盆とは、祖先の霊を迎え、その冥福を祈る仏教の行事です。伝統的に7月13日から15日で、一部の地域では8月13日から15日に行われます。「大文字焼」は、お盆が終わって、火を点して祖先の霊を送る意味があります。]
◆写真3「魚屋で働く両親」
(1)
これは誰ですか。
[⇒隆幸の両親です。]
(2)
ここはどこでしょう。
[⇒魚屋の前です。]
(3)
どうして魚屋の前にいるのでしょう。
[⇒お父さんとお母さんは魚屋で仕事をしています。これは、お父さんのお店です。]
◆写真4「アメフットのコーチと」
(1)
何をしていますか。何のスポーツでしょう。
[⇒アメフット(アメリカンフットボール)をしています。]
(2)
隆幸は、どこでアメフットをしているでしょう。どんなチームに入っているでしょう。
[⇒高校のアメフット部に入っています。隆幸の通っている大阪産業大学付属高校のアメフット部は、全国大会で何回も優勝していて、とても強いチームです。]
(3)
どのぐらい練習すると思いますか。
[⇒毎日、3時間練習します。]
(4)
隆幸は、いつアメフットを始めたと思いますか。どうして、そんなにアメフットが好きなのでしょうか。
[⇒このあと読む素材文にその答えが書いてありますので、楽しみにしてください。
◆写真5「アメフットの仲間たち」
(1)
誰でしょう。
[⇒隆幸のアメフット部の仲間です。]
(2)
これはどんな時撮った写真だと思いますか。
[⇒優勝祝賀会の記念写真だそうです。]
(3)
どんな気持ちでしょう。
[⇒うれしそうですね。]
◆写真6「電車でメールを読む」
(1)
ここはどこでしょう。
[⇒電車の中です。]
(2)
何をしていますか。
[⇒携帯電話で友達にメールを送ったり、友達からのメールを見たりしています。]
(3)
どんなメールを送り合っていると思いますか。
[⇒今日クラブ疲れたな~/明日ひま?ひまやったら、アメ村*行かへん?/明日の予定教えて。オレ忘れたもんで!あほやわ、オレは!⇒関西弁です。「やったら」=「だったら」、「行かへん」=「行かない」、「あほやわ」=バカだわ」。
*アメ村=アメリカ村
(4)
隆幸にとって、携帯電話は特別な道具です。どうしてだと思いますか。
[⇒実は、隆幸は一つ身体的なハンディキャップを持っています。携帯電話のメールは、そのハンディキャップを補うためにも、役に立つ道具です。どんなハンディキャップだと思いますか。実は、隆幸は耳が聞こえないのです。「難聴」というハンディキャップです。耳に小さい補聴器を付けています。携帯電話のメールは、耳の聞こえにくい隆幸にとって文字で友達とコミュニケーションができる便利な道具です。]
(5)
隆幸は難聴というハンディキャップを持っています。でも、今、全国優勝する高校のアメフット・チームで正式選手として活躍しています。隆幸にとって、アメフットというスポーツとの出会いは彼の人生を変える大きなことだったそうです。彼はいつ、どんなふうにアメフットと出会ったのでしょうか。そして、それはどんなふうに彼の人生に影響を与えたのでしょう。素材文を読んでみましょう。
1時間目: 3. 生徒に素材文を読ませる。
<内容理解・確認のための質問>
(1)
隆幸は、いつ、どこでアメフットを始めましたか。
(2)
どうしてアメフットを始めたのですか。
(3)
アメフットは、隆幸のどんな才能を引き出してくれましたか。
(4)
アメフットを始めてから、隆幸にどんな変化がありましたか。
(5)
隆幸は、高校でも難聴クラスに入りましたか。
(6)
隆幸は高校で健聴者と授業を受けても、コミュニケーションに困難を感じることがありませんでした。それはどうしてですか。アメフットと関係がありますか。
(7)
アメフットをやる時、チームメートは隆幸にどうやって作戦を伝えますか。
(8)
隆幸の将来の夢は何ですか。
(9)
アメフットとの出会いは、隆幸の人生をどのように変えましたか。
2時間目: 4. クラスで3の質問の答えを確認し合う。
(1)
重要な文型や語彙について適宜説明する。生徒のレベル、進度に合わせて、素材文の中から重要な文型を選び出し、教科書の解説や練習問題と結び付けながら学習する。
(2)
隆幸の話を読んで感じたこと、考えたこと、疑問に思ったことなどを、クラスで意見交換させる。
(3)
生徒に「私/ぼくにとって大切な出会い」が何かあるか、問いかける。生徒から出てきたキーワードを板書しながら、生徒一人ひとりが経験した大切な出会いについて考えるよう促す。
2時間目: 5. 作文を書かせる
<作文例>
私/ぼくは、           の時、            に出会いました。
(どんなふうに出会ったか、具体的に説明→)                     
私/ぼくにとって、            はとても大切なものです。
(大切な理由の説明→)                    
(もう一度、その出会いの意味についてまとめる→)                     
2時間目: 6. 話を聞き合わせ、発表させる
作成者:矢部まゆみ(早稲田大学日本語研究教育センター講師)