めいきんぐ☆授業

グローバルな問題を自分のものとして考える

V.詩をつくる

ニシムラ・パーク葉子

オーストラリア・NSW州教育地域社会省中等教育部アジア言語学習推進プログラム支援オフィサー

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さて、いろいろな詩を鑑賞したあとは詩を書くことにした。今までに詩を書いたことがなくて、どう書き始めていいかわからない生徒もいる。書いたことのある生徒からアドバイスを募ると、次のようなアドバイスが上がった。

  • 写真等を見てイメージを頭に浮かべる(これは母からの俳句を書く際の助言、まず外を歩いて自然を愛でる、と共通している)
  • 好きな詩やスタイルをまねてみる、そしてそこに自分のオリジナリティーを入れる
  • 頭の中に浮かぶアイディアをとにかく書いてみる。

大変有効なアドバイスだと私は感心した。

 

お題は、はじめ、「ふるさと」としようと思っていた。「福島へ」がふるさとへのラブレターだったからだ。しかし、二ヵ国、三ヵ国間を常時移動している彼らにとって、ふるさととはどこなのか、何なのか、あるいは、ふるさとという概念があるのだろうか、ということに興味もあった。しかし、授業を進めるうちにふるさとを含むもっと広い意味を持つお題にしたほうが、生徒が創造力を自由に発揮できるかと考えた。「大切なもの」にしようかとも考えたが、最終的により能動的な表現の「守りたいもの」に決定した。

授業時間をたっぷり詩を書く時間にあてた。俳句、川柳、短歌、ラップ、どんなスタイルもOKとした。形式で生徒の自然な創造性を限定したくなかったからだ。思春期にある生徒が、詩を書くという、いわば自分の心の中を見せてしまうことを授業の活動としてどのくらい真剣にやるのか、正直なところ少し不安だった。しかし、全員がそれぞれ誠実に取り組んでくれ、予想以上の手ごたえがあった。

詩を書く時間が始まったら、クラスはしーんと静まり、一人ひとりが各々心の中を散歩しているような雰囲気に包まれた。しばらくすると、隣同士低い声で話し始める者、窓際に移動して窓の外を眺める者、指を折って五七五......と数える者など、動きが出てきた。その間私は何度も校正して言葉の無駄を省き、より適切な言葉を選ぶよう指導した。

頃を見計らって、さまざまな色の紙とペンを渡し、好きな色を選ばせ、それに清書させた。時間内にいくつも書いた生徒もいれば、一生懸命一つの詩を仕上げた生徒もいる。すべての詩に、彼らの個性が輝いている。

生徒が守りたいものとして詩に表現したものは、自分らしさ、家族、友だち、友情、笑顔の時間、ペット、世界、自然、など。生徒の詩はくりっくにっぽんのクラスアイディアのページに掲載されている。


ニシムラ・パーク葉子 ニシムラ・パーク葉子
オーストラリア・NSW州教育地域社会省中等教育部アジア言語学習推進プログラム支援オフィサー

1990年、ハイスクールの日本語教師として渡豪。1998年よりNSW州教育地域社会省勤務。外国語としての日本語の教材開発を専門とし、現在アジア言語を奨励する企画等を進める。共書に日本語の教科書「未来」シリーズ、「iiTomo」シリーズ (Pearson Education) がある。ここ数年、継承語としての日本語教育に携わりこの分野における教材開発に意欲を示す。

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